記事

ますます厳しさを増す中国経済 - 澁谷司

 最近の中国統計を見る限り、相変わらず中国経済が良くない。投資・消費・貿易の3本柱が、いずれもパッとしないのである。

 第1に、投資である。今年(2018年)6月14日、国家統計局が公表した数字では、1〜5月、全国固定資産投資は約21.6兆元で、前年同期比で僅か6.1%しか増えていない。昨17年同期(1~5月)比は8.6%増なので、2.5ポイントも減少している。

 今年1~5月までの投資の内訳として、国有企業投資は4.1%増、民間投資は8.1%増だった。

 更に詳細に見ると、国内企業の投資は、前年同期比で6.6%増えたが、香港・マカオ・台湾企業の投資は、同-5.2%、外国企業も同-1.1%と落ち込んでいる。香港・マカオ・台湾企業をはじめ、外資が如何に中国への投資を手控えているのかが窺えよう。

 第2に、消費はどうか。6月14日、国家統計局が公表した数字に拠れば、(今年1-2月は9.8%増以降)3月は前年比10.1%増だったが、4月には同9.4%、5月には同8.5%と右肩下がりとなっている。

 統計局の資料では、2012年・2013年・2014年・2015年・2016年には、(1-2月期を含む)全月が2桁成長だった(特に、2012年は前年同月比13%台~15%台で推移している)。

 昨2017年でさえ、1-2月期には前年比9.5%、12月には同9.4%の1桁増にとどまる以外、3月~11月まで連続して2桁成長を遂げた。ところが、今年に入ると、既述の如く、3月以来、4月、5月と消費が急落している。特に、先月の8.5%増という数字は、かなり深刻だと見るべきだろう。

 実は、今年3月24日、中国商工銀行董事長(理事長)の易会満は、以下のように語っている。

 (1)2013年、中国における家庭の負債はGDPに占める割合が33%だったが、2017年、49%まで増大した。

 (2)2010年以前、中国の貯蓄率は16%だったが、2017年には、7.7%まで下落している。

 (3)2010年貯蓄率と可処分所得の合計が25.4%にのぼった。だが、2017年には12.7%へと半減している。

 一時、中国の消費が大幅に伸びていると喧伝されたが、事実は数字が示す通りである。

 第3に貿易である。2015年、2016年、中国貿易の数字は目を覆いたくなるほど悪かった。輸出入ともに各月、大部分が前年同月と比べ、マイナスだったのである。漸く昨17年になると、輸出入が好転し始めた。

 だが、今年6月15日、トランプ米大統領が、500億米ドル(約1.1兆円)の中国からの輸入製品(1102品目)に対し、25%の関税をかけると宣言した。 

 それらは、北京政府の「中国製造2025年」戦略計画に関係し、電子、機械、半導体、航空、宇宙等の品目である。従って、今後、中国の新興高度科学技術産業に重大な影響を与えるに違いない。

 習近平政権は対米報復関税をかければ輸入が減り、自国のクビを絞めるだけである。圧倒的出超の中国と圧倒的入超の米国がお互いに輸入関税を掛け合えば、どちらが不利か誰でも分かるだろう。

 それにも拘らず、翌16日、北京は米国に対し報復関税をかけると発表した。659品目、総額500億米ドル(約5.5兆円)規模の米国製品に25%の追加関税をかけるという(米国同様、7月以降、段階的制裁の発動予定)。

 これでは、中国国内の不景気にますます拍車がかかるだけではないか。習近平政権は、面子重視の政治優先で、合理的経済政策を打ち出していない。

 最後に、中国の不動産について触れておこう。前述のように、目下、中国では景気は良くない。しかし、不動産価格は上昇傾向にある(もしかすると、地方政府が、足りない税収を不動産売買で補填する算段なのかもしれない)。

 1・2線級(1線級は北京、上海、深圳等、2線級は青島市、廈門市、西安市、寧波市、長沙市等)の有力都市ならば、価格が高騰し、その後、急落しても、また新しい購入者が現れる公算がある。

 けれども、3・4線級の地方都市の場合、そうはいかない。一旦、価格が下落したら最後、別の購入者が現れる事は殆どないだろう。地方住民には、購買力が欠けているからである。仮に、3・4線級の地方都市で不動産バブルが弾けたら、北京は、にっちもさっちも行かなくなるに違いない。

 中国経済の近未来は視界不良である。

澁谷 司(しぶや つかさ)
1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。2004~05年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011~2014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、同大学海外事情研究所教授。
専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる!「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)等多数。

あわせて読みたい

「中国」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    コロナ対策は菅内閣にも直結 東京の新規感染者数が5000人超えなら菅内閣はもたない

    田原総一朗

    07月28日 14:43

  2. 2

    東京3000人は五輪強行開催によるモラル崩壊の証。もう誰も自粛しない

    かさこ

    07月28日 08:46

  3. 3

    西村大臣の酒類販売事業者への要請撤回 首相官邸の独断に官僚からも疑問の声

    舛添要一

    07月28日 08:34

  4. 4

    「きれいごとだけでは稼げない」週刊文春が不倫報道をやめない本当の理由

    PRESIDENT Online

    07月28日 12:30

  5. 5

    テスラのマスク氏、豪邸売払い、500万円の狭小住宅暮らし!

    島田範正

    07月28日 15:45

  6. 6

    上司も部下も知っておきたい 「1on1」を機能させるためのコツ

    ミナベトモミ

    07月28日 12:00

  7. 7

    ロッキンは中止する必要があったのか?〜7 /8の議院運営委員会で西村大臣に質疑を行いました〜

    山田太郎

    07月28日 09:58

  8. 8

    逮捕されても臆することなく、取材を続けよう〜田原総一朗インタビュー

    田原総一朗

    07月28日 08:07

  9. 9

    東京都の感染者数が3177人に いよいよ菅政権と小池都政の人災であることは明白

    井上哲士

    07月28日 18:48

  10. 10

    首都圏3県の緊急事態宣言、要請あれば緊張感持って連携=官房長官

    ロイター

    07月28日 20:24

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。