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「三谷幸喜に影響受けた」37分ワンカット映像必見のゾンビ映画『カメラを止めるな!』に世界が興奮

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(C)ENBUゼミナール

上田慎一郎監督の劇場用長編デビュー作「カメラを止めるな!」の試写を5月上旬に観た。監督の名前も初耳であり、スクリーンに映る役者も誰ひとり知らない。渋谷円山町にある映画美学校試写室で96分の作品を観終えて、まさに今、円山町で同時間に起きているあらゆるエロい事も足元に及ばないだろう興奮に包まれた。

これはまごうことなき、イカれた映画だ。

スクリーンの隅々に上田監督(と出演者とスタッフ)が費やした試行錯誤と達成が充ちていて、「イカれた映画バカによる、イカれた傑作」という賛辞がループし、胸が高鳴った。

(ここで断りますが、この稿、公式サイト以上の情報とならぬように努めるものの、そのうえで私的感想も挟むので、もしすでに「カメラを止めるな!」を観に行こうと気持ちが傾いているなら、ここから先は読まないほうがいいです。事前の情報が無ければ無いほど、この映画のファーストインパクトを圧倒的に楽しめるから。読むのを止めて映画館へ。とくにまだ、観に行く気持ちなどない方は先をどうぞ。)

37分ワンカット撮影のゾンビ映像に打ち抜かれる

まずは、公式サイトのイントロダクションから――

<映画「カメラを止めるな!」公式サイトより>
業界震撼!!新人監督×無名の俳優達が放つスーパー娯楽作!
先行上映でチケット入手困難を極めた超絶話題作が待望の劇場公開!

監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールの《シネマプロジェクト》第7弾作品。短編映画で各地の映画祭を騒がせた上田慎一郎監督待望の長編は、オーディションで選ばれた無名の俳優達と共に創られた渾身の一作だ。

脚本は、数か月にわたるリハーサルを経て、俳優たちに当て書きで執筆。他に類を見ない構造と緻密な脚本、37分にわたるワンカット・ゾンビサバイバルをはじめ、挑戦に満ちた野心作となっている。

2017年11月 初お披露目となった6日間限定の先行上映では、たちまち口コミが拡がり、レイトショーにも関わらず連日午前中にチケットがソールドアウト。最終日には長蛇の列ができ、オープンから5分で札止めとなる異常事態となった。イベント上映が終わるやいなや公開を望む声が殺到。この度、満を持して都内2館同発での劇場公開が決定した。

その後、国内では「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018」でゆうばりファンタランド大賞(観客賞)を受賞。インターナショナル・プレミアとなった「第20回ウディネ・ファーイースト映画祭(イタリア)」では上映後5分間にわたるスタンディングオベーションが巻き起こり、アジア各国の錚々たるコンペ作全55作の中でシルバー・マルベリー(観客賞2位)を受賞。1位は750万人を動員した韓国の大作「1987、ある闘いの真実」であったが、その差は0.007ポイント差と肉薄した。

無名の新人監督と俳優達が創った”まだどこにもないエンターテインメント”を目撃せよ!

これだけを読めば、あらゆる映画の宣伝テキストにある煽り多めのパブリシティだろうと思うかもしれない。だが、作品を観終えてから改めてこのテキストに触れると、「他に類を見ない構造と緻密な脚本」など、おいおいその通りじゃないか、と深くうなずいてしまう。

そして、ストーリー紹介――

<同上より>
とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは42テイクに達する。

そんな中、撮影隊に本物のゾンビが襲いかかる!大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。

”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮ったヤツらの話。

このテキストは、映画全編を明かすメインプロットを寸止めしている。もっと情報の解禁範囲を広げ、宣伝を煽る選択肢もあっただろう。だが、そうすることなく、作品の力を信じ、情報を最小に抑えるスタンスだ。

まず、ワンカットのゾンビ映画らしい…ということが伝わってくるのだが、惹句にもある「37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル」の映像に撃ち抜かれる。

観終えた時に感じる上田監督の熱量

昨秋公開されたゾンビ映画の傑作「新感染 ファイナル・エクスプレス」(韓国 2016年)に身悶えのけぞり声をあげたばかりだが、この「カメラを止めるな!」の冒頭37分は、ワンカットという手法が視界を限定することでライブ感が増幅し、あるべき調和が随所で崩れて違和感を残し、その不安定さが奇妙なリアルとなって時間の推進力をもたらし、趣向は違えど「新感染」に匹敵する濃密至福なゾンビタイムをもたらす。

全体の上映時間は96分。冒頭37分で観て感じたすべての印象が、まさに残り59分に感染し、映画的悦楽を発症するパスとなっていく…。

そしてすべてを観終えた時、上田監督がいったいどれだけの熱量で、構想を描き、プロットを重ね、ロケハンに赴き、シナリオを詰め、絵コンテを描き直したのかと唸る。監督いわく「普通の商業映画の100分の1」という低予算作品。それをここまでの高質エンターテインメントに仕上げたのは、この野心的なアイデアを実現するための熱量があってに他ならない。

最初からデジタルを投入する金もない。そのぶん手間暇をかけ、汗をかいた熱量が映像に焼きついて伝わって来る。映画バカが作品に込めた熱量。それが胸を揺さぶる。試写室での上映は往々にして作品への距離を引き気味に保ち、反応を露わにしないのが日常だ。だが、「カメラを止めるな!」は試写上映後、熱くて温かい拍手に包まれていた。

(ふたたび断りますが、ここから先は、直接的ではないにしろネタバレにもつながり作品鑑賞にバイアスをかける内容となります。ここまで読んで、もしこの映画を観に行く気持ちが若干芽生えているようなら、読むのを止めたほうがベターです。)

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