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30代独身男性が生活保護を貰うのは難しい

 【これまでのあらすじ】

 先年末に10年来連れ添った同居人と別居。ここ数ヶ月家賃分(87000円)も稼げていなかったParsleyさんは、残った生活費も1月半ばには使い果たし、いよいよ困窮。貯金・資産もなく、病院にも行けず、家族も家人も頼れず、進退窮まった彼は、川崎市中原区役所に向かったのだった…。

 【生活保護のおさらい】

 生活保護法によって規定されている、生活に困っている「世帯」の生活を保障し、その自立を助長していることにより、一日も早く自分の力っで生活できるように手助けをする制度。国の定めた基準額(最低生活費)と、世帯収入にくらべて、収入が最低生活費以下の場合に不足額を支給される。

 例えば30代男性一人暮らしの場合は下記の額になる。

 基準生活費 40270円(食費)+43430円(光熱水費等)=83700円
 住宅費    53700円以内
 合計     137400円以内

 このほか、臨時生活費として、被服費、家具什器費、移送費が認められる。また、医療費は原則として福祉事務所から支払われるので、無料になる。
 収入があった場合、定められた基礎控除に必要経費(交通費・税金・社会保険料など)を引いた分が収入として認定される。
 例えば、60000円の収入があって、経費が5000円だった場合は、下記のようになる。

 60000円(収入)-17900円(控除額)-5000円(経費)=37100円(収入認定額)

 137400-37100=100300円(生活保護支給額)

 【実際に相談をしてみて】

 「現状の収入では暮らしていけませんので生活保護の申請をしたいです」
 というと、相談室に案内され、担当課のひとが、聞き取り調査がはじまる。

 そこで支給の障害になったのは郵便局の終身保険。これは解約しないと駄目とのこと。不動産・車・預貯金などは、資産とみなされ、処分することを求められる。
 その日は同意書(4通)・収入無収入申告書、資産申告書・生活保護開始申請書・履歴書・生活目標計画など10通の書類を持って帰宅した。
 その足で終身保険を解約すると、還付金が約320000円あった。
 後日、印鑑・部屋の契約書・健康保険証・生命保険解約書類・診察券・ここ三ヶ月の銀行記帳を用意して再度区役所に。
 すると、「とりあえず、32万あるから生活できるでしょ」と一言。
 そして、通帳記帳の収入に関して、「これは何? これは?」と質問される…。
 結果的に「直ちに生活保護の必要は認められない」とのことで、書類も受け取って貰えず。「記録は残しておくから、また何かあった際に相談に来て下さい」と言われ帰された。

 【いや、ほんとうに困窮しているんですが…】

 確かに、還付金が返ってくるけれど、家賃滞納三か月分を払ったら、5万円強しか残らないし。そこから光熱費や通信費を払ったらほぼ消える。
 そして、最大の問題が、引越し。生活保護で認められる53700円の家賃の部屋に引っ越すにしても、敷金・礼金・運送費は支給されない。どうにもこうにも動けないじゃん!
 でも、収入がある以上、「より見入りのいい仕事を探して働け」といわれるわけ。言われなくても探しているよ!それでも見つからないから来てるんじゃん!!(これはまた別の話なので、改めてエントリーにしたい)
 
 【生活保護の風当たりは強いけれど…】

 BLOGOS「生活保護者を減らす方法は?」というディスカッションがあったけれど、「働ける者は、震災被災者の仮設住宅みたいな施設に入居させ強制労働を」とか「生活保障の審査を厳しくすることが必要」とか、しまいには「対象者には共同で就農してもらい、最低限自分達の食べる分はできるだけ作る」といった珍論まで出る始末で、集合愚だなぁと思わざるをえない。

 せめて、ここで議論をするならば、『生活保護vsワーキングプア』(PHP新書)くらい踏まえておいて貰いたいな。
 真面目な話、137400円という金額でやりくりをするのは相当に大変だし(しかも借金の返済に使うことは認められていない)、さりとて働くと受給が減るとなると、にっちもさっちもいかない制度と額である。そして、何かのための貯蓄も出来ない。社会復帰を目指すにせよ、制度に浸かるにせよ、どちらにしても厳しい道だ。
 その上で、Parsleyが経験したように、少しでも就労が出来そうな場合、受給資格を得ようとしても窓口で追い返される可能性が非常に高い。それこそホームレスにならないと難しいのでは、と推測する。
 
 さらに、コンビニやファーストフード店などのアルバイトにはアジア系留学生が増え、経理などのバックオフィスはインドやマレーシアに置くようになり、Webのコーディングやプログラミングを中国などに発注している企業が多くなっている状況は今後加速していくだろうし、20代~30代の世代が職を失う場面に遭遇する確率はかなり高い。若年労働者の失業は当たり前の時代の到来は、もうすぐそこだ。
 そんな時に、生活保護という「最後の綱」にすがらないといけないひとは確実に増える。
 労働意欲とか個人の問題でどうなるものでもない社会が、既に到来しつつあるということに、早く多くのひとが気づいて欲しいし、雇用も含めた制度設計をした上で、社会保障の見直しをする必要があると思うけれど、政治にそれを期待するのは難しそうという八方塞がりな状況。そうなると、今度は「自殺」というファクターともリンクしてくる。

 Parsley個人の話になると、「そもそも、なぜ生活保護を真剣に考慮しなければならないほどに追い込まれたのか」というところも、相当ツッコミどころ満載なのだけれど、それはまた別の話ということで。

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