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会計不正の発見力と内部統制の有効性(構造計画研究所事例)

旧日債銀粉飾決算事件において、東京高検は上告を断念することを発表し、被告人3名の無罪が確定するそうであります。高裁判決についてはまだ判決全文に触れておりませんので、全文を読ませていただいたうえで感想を述べたいと思います。(金融・商事判例あたりに判決文が掲載されることを期待しております)

さて週刊「経営財務」の最新号(9月12日号)で知りましたが、ネットワーク・システム・ソリューションを業とする株式会社構造計画研究所さん(JDQ)が同社の元取締役による不正支出があった旨を8月30日にリリースされております。

リリースによると、同取締役は 「平成13年9月より本年3月までの10年間にわたり、合計49百万円の収入印紙を会社経費にて購入し、自ら保管するとともに随時、うち45百万円分を小分けにしながら金券ショップ等に持ち込み遊興費等に流用していた」 というもの。すでに同取締役は辞任され、実損害額も全額回収されたそうであります。回収した損害額の内41百万円は特別利益(受取損害賠償金)、残りの4百万円は販管費戻入れに計上するそうです。

ところで(経営財務さんも関心を持たれているようですが)本件において、同社では自社の内部統制システムを
「一般的な水準を充たしており、また、本件不正が内部通報によって発覚し、調査委員会の調査により不正の内容を解明して損害額を全額回収することができたことを考慮すれば不正に対するチェック機能は有効に機能している」
と評価しておられます 。いわば、不正発見のためのシステムが早期に機能したために、内部統制に重要な問題があったとは評価していないというものでして、(職務分掌、ローテーション、ダブルチェックシステム等の)作業確実実行力に不備があったとしても、不正早期発見力が機能してモニタリングシステムが代替装置としての役割を果たすことに着目したものと言えそうです。

2011年4月18日のエントリ「㈱大水社の内部統制システムは進化したか(二度目の不適切取引の発覚)」におきまして、私は
大水社(大証二部)の二度目の不適切取引の発覚については、自社の内部監査部門が「異常な兆候」を自ら発見し、非定例の調査を進め、架空循環取引の事実を把握したことによるものであり、これは同社の「自浄能力」が機能したものであり、内部統制が進化したものと評価できる
と述べましたが、今回も会計不正による被害が大きくなる前に、自社の不正発見力によって異常な兆候が把握され、社内調査委員会によって役員の不正を突き止めたものとして、構造計画研究所さんの自浄能力が機能したものと評価してよいのではないかと思います。こういった「自浄能力」を考える場合、会計不正を早期に解決したがゆえに「公表まで必要かどうか」といった論点も出てくるわけですが、同社は本件不正の処理がすべて確定したことから対外公表に踏み切った、としてその必要性、公表時期についての検討もなされた様子であります。

会計不正事件が発覚するも、自浄能力が失われていないことを対外的に示して、その信用回復措置を講じる、というスタイルが、これからも増えてくるのではないでしょうか。

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