記事

米朝会談を終えたトランプの「次の一手」は何か〜田原総一朗インタビュー

AP
史上初の米朝首脳会談が6月12日、シンガポールで開かれた。米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長が会い、握手をかわした。1年前には考えられなかった事態だ。この歴史的な会談をどう見るか。田原総一朗さんに聞いた。【田野幸伸・亀松太郎】

共同声明に盛り込まれなかった「CVID」

米朝首脳会談の翌朝の新聞各紙を読むと、全紙がほぼ同じトーンだった。国際政治の動きについて、ふだんは朝日と読売が真逆の伝え方をすることも多いが、今回は朝日も読売も産経もほぼ同じ評価。そこが面白かった。

まず、史上初の米朝首脳会談が行われたこと自体は非常に画期的なことだとしつつ、会談の中身については、期待と不安が相半ばしているとしていた。米朝共同声明が発表されたものの、その内容は極めて抽象的で具体性がなかったからだ。

たとえば、首脳会談前、ポンペオ米国務長官は米国が譲れない条件として、北朝鮮の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)をあげていた。しかし、共同声明にCVIDは盛り込まれなかった。非核化をどのように実現していくのかという道筋が示されなかったのだ。

トランプ大統領は記者会見で「完全な非核化には長い時間がかかる」と述べた。「なぜ共同声明にCVIDが盛り込まれなかったのか?」と記者から質問されると、「時間が足りなかった」と答えた。これは非常に無責任な発言で、もっとしっかり交渉すべきだったという批判がある。

さらにトランプ大統領は、北朝鮮の金正恩委員長に対して「北朝鮮の体制は保証する」と約束した。つまり、戦争はしないと。これは金委員長の期待通りだ。

非核化について、従来は「北朝鮮の非核化」という言い方をしていた。しかし、今回の共同声明では、4月の南北首脳会談の板門店宣言を踏まえて、「北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けて取り組む」という言葉が入った。

朝鮮半島の非核化となると、米軍の韓国からの撤退という問題が出てくる。米国は核保有国だからだ。この問題について、トランプ大統領は記者会見で「将来の撤退はありうる」と発言した。米韓合同軍事演習についても極めて消極的で、中止する意向を表明した。

このような内容なので、日本の新聞は「今度の会談はむしろ金正恩委員長優位で運んだのではないか」「トランプ大統領が妥協しすぎではないか」という見方が多い。

さらに、日本の安倍首相が事前にトランプ大統領に会って念押しした拉致問題はどうだったか。トランプ大統領は会談で拉致問題について発言したようだが、金委員長がどう反応したかは明確ではない。

結局、安倍首相も、拉致問題については日朝首脳会談を開いて、日本が強く求めることで決着させるしかないと言っている。

米朝首脳会談の目的は「中間選挙」の勝利

AP
今回のトランプ大統領の交渉をどう評価すべきか。

たとえば、米国の外交問題に詳しい渡部恒雄氏は「トランプ大統領は『外交とはディール(取引)だ』と言っている。今回の会談はハードではなくソフトな姿勢だったが、ディールであれば、最終的には妥協ではなくて、最終目標の『非核化』に持っていくだろう」と話している。

今回、トランプ大統領は金正恩という人物を非常に褒め上げた。人格者で正直で、非常に信用できると。なぜか。トランプ大統領としては、金委員長に対して「自分はこんなに評価しているのだから、今後の交渉で変な駆け引きをしたりや嘘はついたりするな」と言いたいのかもしれない。

トランプ大統領が米朝首脳会談を開いた最大の理由は、今秋、上下両院の中間選挙が予定されているからだ。上院は共和党が勝つだろうとみられているが、下院は相当危ないと言われている。ここで負けるとロシアゲートの問題が再燃するので、トランプとしては何としても勝ちたい。

アメリカ国民に向かって、「ブッシュやオバマは何もできなかったが、自分は圧力をかけて金正恩を屈服させた。俺は勝ったんだ」と強調するだろう。

だが、まだ中間選挙に勝てる保証はない。このままでいいのかという不安が残る。そこで、秋までにトランプが第2弾として、何をどう仕掛けるつもりなのか。僕はそこに注目している。

米朝首脳会談後の記者会見で、トランプ大統領は「非核化の費用」について、韓国と日本が負担すると述べた。これは、トランプ大統領が掲げる「アメリカ第一主義」の一環といって良い。

この費用はとてつもない金額になる恐れがある。拉致問題が決着するまで、日本の国民感情としては出したくないだろう。安倍首相は難しい決断を迫られる。米国の要求と日本の国民感情の間で、安倍首相はどう判断するのか。

あわせて読みたい

「米朝首脳会談」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    一橋卒が年収300万円稼げない訳

    ニャート

  2. 2

    「安倍やめろ」が自民圧勝に貢献

    かさこ

  3. 3

    ジャニ圧力は弱腰テレビ局の忖度

    渡邉裕二

  4. 4

    人気店の予約が取れないカラクリ

    内藤忍

  5. 5

    元駐日大使「責任は韓国政府に」

    文春オンライン

  6. 6

    山本太郎氏が社民党に引導渡す日

    やまもといちろう

  7. 7

    徴用工仲裁手続きから逃げる韓国

    緒方 林太郎

  8. 8

    派遣の時給上げ施策 実態と乖離

    佐々木康彦 / ITmedia オルタナティブ・ブログ

  9. 9

    LIXIL社長 論点すり替えで復権

    大関暁夫

  10. 10

    輸出規制めぐり文在寅氏に焦りか

    AbemaTIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。