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「看多機」に見る地域医療の可能性

潜在看護師の復帰あってこそ!
高齢化 多様な医療・介護が不可欠

高齢化に伴う医療・介護需要の増加と40兆円を突破した医療費の膨張、少子化に伴う医療・介護人材の不足―。

医療制度の危機が叫ばれる中、日本の医療はこれまでの病院中心から医療、ケア、生活が一体化した「地域包括ケアシステム」に軸足を移しつつある。

加えて核家族化の進行で老人夫婦世帯、一人暮らしの老人が増え、90%以上の高齢者が人生の締めくくりを「自宅で迎えたい」と望む現実もある。今後も多様なシステムが検討されると思うが、地域に密着・共生する医療こそ不可欠と思う。

地域包括ケアシステムの一環として2015年度の介護報酬改定で新たに登場した「看護小規模多機能型居宅介護」(通称・看多機)が現時点では最もその可能性を秘めた制度と思われ、過日、その一つ「結の学校」を福島市南沢又に訪問ねた。


「結に学校」と所長の沼崎美津子さん

「結の学校」の母体は2005年に開設された「訪問看護ステーション結」。所長の沼崎美津子さん(59)は南東北福島病院の元看護部長で、2014年、笹川記念保健協力財団が日本財団の支援でスタートした「在宅看護センター起業家育成事業」の研修に参加。

8ヶ月間にわたり地域社会における保健医療の在り方から企業経営に必要な財務・税務・労務などを学び、翌年、「日本財団在宅看護センター結の学校」と「看多機」を併設した。

看多機は「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を合わせた複合型サービスで、「小規模」の名の通り、1事業所当たりの利用可能数は「登録」が29人以下、「宿泊」9人以下、「通い」18人以下となっている。現在、全国約350ヵ所に開設され、日本財団の育成事業に参加した研修生50人で見ると39人が全国に立ち上げた計45の事業所のうち2ヶ所が看多機(残りの大半は訪問看護ステーション)となっている。

福島市の郊外のブドウ畑の跡地に立つ「結の学校」には現在、助産師や社会福祉士、管理栄養士らを含め23人のスタッフが所属し、医師とも連絡を取りながら24時間365日、「通い」、「泊まり」、「訪問看護」、「訪問介護」といった多彩な方法で患者を見守っている。

病院中心の医療に比べ選択肢が多く、本人だけでなく家族の心労や負担も間違いなく軽減すると思われる。

介護保険料、診療報酬、本人の自己負担が“収入”となるが、沼崎さんによると「経営的には何とか採算が取れ、看護師が患者と密接に接触し症状を把握することで余分な薬剤がカットされ、結果的に医療費の抑制効果も出ている」という。

新しい地域医療の形として注目されるが、問題は同種の施設をどこまで増やせるかー。母体となる訪問看護ステーションは現在、全国約9000ヶ所に整備されているが、65歳以上の高齢人口は2013年の4人に一人から2035年には3人に一人に膨張する。

看多機を支えるのは文字通り看護師・介護師となるが、当の看護師は団塊世代が75歳以上となる2025年に50万人、介護師は30万人不足すると見られている。

政府は外国人労働者の受け入れ拡大を検討しているが、看護・介護人材の多くは途上国出身者で、経済発展に伴う各国の看護・介護人材の需要の高まりを前にすると、多くを期待するのは難しい。

結局、将来の医療・介護人材不足は国内で解決するしかなく、その場合に切り札となるのは約60万人に上る潜在看護師しかない。

政府が目指す地域包括ケアシステムの構築もこの一点にかかり、潜在看護師の社会活動復帰を促す抜本策こそ必要との思いを一層強くする。(了)

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