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『おカネの教室』特別対談金融・経済の「学園ドラマ」で学ぶ「お金の不思議」と「働く意味」 - 磯山友幸

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ジャーナリストの磯山友幸氏(左)と『おカネの教室』筆者の高井浩章氏。同じ部署で働いていただけに、久しぶりの再会にも話は止まらず……

 かせぐ、ぬすむ、もらう、かりる、ふやす――お金を手に入れる6つ目の方法は?

そんな問いかけから始まる小説仕立ての子ども向け経済書『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』(インプレス)が話題を呼んでいる。新聞記者が本業の著者である高井浩章さんは、ユニークな著作にどんな思いや意図を込めたのか。高井氏が駆け出しの記者だった頃、同じ新聞社でキャップだったジャーナリストの磯山友幸氏が聞いた。

「僕」が入った奇妙なクラブ

磯山 お久しぶりです。10年ぶりでしょうか。高井さんの『おカネの教室』がベストセラーになっていますね。おカネというものを通して経済を分かり易く解説していて、子どもたちにも経済に関心をもってもらう第一歩になる「名著」だと思います。もともとご自身のお子さんに読ませるために書いたそうですが、どうしてお子さんに向けて書こうと考えたのですか。

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高井浩章『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』 インプレス/1728円

高井 大先輩の磯山さんに名著と言っていただけるとは光栄です。実は、長女が10歳くらいになって、お小遣いを自己管理するようになったタイミングで、自分で使い道を考え、選択して欲しいなと思ったことが1つ。もう1つは、ちょうどリーマンショックやギリシャ危機が起こった後で、おカネの仕組みは大丈夫なのか、子どもたちにも理解して欲しいと思ったことがきっかけでした。初めは、良い本がないかなと本屋で探したのですが、入門書はたいてい面白くなかった。「おカネの本」というと資産運用とか税金対策とか、そんな本ばかりなんですね。仕方がなく自分で書くことにしたのです。

磯山 自分で書いてしまおうというところが凄いですね。

高井 昔、『ポドモド』という男の子の冒険物語を書いていて、実はこれは「家庭内連載」の第2号なんです。まさしく「連載」で、少しずつ書いて、それを読んでもらう。子どもですから、面白くなかったら読んでくれない。だから小説仕立てにして関心をひきました。書籍化する際に、登場人物の設定を変えたり、大幅に改稿したりした部分もあります。

磯山 『おカネの教室』は、中学2年生になった「僕」が、奇妙なクラブに入るわけですが、顧問は謎の大男で、メンバーは大富豪の美少女と平凡な「僕」だけという設定。その顧問が問いかける質問を考えていくうちに、おカネや経済の仕組みをひも解いていくという仕掛けです。装丁もユニークで、表紙の黒板のイラストに「お金を手に入れる方法」として、「かせぐ」「ぬすむ」「もらう」「かりる」「ふやす」とあり、「6つ目の方法は?」と書いてあります。何だろう6つ目は、ということで、引き込まれて読んだ人も多いのではないでしょうか。

高井 最初に構想を練った時に、娘はなかなかこの6つ目の答えを出せないんじゃないかなと思っていましたね。それで最後まで引っ張ろうと考えました。連載を書き進めているうちに、フランスの経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』が話題になって、これはピケティにもつながるなと。書き始めた当初に比べて、娘も成長しているので、理解度が高まってきました。後半の方が少し難しいのはそのためですね。

磯山 実はおカネや経済について子どもの頃に学ぶチャンスはほとんどないんですよね。僕の子どもが通っていた小学校の先生から、「磯山さん、経済ジャーナリストなんだから、子どものためのおカネの本を書いてください」と、言われたことがあります。中学校でグレてしまい、中卒で社会に出た子は契約やおカネの仕組みを知らないので、騙されて借金を背負ったり、連帯保証人になったりして身動きが取れなくなるなど、悲惨な目に遭うケースが少なくない。そうした失敗をさせないためには、小学校でおカネについてきちんと教えないとダメだ、と言うんです。ずっと気にかかりながら実現していなかったので、高井さんの本をみて「これだ!」と思いました。

実は「働き方の本」

高井 出版してみると、子どもよりも大人に読まれていることがわかりました。実際、多くの大人が経済の基本ルールを知らないまま世の中に放り出されていますから。これは、ルールを知らないでマージャンをやっているようなものです。

 借金というのは、人生でハマってはいけない最大の「トラップ」だと思うんです。実は、私の父は自営で看板屋をやっていたのですが、どんなリスクをこうむるのかよくわからないまま、手形を裏書きして倒産しました。金融リテラシーなんてまったくない親父ですから、それで人生「詰んだ」わけです。一時は給食代すら払えませんでした。

 周りには大学に行く人はいませんでしたし、友だちや先生から「どうだ?」と言われるまで、僕は大学進学という選択肢を考えたことがありませんでしたね。米国で『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』という本が話題ですが、「貧困層の人たちが、なぜ貧困から抜け出せないのか」の答えの1つは、抜け出す道が見えない、方法を知らないということなんです。僕はなんとか大学に進みましたが、親の借金のことを考えると、「奇跡」みたいな感じで。だからこそ、おカネや借金の怖さも身に染みて分かっています。

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磯山氏「実際は働き方の本というか、職業選択の本でもありますね」

磯山 この本は、『おカネの教室』と題していますが、実際は働き方の本というか、職業選択の本でもありますね。子どもたちにどんな仕事を選ばせるか、父親としてのメッセージが込められているように感じます。それにしても、金融工学の専門家「クオンツ」(高度な数学的手法を用いて、市場や投資戦略などを分析する)など、一部の職業を「ダニ」とまで言い切っていますが、厳しいですね。

高井 現実にはクオンツでも、マーケットの効率化に貢献している人はたくさんいます。でも、リーマン前の一部の行き過ぎが金融危機の遠因になったのは否めないし、まして他人のお金をかすめ取るような商品に金融工学が利用されているケースは、「ダニ」としか言いようがないと思います。

 そして磯山さんが仰るように、この本は「働き方の本」なのです。働くことを通じて人類にどう貢献するのか、子どもに問いたかった。米FRB(連邦準備制度理事会)の議長だったポール・ボルカーの持論は、「銀行の革新はATMを最後に経済に貢献していない」というものです。

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