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野球部員の自殺で人権侵害認め、警告と要望 愛知県弁護士会

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一連の暴力行為を暴行罪に該当する犯罪行為と認定し警告

同弁護士会は、「(一連の)暴力行為は、教育指導の名目があったにせよ、正当化できるものではなく、体罰である。同時に暴行罪(刑法208条)に該当する犯罪行為であり、人権侵害」とした。

また、「体罰は、体罰を受けた生徒だけでなく、体罰を見せられた生徒に対しても、同じようなことがあれば暴力を振るわれるという恐怖心をいだかせ、みせしめの効果が生じる。つまり、生徒は、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力から保護されなければならない(子どもの権利条約第19条)ところ、体罰を見せられた生徒に対しても、体罰を受けた生徒と同様、心身に深刻な悪影響を与える」とした。

その上で、「恭平さんは、偶然にではなく、副部長が野球部員を集めたミーティングで、すなわち。逃げ出すことができない状況で、副部長の体罰を目の当たりに見せつけられ、その不快感を母親に伝え。副部長の呼び出しに、副部長からの暴力をうけることを恐れる心理状況になった」と認定、「警告」した。

こうした人権侵害の認定の上で、弁護士会は、副部長が所属していた愛知県立刈谷工業高校に対して、教員の生徒に対する体罰などの不適切な指導の再発防止のために策定された具体的方策を教員に周知徹底をすること。再発防止体制を維持し、定期的にこれを検証し、不適切な指導を未然に防ぐことを「要望」した。

その根拠となったこととして、警告書で認定した事実に加え、11年7月1日、教頭は副部長の体罰について確認した。13日には、教頭が部員の面接調査し、8月3日にも教頭が部員に対して体罰についてのアンケートと面接調査を行なった。その際、教頭は「日時を特定しないと他の生徒に確認できないので、確実な日時があるものを特にあげてくれた」と言っていた。いわば、ハードルを高くした。このことで、両親の不満、不信が生じている。

(遺族によれば、面接調査の際、教頭が「みんなに迷惑がかかるから」と言っていた、と他の部員が証言。同部員は「だから全部を言えなかった」とも話した、という。)

こうした点について、弁護士会では、学校教育法第11条の但し書きで体罰を禁止していること、文部科学省の「指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン」(*6)では、教員を育てることは校長の重要な役割であると指摘していることから、日常的に指導、助言できる良好な職場環境を整えることとしている。

*6 指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinji/08022711.htm

情報の正確性や迅速な対応などを要望

また、弁護士会は、恭平さんの自殺後における学校の対応についても批判。文部科学省が10年3月に策定した「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」(*7)、14年7月策定の「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」があるにもかかわらず、対応にミスがあったことや、調査を遅らせていたことを指摘している。

*7 子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/11/11/1304244_01.pdf

そのため、弁護士会では、不適切な指導に関連した自殺が起きた場合、得られる情報の正確性を確認、担保できる体制を整えること、そして、親の知る権利や心情に配慮しつつ、自殺行為に至った原因を迅速に調査し、調査結果を親、教員、教育委員会などの関係者で共有し、調査結果にもとづいて対応策を講じることも要望した。

「日大アメフト部の問題でも同じで、他に選択肢がない」と遺族

今回の弁護士会が認定した内容について、優美子さんは「自殺との因果関係は認めていない」としながらもこう話す。


「一人の生徒の死に真摯に向かい合って、活かして欲しい」と訴える山田優美子さん

「当該教員あての警告書には、教員による一連の行為は明らかに犯罪行為とありました。これだけ書いてもらえれば、十分です。ただ、あの先生だけの勢いで突っ走ったわけではない。野球部の保護者たちの体罰容認の空気もありました。指導者として、何が何でも勝たせないといけないと思い、何をしてもいいと容認されるような感じだったのでしょう。

教員だけが悪いとは思っていません。日大アメフト部の問題でも同じではないでしょうか。他に選択肢がない。そんな状況だったのでしょう。自分の使命としては『勝たせないといけない』。そのために体罰もし、『そうやって自分も強くなってきた』と言っていました。指導者自身も、これまで殴られてきたのです。そういう経験の連鎖があったのでしょう。あとは県教委が、一人の生徒の死に真摯に向かい合って、活かして欲しい」

総監督や副部長に言いたいことはあるかと聞くと、優美子さんはこう述べた。

「恭平は、総監督から退部を却下された直後からひどく落ち込みました。そして副部長の繰り返される暴力を目の当たりにし続けた事で状態が悪化しました。すぐに退部できていたら、恭平は回復していたと思います。

総監督は、自分も殴られて野球をしていたからこそ指導者になってから、絶対に子ども達に体罰はしないと心に決めて指導をしていたと言いました。それは当時の部員たちが彼を「ホトケ」と呼んでいたことからも明らかでしょう。レギュラーでない部員にも丁寧に声掛けをし、誰にとっても良い指導者だと聞きました。恭平も総監督を慕っていました。だからこそ恭平は理由も聞かれず退部を却下されたことにショックを受けたのです。総監督はその事について十分に理解し詫びてくれました。

私は『誰でも不用意な言葉をかけることはある。今回はこんな大きなことになってしまったけれど、今回の事を十分理解してくれたのなら、これからも良い先生でいてください』とお伝えしました。しかし、その後、教員を辞めたと知りました。総監督は主に3年生の指導にあたり、恭平をほとんど指導していません。しかしこれほど重く受け止めてくれています。誠実な教員がまさに子ども達に必要なのに、学校もそれを理解できていなかったのでしょう。

一方で日常的に暴力を繰り返し、恭平を直接指導していた立場であり、しかも休日の遠征の時には、早朝の正門を開ける事を恭平に命じ鍵を預け、誰よりも早く学校に行かせる役目まで押し付けていながら、のちに『ほとんど話したこともなくよく知らない生徒』とまで言い放つ副部長が、罪の意識も感じず教員を続けています。

どちらが子ども達にとって良い教員であるか、明らかではないでしょうか」

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