記事
  • ヒロ

NOと言えない業務引継ぎ

人気ドラマ、ドクターXで所属医が院長に「御意!(ぎょい)」というシーンが何度となく出てきます。御意とは目上の人を敬ってその考えや意見に賛同する、という意味ですが、語源を辿るとかなり深く、仏教、神道、儒教を融合させた十善戒を大君の「御意」とする、というお誓いの言葉にまでさかのぼれるようです。

日本企業や役所の独特の人事慣習に「定期異動」があります。3-5年で部署替えをするというもので若くしてエリートの場合は「超特急」という1-2年で異動を繰り返すという場合もあります。日本の企業の総合職採用者とキャリア採用の役人はマラソンの一斉スタートと同じで、全員が社長ないし事務次官になれるチャンスがあります。これをマラソンの42キロならぬ社会人人生の約42年前後で走り抜けるわけですが、途中、山や谷、きつい登りに雨や向かい風などを経験させながら「もっともタフで統率力もあり、攻守を使い分け、社をリードする者」をふるいにかけるのであります。

このマラソンは毎年行われますが1番でゴールできてもトップのポジションは一つしかなく、そこは埋まっています。つまり本当の勝者はざっくり4-6年に一度しか出ないわけです。サラリーマンにとってその地位を得ることは誉であります。

さて、問題は社長のポジションはゴールである、という点であります。「大過なく勤めあげる」とよく言いますが、言い換えれば臭いものには蓋をして次の社長にバトンタッチする、ということであります。

この典型的事件が2011年に起きたオリンパス事件であります。同社のトップしか知らない隠れ損失の隠蔽をパンドラの箱にしまい込んでいたのですが、就任した外国人社長が「箱をこじ開け」、事態が発覚したものであります。(実はそれよりずっと前からオリンパスには「糠漬けがある⦅=くさいものがある⦆」という噂はありました。私も知っていたぐらいです。パンドラの箱の密閉は難しいようです。)

浦島太郎の話ではないのですから本来パンドラの箱なるものが存在すること自体がおかしいのですが、どれだけおかしな話でも「御意」に逆らえないという慣習が日本の悪癖でもあるわけです。

神戸製鋼所に今回、東京地検と警察が入ったというのはある意味、衝撃的事件であります。40年以上、改ざんを続けていたことが「ジャパン品質」を否定させたとみたのでしょう。締め上げても怒りが収まらないこの事実はトップが変わるぐらいではうみを出しきれないという姿勢に見えます。(膿だし、まさに今週の流行語です!)時を同じくしてスバル(旧富士重工)でも更なる改ざんが見つかったとして優秀で功績大であった吉永社長が代表権とCEOを返上することになりました。

私はこの問題を引き起こした最大の要因は人事政策とコンプライアンス、そして罰則規定の甘さにあるとみています。往々にして事の発端は「このままでは部や課の業績目標に到達しない、ならば誰か犠牲にならねばならない、よし、俺がその泥をかぶる」とまるで英雄ごとき、悪に手を染める社員がいるものなのです。そしてその英雄気取りの悪役に対して「あいつもやりたくてやったんじゃない。俺たちも同罪だ」とサラリーマンお涙頂戴劇場が居酒屋で繰り広げられ、パンドラの箱は受け継がれていくのであります。

そういうお前はどうだったのだ、と言われるでしょう。ありましたよ、小ぶりなパンドラの箱ぐらい、それも一つではなくいくつか抱えておりました。こういう話はどこかの部署から回ってくるのです。そして「おまえ、これ開けるなよ」と持たされ、一つは私が最後まで持ち運びました。当時、あまりにも悔しいから詳細の流れを書いた手書きのファイルを一つ作って持ち歩いたのですが、会社が倒産しましたし、財務的パンドラですので今は時効でしょう。そういう意味では私もNOを言えない大バカ者でありました。

日本の体質なのだと思います。これを変えるにはそれこそオリンパスではありませんが、外国人が入り込むと日本の常識が通じなくなり、風通しの良い環境になるのかもしれません。私はちなみにカナダにきて悪癖はきれいさっぱりなくなりました。勝負は正攻法、これを学ばせてもらいました。

ありがたや、ありがたや。

では今日はこのぐらいで。

あわせて読みたい

「企業経営」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    橋下氏 任命拒否の教授らに苦言

    橋下徹

  2. 2

    給付金効果はあったが見えぬだけ

    自由人

  3. 3

    官僚へ負担どっち? 野党議員反論

    BLOGOS しらべる部

  4. 4

    すすきの感染 酒飲みにうんざり

    猪野 亨

  5. 5

    岡村結婚の裏に涙のエレベーター

    文春オンライン

  6. 6

    日本における次世代の目玉産業は

    ヒロ

  7. 7

    処理水の安全 漁業側が自信持て

    山崎 毅(食の安全と安心)

  8. 8

    iPhone12かProか...売り場で苦悩

    常見陽平

  9. 9

    大阪の幻想 維新が得する都構想

    猪野 亨

  10. 10

    コロナ巡るデマ報道を医師が指摘

    名月論

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。