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- 2011年08月04日 02:09
経営判断原則の司法審査方式と「行政裁量論」
今年で54回目を迎えました大阪弁護士会の夏期研修が今日からスタート。初日の午前中は大阪地裁商事部(第4民事部)の部総括判事でいらっしゃる松田亨氏による「近時の取締役責任追及を巡る実務上の留意点」ということで、弁護士会館ホールは超満員の同業者であふれかえっておりました。
さすがに商事部の現役裁判長の講演だけあって、お世辞抜きでおもしろかったです。取締役の債務につき、不完全履行(任務懈怠責任)に関するKg?E?Rという、法曹実務家向けならではのお話も、私自身が普段考えていたとおりのことがほぼ正しいと確信できました。ただ、会社法や金商法には取締役、監査役について「相当な注意」の抗弁が規定されている条文がありますが、こういった規定は立証責任の転換を定めたものであるにもかかわらず、取締役の責任を追及する側にとってどれほどの「有利さ」をもたらすのか、疑問が残りました。
さて、私は「もし質問の時間があるならば、ぜひ松田判事に聞いてみよう」と思ったことがございます。金融・商事判例にて、1369号から本日発売の1371号まで上・中・下で連載されました松本伸也弁護士の「経営判断の司法審査方式に関する一考察−行政裁量の司法審査方式との関連において−」という論文がとても面白く、「そもそも日本の裁判所が採用する経営判断原則は、自然発生的に誕生したものではなく、従来から存在する行政裁量の司法審査の方式を基礎としているのではないか?」といった松本弁護士の検証にとても興味を覚えました。この松本弁護士の見解について、商事部判事としてどのように考えておられるか?といった質問であります。
実は1369号が発売された7月上旬より、私はfacebookで「この論文は必読!」とつぶやいておりました。というのも、私も以前から同様の疑問を抱いていたからであります。この夏期研修で、現役の商事部裁判長の考え方をお聞きできるチャンス到来と思い、質問を楽しみにしておりました。ところが、ビックリ!でございました。
研修の途中で松田判事曰く、
専門領域を越えて、裁判官の判断過程を推論する・・・というスタイルは、まさに実務家による論文の醍醐味であります。私自身は、2004年2月に出版された別冊商事法務219号「条解・会社法の研究9取締役(4)」における江頭先生や稲葉先生らの座談会(取締役の責任追及に関する規定はどのような形が望ましいか)あたりの内容(そもそも政策的なもの)や、損害賠償補てん機能や違法行為抑制機能といった責任追及規定の趣旨は、ガバナンスやソフトロー、監査役の裁判外の請求権行使等によって代替できる可能性がある以上は、経営判断に対して司法は謙抑的であったほうが妥当ではないか、といったことも検討したら面白そう・・・・・とも思っております。
もし裁判官の思考過程において、経営判断原則が行政裁量論に近いものがあるとすれば、今後の裁判例の分析などにも参考にすべき判例が増えるものと思います。森田果教授の論文へのささやかな挑戦、とありますが、ぜひまたこういった論文の発展系の論文が登場することを期待したいと思います。(なお、松田判事の近時の最高裁判決の分析、最近の善管注意義務違反に関する論点等、いくつか興味深いお話がもあり、それに対して私なりの疑問が湧いておりますが、これはまた別の機会に、ということで・・・・・)
さすがに商事部の現役裁判長の講演だけあって、お世辞抜きでおもしろかったです。取締役の債務につき、不完全履行(任務懈怠責任)に関するKg?E?Rという、法曹実務家向けならではのお話も、私自身が普段考えていたとおりのことがほぼ正しいと確信できました。ただ、会社法や金商法には取締役、監査役について「相当な注意」の抗弁が規定されている条文がありますが、こういった規定は立証責任の転換を定めたものであるにもかかわらず、取締役の責任を追及する側にとってどれほどの「有利さ」をもたらすのか、疑問が残りました。
さて、私は「もし質問の時間があるならば、ぜひ松田判事に聞いてみよう」と思ったことがございます。金融・商事判例にて、1369号から本日発売の1371号まで上・中・下で連載されました松本伸也弁護士の「経営判断の司法審査方式に関する一考察−行政裁量の司法審査方式との関連において−」という論文がとても面白く、「そもそも日本の裁判所が採用する経営判断原則は、自然発生的に誕生したものではなく、従来から存在する行政裁量の司法審査の方式を基礎としているのではないか?」といった松本弁護士の検証にとても興味を覚えました。この松本弁護士の見解について、商事部判事としてどのように考えておられるか?といった質問であります。
実は1369号が発売された7月上旬より、私はfacebookで「この論文は必読!」とつぶやいておりました。というのも、私も以前から同様の疑問を抱いていたからであります。この夏期研修で、現役の商事部裁判長の考え方をお聞きできるチャンス到来と思い、質問を楽しみにしておりました。ところが、ビックリ!でございました。
研修の途中で松田判事曰く、
最近とてもおもしろい論稿が出ましたね。金融・商事判例という雑誌があるのですが、その7月1日号で、経営判断の司法審査方式が行政裁量の司法審査に似ている、ということを書かれた方がいらっしゃいます。私の個人的意見ということでお聞きいただきたいのですが、私も行政部にも在籍していたことがありますので、まことに卓見で、なるほど・・・・と関心いたしました。(なお、7月15日号まで読んだ・・・とはおっしゃっておられませんでした)ぜひご興味があればお読みください。ホントは経営判断の司法審査方式として、東京地裁方式や大阪地裁方式まで意識されているのかどうか・・・・という点までお聞きしたかったのでありますが、残念ながら質問時間というものがございませんでしたので、あきらめました(ToT)。ただ講演のなかで、本論文に触れて個人的意見を述べられる、ということはまったく想定しておりませんでしたので、たいへん驚きました。
専門領域を越えて、裁判官の判断過程を推論する・・・というスタイルは、まさに実務家による論文の醍醐味であります。私自身は、2004年2月に出版された別冊商事法務219号「条解・会社法の研究9取締役(4)」における江頭先生や稲葉先生らの座談会(取締役の責任追及に関する規定はどのような形が望ましいか)あたりの内容(そもそも政策的なもの)や、損害賠償補てん機能や違法行為抑制機能といった責任追及規定の趣旨は、ガバナンスやソフトロー、監査役の裁判外の請求権行使等によって代替できる可能性がある以上は、経営判断に対して司法は謙抑的であったほうが妥当ではないか、といったことも検討したら面白そう・・・・・とも思っております。
もし裁判官の思考過程において、経営判断原則が行政裁量論に近いものがあるとすれば、今後の裁判例の分析などにも参考にすべき判例が増えるものと思います。森田果教授の論文へのささやかな挑戦、とありますが、ぜひまたこういった論文の発展系の論文が登場することを期待したいと思います。(なお、松田判事の近時の最高裁判決の分析、最近の善管注意義務違反に関する論点等、いくつか興味深いお話がもあり、それに対して私なりの疑問が湧いておりますが、これはまた別の機会に、ということで・・・・・)



