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【読書感想】アニソン・ゲーム音楽作り20年の軌跡〜上松範康の仕事術〜

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アニソン・ゲーム音楽作り20年の軌跡~上松範康の仕事術~

アニソン・ゲーム音楽作り20年の軌跡~上松範康の仕事術~

内容(「BOOK」データベースより)
『うたの☆プリンスさまっ♪』、『戦姫絶唱シンフォギア』はいかにして作られたのか?大ヒットコンテンツを生み出す神髄に迫った1冊。佐藤ひろ美、水樹奈々、三嶋章夫、金子彰史―4人との対談で天才の本質に迫る!

 知らない人は知らないけれど、知っている人はものすごくよく知っている上松範康さん。
 名前は知らなくても、アニメやゲーム好きであれば、上松さんが作った曲を聴いたことがあるはずです。


 正直、僕は上松さんの作品をそんなに意識したことはなかったのですが、この本を読んでいると、その妥協のない仕事ぶりや体育会系っぽさに圧倒されてしまいました。

 今の世の中で、アーティストとして突き抜けるには、このくらいのことをやらないといけないのか、と。
 何かの参考になるとかいうより、「こんなにすごい人だったのか」と驚かされたのです。

 上松さんは長野県安曇野市で1978年に生まれました。
 お父さんは脱サラ(って、ちょっと懐かしい言葉ですよね。やっぱり同世代感があるなあ)をして松本市で楽器店を経営しており、クラッシック・ギターを演奏していたそうです。上松さんの妹の美香さん(妹さんの名前は知っている、という人はけっこう多いかも)は、インディアン・ハープ(アルパ)の演奏者として活躍されています。

 改めて振り返ると、僕の実家は節費な家でした。朝ごはんを食べにリビングへ行くと、妹は一心不乱にハープを弾いているし、おふくろは鏡の前でヨガをやっている。親父はといえばずっと経営についてボヤいている。バブル崩壊の直撃を食らって、家には結構な額の借金がありました。

 そんな不思議な家のリビングで、僕だけひとり『ウゴウゴルーガ』を観ていました。

 振り返ると、その”カオス”な子供時代こそが僕は自分のルーツだと思うんです。

 子供の頃に親父が聴いていた民族音楽や、ラテン系のギター、そのフレーズや旋律などはElements Garden(エレメンツ・ガーデン)の楽曲たちに生きていますし、何より音楽であれば何でも取り込んでしまう雑食性が子供の頃に養われました。我が家には本当にさまざまな音楽があふれていたんです。

 そして僕は今経営者でもある。その血はきっと、親父や祖父から譲られたものでしょう。

 親父の影響でいえば、我が家には劇場版アニメ『クラッシャージョウ』とか『SF新世紀レンズマン』とか『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』のVHSがあったので、好きでよく観ていました。

 とくに『クラッシャージョウ』の劇伴(アニメ、TVドラマ、映画などで流れる劇中音楽)は、今でも王道の劇伴として頭に焼き付いています。

 この三作品は、僕の中で「アニメの劇伴とはこうあるべきだ」という規範のようなものになっていますね。僕が作曲・オーケストレーションした『キディ・ガーランド』の劇伴は、まさに僕のルーツが生かされていた劇伴だったと思います。
 子供にとって環境の影響というのは大きいのです。
 ただ、環境のなかの、どれに影響を受けるか、というのは、ある種の才能とか運なのかもしれませんね。僕が『シンフォギア』を観て、『マクロス』を思い出したのには、それなりの理由があったのだなあ。

 高校時代にバンドでドラムをやっていた上松さんは、東京のミューズ音楽院に進み、WHO'S WHOというバンドのキーボーディストとしてメジャーデビューも果たしました。

 これは結局うまくいかず、上松さんは、これからはDTM(Desk Top Music)の時代だということで、アレンジャー(編曲家)の勉強をはじめ、リバーサイド・ミュージックの河辺健宏さんの弟子になるのです。
 師匠から言われたことでよく覚えているのは、「編曲は3時間で終わらせろ!」という言葉です。信じられないような話ですけど、師匠は自身で手掛けた曲はどんなヒット曲であっても、僕の目の前で、3時間で仕上げていました。

 曲にもよりますが、通常は1曲仕上げるのに丸1日から2、3日。場合によってはもっとかかるのに、です。

 さらに師匠のすごかったところは、編曲して打ち込んで終わり、ではなく、すべての楽器を実際に自分で演奏して、仮のレコーディングをしていたところです。

 ギター、ベース、パーカッションまで全部自分でプリプロ(プリプロダクションの略。本番のレコーディングの前に行う事前準備全般)するところまで含めて合計3時間。師匠は「これがプロの仕事だ」と言って、それをずっと続けていました。
 上松さんの仕事ぶりも、師匠ゆずりで、本当にすごいんですよ。ものすごくプロ意識が強い人で、仕事が早いし、妥協もしない。エンターテインメントのための音楽をつくっているのに、ここまで自分を追い込んでいるのか、と驚かされます。

 上松さんの曲というのは、こんなの人間が歌ったり、演奏したりするのが可能なのだろうか?というくらいテンポが速かったり、複雑な曲が多いんですよね。

 それについても、「自分のオリジナリティを出すために、あえて『ここまではみんながやらない(やれない)』というところまでやっている」と書いておられるのです。

 そして、その難しい曲を活かせるボーカリストや演奏家たちも、上松さんと一緒に仕事をしています。

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