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ガイアの夜明けに学ぶ、読まれる文章の書き方。(中嶋よしふみ SCOL編集長・FP)

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■専門家は「文章の専門家」ではない。

自分はマネー・ビジネス分野の専門家に編集長として執筆指導をしている。新たに応募してきた人を書き手として参加させるかどうかの判断も行っている。その判断のためにサンプル記事を提出してもらっているが、全く指導を受けていない専門家の文章は10本中9本は1行目からがん保険の説明を始めてしまうような知人のFPと同じ書き方だ。

税理士や社労士、司法書士、FPなど、専門家が書いた文章と聞けば読みやすい文章だと思うかもしれないが実際はその真逆だ。編集者の間では「専門家は文章がヘタ」であることは共通認識に近い。

おそらくプロのライターや文章好きな人にとっては、文頭にフックを入れるなんて常識、初歩の初歩、偉そうに説明するなと思われるかもしれないが、実際にはほとんどの専門家はその「初歩の初歩」が出来ない。

初歩の初歩なら編集者が教えれば良いじゃないかと思う人もいるかもしれないが、素人をイチから鍛えるような余裕は出版社には無い。それならばすでに文章力のあるライターに取材をさせれば良いと編集者は考える。つまり文章を書けない専門家は永遠に執筆の仕事が回ってこない。結果的に執筆の仕事が出来る専門家はごく一部ということになる。

これは商業メディアに限らずブログ等でも同じだ。無料のブログだからと読者は評価を甘くはしない。経済系の分野であれば、東洋経済やプレジデントやダイヤモンド、あるいは日経新聞など、そういった大手メディアの記事と同等以上の水準でなければ誰も読もうとは思わない。

ネット上には個人ブログも経済メディアも平等に存在している。自分は書き手としては素人だから、無料のブログだから、といった言い訳は一切通用しない。結果的に全く反響の無いブログを書かずに何年も放置、という専門家は珍しくない。

■文章がヘタなのに自覚の無い専門家。

だから専門家はダメとか能力が低いと言いたいわけではない。専門家はあくまでその分野の専門家であって、執筆の専門家ではないのだから文章がヘタなことは仕方が無い。しかし、一番の問題は専門家自身がそれを自覚していないことだ。

執筆指導では、出来上がった記事を真っ赤に直してどこがダメなのかを説明をすれば大抵の書き手は納得する。すると「私は文章が得意な方だと思っていた」「それなりに書ける方だと自信を持っていたのにショックだ」と言われることもある。最初は「え“、これで上手いと思ってたの?」と逆にショックを受けていたが、今では定番の流れとなっている。

執筆指導を受けていないということは、どんな文章が読みやすく、どんな文章が読みにくいか知らないのだから、あとは感覚で判断するしか無い。自身の文章力について誤解をしていても仕方が無いということになる。

■専門知識は武器にならない。

専門家が書く文章の特徴にもう一つ、専門知識をそのまま書いてしまうという傾向がある。専門知識を披露する文章、要するに「テキスト」に載っている文章だ。テキストのための文章なら良くても、雑誌や新聞のコラム、あるいはブログでそのような書き方はまず敬遠される。

そして専門知識をそのまま書いているだけではすぐにネタ切れする。自身の頭の中にある専門知識で、なおかつ一般向けの内容となれば極めてネタは限られる。

さらに専門家が決定的に勘違いしていることが「専門知識は武器になる」ということだ。同じ資格を持っている人は何万人もいる。例えば税理士ならば約7.7万人、弁護士が約3.7万人、社労士は約4万人だ。

専門家ならば誰もが持っている知識を披露しても、それはなんら差別化にならない。他の専門家と同じことしか書けないのならすでに知名度も実績も上のアノ人にお願いしよう、となってしまい、新しい書き手が後から割り込むことは不可能だ。専門知識はあくまで「道具」に過ぎず、ネタを専門知識で料理して、食べやすく=読みやすくした上で読者に提供するのが書き手の仕事だ。

そんなことはライターの仕事であって専門家の仕事ではない、というのであればそれは人それぞれのスタンスだが、メディアで名前を出して記事を書くことは専門家として仕事をする上で極めて重要な営業にもなりうる。それを放棄することはこれから業務を拡大したい人にとっては良い選択とは言えないだろう。

専門家は文章がヘタとしつこく馬鹿にしてるように感じたかもしれないが、そうではなく、多くの専門家が文章がヘタということであれば文章力を身につければそれだけ強力な武器になるということだ。専門家にとって専門知識はあって当然、そこにどのような武器を上乗せするか? その一つが文章力だ。

専門家であれば、自身の専門分野について全く知識の無い人がトンチンカンな話をしているのを見たこともあるだろう。これは執筆も同じだ。書き方を全く知らない人が書く文章はトンチンカンで読者に全く伝わらず、せっかくの手間をかけても時間の無駄どころか、マイナスの効果しか産まない。そして下手くそな文章はそれだけで頭が悪く見える。これは知識を売る専門家にとって致命的だ。つまらない文章を書くくらいなら何も書かない方が良い、ということも執筆指導ではしつこく伝えている。

専門家にとって必要なことは専門知識を伝えるための執筆テクニックだ。

■シェアーズカフェ・オンラインの執筆指導について。

文中で「素人をイチから鍛えるような余裕は出版社には無い」と書きましたが、筆者が運営する経済メディア、シェアーズカフェ・オンラインは「専門家だけど書き手としては素人」を採用して執筆指導を提供しています。指導料等も一切取っていません。

現在はヤフー!ニュース、ハフィントンポスト、ブロゴス、gooニュース等の大手メディアに配信もしているため、執筆指導と発表の場をセットで提供しています。指導の結果、大手経済誌、新聞、雑誌、テレビ、ラジオと様々なメディアで活躍している人が多数います。

以下、執筆セミナーと書き手募集の案内です。興味のある専門家は応募して頂ければと思います。

■士業・専門家のための「Webで読まれる文章の書き方と、集客方法」

https://peatix.com/event/395326/view
※入場料500円。士業及び専門家限定。

■書き手として参加しませんか? ~士業・資格保持者・専門家を歓迎します~

http://sharescafe.net/archives/31961592.html

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中嶋よしふみ
大和書房
2016-09-23

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中嶋 よしふみ
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