■税務署が物言いをつけることはない
自己研鑽につなげたり、人脈を広げたりする機会として利用される勉強会や異業種交流会。直接、仕事の取引につながるわけではないことも多いだけに、公私の境目がわかりにくく、その参加費の扱いについて迷うことがあるかもしれない。
画像を見るAFLO=写真
この場合、経理部門が社内で監視機能を果たすような大企業と、オーナーおよび同族の一存で経理処理が左右されかねない中小企業では事情が異なる。
税務署から目をつけられやすいのは、オーナー一族の意思が色濃く反映される中小企業などだ。家族でレストランに行った飲食代を会議費にしたり、家族旅行を研修旅行と称したり。社員でも、業務とかけ離れた使い道は現物給与的なもの(賞与)とされ、本人の所得税算出の際に問題となる場合がある。
一方、極端な話だが、異業種交流会と称しつつ男女の出会いの場を提供する会合に、あるいはキャバクラを会場にした、ビジネスとは無関係の集まりに大企業の社員が参加したとする。
もし経理部門がしっかりしている大企業において、そのような会合に参加した社員の申請を、実態を見抜けず経費として認めたとしても、税務署が物言いをつけることはないだろう。領収書に発行主の名として「○○○異業種交流会」などと記載されていればなおのこと、よほどおかしな場所でない限り問題視されることはない。なぜなら、「会社として認めていい費用なのかどうか」という組織の自浄作用が機能しているはず、という大前提があるからだ。
そもそも、公私の境なく社費を使うのは背任行為だ。たかだか数千円、数万円のことで評価を大幅に下げるなど、大半の社員にとって割に合う話ではない。
■会社がOKを出すなら税務署は不問
また、勉強会や交流会への参加については事前申請が必要で、上司の許可を得てから参加するという形が定石だろう。その判断基準は会社による。販路を広げるため、資金調達をするため、仕入れ先や外注先を探すためなどといった、直接仕事に結びつく成果を期待することもあれば、「さまざまな人に会って見識を広げてこい」というポリシーで人材育成を図るケースもある。
いずれにせよ、利益を目的として活動している企業が、社員のためにわざわざ無駄なお金を出すわけがない。つまり、社員から事前申請があった場合も、何かしらのメリットがなければ承認されないわけだ。
問題は事後申請の場合だ。会議費や接待交際費でも同様だが、たとえ内容的に問題がなくても、上司の心証は悪くなる。とはいえ、ある程度の裁量を与えている社員に対してなら、数千円程度であれば認めやすいかもしれない。だが数万円単位となれば、認めてもらえなくても仕方がない。大切な取引先からの声掛けで、緊急で勉強会や交流会への参加を余儀なくされた場合でも、必ず口頭で上司の承認を得ておくのが賢いやり方だ。
▼「勉強会」と「私的な飲み会」の境目は?(1)領収書の発行主が「~交流会」etcなら、よほどヘンな会場でない限りOK
(2)会社の規模・内規によって異なる
(大規模な会社の場合)
・「部署の誰が認めてくれるか」が問題
・業務とかけ離れていても一概にNOとはいえない
・当人の“説得力”次第。会社OKなら税務署は不問
(オーナー会社など小規模会社の場合)
・業務とかけ離れると、現物給与的なもの(賞与)として扱われ、所得税算出の際に問題となる場合あり
----------
梅田泰宏公認会計士
税理士法人キャッスルロック・パートナーズ代表。著書に『[図解]知らないとヤバい! 領収書・経費精算の話』『これだけは知っておきたい「税金」のしくみとルール』ほか。
----------
(公認会計士 梅田 泰宏 構成=小澤啓司 撮影=初沢亜利 写真=AFLO、時事通信フォト)