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ワールドカップはTVで見ればよい 超入門・サッカー観戦法

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写真)FIFAワールドカップ2014 出典)copa2014.gov.br

林信吾(作家・ジャーナリスト)

「林信吾の西方見聞録」

【まとめ】

・サッカー観戦には試合展開が予測できない面白さがある。
・スタジアム観戦の場合、陣取る席によっては天国と地獄の差がある。
・純粋にサッカーを見て楽しむならTVのほうが良い。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=40520でお読みください。】

サッカー観戦の醍醐味はスタジアムでの応援。昔も今も、そう信じている人が多い。たしかにサッカーに限らず、勝敗を争う競技といったものは、どちらか一方に感情移入しながら見ないと、いまひとつ盛り上がらない。ただ、『野球型VS.サッカー型』(共著。電子版配信中)の著者である私としては、野球とサッカーとでは、観戦するポイントにも違いがある、というところから話を始めたい。

野球という競技は、打順が決まっていて、守備のポジションもさほど動かない。豪腕投手にして左の強打者という大谷翔平選手に対して、大リーガーたちが守備位置を偏らせる「大谷シフト」を敷いた例はあるが、せいぜいそんなものだ。一塁手が右中間に飛んだ打球を追いかけることはないし、外野手は内野ゴロを捕りに行かない。

なおかつ投手と打者の駆け引きを中心に試合が進んで行くので、ネット裏からのTV中継で、次はどんな球を投げるのがよいか、と予測しながら楽しむことができる。

これに対してサッカーは、ゴールキーパー以外の10人がフィールドいっぱいに広がり、しばしば一つのボールを複数の選手が奪い合い、なおかつ手ではなく足を使ってプレイする。足は手ほど器用には使えない。こうしたわけで、試合展開がきわめて予測しにくい。言い換えれば、次の瞬間なにが起きるか分からない、というところに、サッカーの本当の面白さがある。野球観戦には予測する面白さがあり、サッカー観戦は予測できない面白さがある、と言えばよいか。

観戦の醍醐味という話も、ここにつながってくるので、TV中継だと、どうしてもボールを追いかけてしまうが、本当はボールに絡まない場所で敵味方の選手がどんな駆け引きをしているか、さらに言えば、お互いどのような戦術で点を取ろうとしているのか、といったところが見えてくると、一段と面白くなるのである。

ただ、私は経験上、TVで熱狂するサッカーファンを認めない、などと知った風なことを言う手合いこそ、実はサッカーをよく知らないのだ、と考えている。

2002年6月5日、私はカシマスタジアムにいた。ワールドカップ日韓大会のチケットが思いがけず買えたので、1次リーグのドイツ対アイルランド戦を見に行くことができたのだ。ゴール裏、前から5列目くらいの席であった。

この結果、まずは前半にドイツ代表クローゼの、素晴らしく打点の高いヘディングシュートを、まるで自分に向かってボールが飛んでくるような視点で見ることができた。しかも後半エンドが変わり、今度は終了間際にアイルランド代表ロビー・キーンの「魂の同点ゴール」を、これまた間近で見たのである。

そうかと思えば、こんな経験もある。

2007年4月18日、私はバルセロナのカンプ・ノウにいた。

FCバルセロナの本拠地で、この日はコパ・デル・レイ(国王杯)準決勝というビッグマッチであったが、たまたまホテルのマネージャーを通じてチケットが買えたのだ。ただ、配られたメンバー表を見て、なんだ、ロナウジーニョ先発しないのか、などと思ったのを、今でも覚えている。当時は、なんと言ってもロナウジーニョがビッグネームだった。

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写真)ロナウジーニョ選手 
出典)Alex Carvalho from Rio de Janeiro, Brasil

ところが前半28分、自陣よりのハーフライン付近でパスを受けたバルセロナの選手が、あれよあれよという間に敵陣深く切り込み、シュート。

これが見事に決まり、スタジアムは総立ちとなった。

私も立ち上がって拳を突き上げたが、私の席はゴール裏の上の方で、反対側のゴールからは100メートル以上も離れている。

正直な話、数日後に帰国してTVのスポーツニュースを見るまで、なにが起きたのか正確に把握できていなかったのだが、実はこれこそ、リオネル・メッシが演じた「伝説の5人抜き」だった。ちなみに当時彼は19歳。新進気鋭の選手であった。

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写真)リオネルメッシ選手 出典)Fanny Schertzer

お分かりだろうか。スタジアム観戦の場合、席によって天国と地獄みたいな話になるのである。

サッカーに興味を持ち始めた方は、まずは空席がある(つまり席を選べる)ような試合に足を運び、センターライン付近の、やや上の方に陣取ることをお勧めする。

これだと、フィールド全体を鳥瞰的に見渡せるので、ボールを目で追いつつ、先ほども述べた、ボールに絡まない選手の動きに目を配れる。ほどなく、自分のところにはパスが来ないと知りつつ、相手守備を攪乱するために突進するような、おとり役とかつぶれ役などと呼ばれる選手がいるチームの方が強い、といったことが分かるようになるだろう。逆に、相手に完全にブロックされて横パスを出してしまうような選手には(どこかの国の代表は、こんなのばかり!)、自然と「なにやってんだ!」と野次が口をついて出るようになる。野次も観戦の楽しみのうちだ。こうした次第なので、ワールドカップに関して言えば、TVで見ればよかろうと思う。

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写真)イメージ図  出典)pixabay

もともとワールドカップが「20世紀最大のヒット商品」と称されるほどの盛り上がりを見せているのは、TV中継のおかげであるし、サッカーのユニフォームやボールが年々カラフルになってきたのも同じ理由である。
実はもともとサッカーボールは、バレーボール(これも昨今はカラフルだが)と同じような淡色であった。

ヨーロッパなどでは1960年代からTV中継が始まったのだが、これが大不評であった。当時は白黒TVだったわけだが、芝生の上を淡色のボールが転がる図を、白黒で映したらどうなるか、ちょっと想像してみていただきたい。

「ボールがどこにあるか分からない」という苦情が殺到したため、各国のサッカー協会も対策を講じなければならなくなり、この結果1970年代以降に、おなじみの白黒に塗り分けられたボールが普及したのだ。

余談はさておき、スタジアムで声を枯らして応援し続けるというのも、サッカーの楽しみ方のひとつではあるだろう。そういうファンを否定するつもりは毛頭ない。ただ、純粋にサッカーを見て楽しみたいのなら、むしろTVの方がよいかも知れない、とだけ言っておこう。

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