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“松井世代”と“ダルビッシュ世代”、育った時代でこんなに違う?

札幌ドームでファンを集めて開催されたダルビッシュ投手の大リーグ移籍会見は、本当にカッコよかったですね。感動的ですらありました。ファンを大切に思い、ファンの気持ちを考えて語る。「今ここにあるのもファンの皆さんのおかげ」「またいつかここに帰ってこれたら嬉しい」等の発言は、ややもすれば人気におぼれ人気に胡坐をかき、ファンあってのプロスポーツであるという原点を忘れてしまっている球団や選手も間々見受けられる昨今、若いのに本当に素晴らしいプロスポーツ選手であると感心させられました。

ダルビッシュ投手は「大リーグでの活躍を見てみたい」という周囲の声にも押され、自らは憧れではなく戦う場所を求めて挑む大リーグ。その上で、「できればまたいずれ地元のファンの皆さんの前に帰って来たい」とファン歓喜の言葉を残しての渡米です。どうしても比較をしたくなってしまうのが松井秀喜選手。以前から「もう日本ではプレーをすることはありません」と言ってはばからない彼。ピークを過ぎた今、「ヤンキース以外は考えられな」かったハズが、拾ってくれるチームを転々として年々年俸を下げながらDHで雇われる形でも大リーグ残留の道を探し続け、なおも「日本に戻ってプレーはしない」と大リーグでの現役全うにこだわる。多くのファンが日本球界復帰を望もうとも、まさに自己のプライド重視の生き様の様に映ります。これほどまでに明確なダルビッシュ投手との考え方の違いの根底には、単なる個人差以上に育った世代間の違いがあるように思えてなりません。

松井選手が74年生まれで今年38歳。ダルビッシュ有投手は86年生まれの今年26歳。ちょうどひと回り年齢が違います。この12年の生まれの違いの背景に何があるのでしょう。少し勝手な推測をしてみます。バブル経済ピークは平成元年、89年前後と言われています。戦後高度成長を続けてきた日本は、一時期オイルショックやドル=円為替の変動相場移行後の為替変動などによる景気の波こそあったものの、基本的には地価の右肩上がり神話に支えられた“土地本位制”の下での経済成長は膨張を続け、遂に天井を打ったのがこの時でした。以降はバブル崩壊後と名づけられ、合間合間にミニバブルは織り込みながらも地価は下落を続け“土地本位制”崩壊による低成長時代に突入した訳です。その後は90年代には金融危機が、00年代にはリーマンショックが襲いかかるという、気の抜けない経済情勢が人々の生活感にも大きな影響を及ぼしてきたと思います。一般的に人格形成期における世相背景の違いは、世代ごとの物の考え方の違いとして現れると言います。松井選手、ダルビッシュ投手それぞれが育った時代背景と心理的影響を順にみてみましょう。

松井選手の場合、バブルピーク時は中~高生。この時代には物心もついて、自分で稼いでこそなかったものの世間や家庭の雰囲気から、十分バブル景気を感じ取ってもいたのではないでしょうか。この環境下で育った現30代後半世代は、社会人デビュー当時に「昭和入社世代とは明らかに違う要注意世代」と言われました。高度成長期とは異なるバブル景気時に育った彼らは、「自分さえ頑張れば何でもできる」が根付いたのでしょうか「上下関係に縛られない」「社会性に乏しく自己中」などと評され、当時私ら昭和組の管理者は「世代の違いを十分理解し、“飲みニケーション”を押し付けるようなやり方はダメ」などと組織内教育上の注意事項として人事セクションからお達しを受けたものです。松井選手はまさにその時代の新人社員なのです。なるほど、彼が今も大リーグにこだわり続ける理由は、こんな世代的背景もあるのかもしれないと妙に納得させられます。

一方のダルビッシュ投手。物心がつく頃は、既にバブル崩壊後の金融危機の真っただ中。誰も予想もしなかった都市銀行、大手証券の倒産と不景気風が吹き荒れた暗い世間のムードは、少なからずその人格形成期の心理状況に大きく影響を及ぼしたハズです。バブル崩壊後の慢性的な長期的沈滞ムードの中で「無駄は悪」を叩き込まれた今の20代は、自己中ではなく、どちらかと言えば仲間や地域を重視しつつ無駄を排して苦しい状況を協力姿勢で抜け出す等、仲間を大切にする傾向が強い。すなわち「形」よりも「実」を取り、家も事務所もあらゆるものを「シェア」という協力体制で乗り切る考え方も抵抗もなく受け入れられる世代であります。そんな彼らには一例をあげるなら、「海外旅行には関心ない」「見栄で車は持たない」「可能なら買わずに貸し借りで済ます」などの特徴があります。ダルビッシュ選手の「大リーグ行きは、憧れではなく実力試し」という渡米動機や、自分を育ててくれた地元を何より大切にする気持ちは、そんな今様の若者気質に端を発した正直なものであるのだろうなと思わされます。不況が育てた若者気質の代表例と言えるのかもしれません。

こうしてみてくると、松井選手とダルビッシュ投手の言動には大きく異なる世代特有の考え方がその行動の裏側に脈々と生きているように思えておもしろいです。そのどちらもが、また松井世代のひとまわり上にあたる我々世代が二十代、三十代だった頃とも全然違ったりもするわけで、人格形成期の世の中の動向が影響を与えるその後の世代感覚の違いというのは確かにあるのでしょう。次代を背負う若手世代の代表として会見で垣間見たダルビッシュ選手の堅実で優しい物の考え方を受け取るなら、閉塞感満載の今の時代に一筋の光明を見る思いです。

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