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- 2012年01月25日 00:06
皇位継承問題を考える(6.女系天皇反対論者の主張(後半))
さて、前回に引き続き、女系天皇反対論者になりきってその主張を紹介します。
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3.実務的にも女系天皇より旧皇族復帰の方が有利
女系天皇容認派は、旧皇族の復帰についての実務的な問題点を過大評価する一方で、女性皇族の婿取りについての実務的な問題点を過小評価しています。
私は、旧皇族の復帰の方が、女性天皇の婿取りよりも実務的には容易(厳しく見積もっても同等程度)と評価しています。
(1)旧皇族の復帰の問題点は長期的には解消できる
旧皇族の復帰について問題視されているのは、次の2点。
・国民に親しまれておらず国民の理解と支持を得られない
・本人の意思次第で復帰する人としない人に分かれ、皇位継承が安定しない
確かに、大人の旧皇族をすぐ復帰させて天皇にしようとしたら、そういう問題も起こるでしょう。
しかし、いま5歳の悠仁さままで皇位継承は確定しており、仮に旧皇族から天皇が出るとしても、悠仁さまが亡くなられるであろう70年以上あとの話。
皇族復帰を拒否しない方を選んで、徐々に存在感を高めていき、皇位継承権は今後生まれた子供だけに与えるとか、現在の皇族の養子にする形をとるとか、工夫次第で国民の理解と支持を得ることはできるはず。
70年かけて長期的・計画的に取り組めばいいのなら、たいていのことはできます。
(2)後継者不足は顕在化してから対応すれば十分
そういえば、旧皇族を復帰させようが、男系男子継承だと十分な人数の後継者が得られないという問題もありましたね。
問題意識はわかりますが、仮に5人の若い旧皇族が復帰し、悠仁さまと合わせて6人になったとしたら、この懸念が現実化するのはいったい何代、何年後でしょう。
確かに、紀宮さまから愛子さままで9人連続して女の子が生まれたのは不運でしたが、同じことがそう起こるとは思えません。
多少運が悪くても、悠仁さまから3代、100年ぐらいは大丈夫でしょう。
皇位継承は、古来より何度もさまざまな種類の危機に見舞われ、そのたびにその時々の人々の知恵で危機を回避してきました。
どだい、半永久的に修正せず使える皇位継承のルールを、今の人達の浅知恵で決められると考えるのが間違いです。
将来的に問題が生じるリスクが多少あっても、ある程度の期間は問題なく使えるなら、問題の解決は後世の賢人たちの手に委ねればいいのです。
顕在化するかわからないリスクを過大視し、その解決のためと称して本来あるべき姿を崩すのは、1500年以上続く伝統を一時預かる者として傲慢だと思います。
(3)女性皇族の婿取りは、今そこに迫る解決困難な課題
一方で、女性皇族の婿取りはどうでしょう。
こちらは長期計画というわけにはいかず、三笠宮家と高円宮家の女性皇族はさておいても、眞子さま20歳と佳子さま17歳の人生を変えることになります。
結婚したら一般人になると言われて育てられた女の子に、20歳とか17歳になって突然婿取りを強いるのが、果たして現実的なんでしょうか。
また、男性は女性と違い、結婚したら家庭に入り仕事を辞めると考えている人はゼロに近い。仕事が立派なものであればあるほどそうでしょう。
そういう現実がある中で、女性皇族の夫にしても恥ずかしくない、それなりに立派な男性を婿取りすることなどできるでしょうか。
ちなみに、イギリスのエリザベス2世の夫のエジンバラ公フィリップはギリシャの王族出身、デンマークのマルグレーテ2世の夫のヘンリクはフランスの伯爵の子供。
男性王族の妻と違い、女性王族の夫は王族か貴族の出身でないと難しいことを示唆していますが、王族も貴族もいない日本で、いったいどうするつもりなのでしょう。
4.世論調査で女系天皇支持が多いのは、国民的な議論が足りないから
世論調査では、女系天皇への支持が多いようですね。
ここまで説明してきた、伝統を変える理由がない、男系の伝統には実質的な意味がある、実務的にも女系より旧皇族が有利、という3点を詳しく説明すれば、国民の意見は変わると確信しています。
2005年の「皇室典範に関する有識者会議」は、1500年以上の皇室の伝統を尊重することなく、戦後60年の命しかない日本国憲法の男女平等という価値観や近い血族のファミリー的な現在の天皇家の形を絶対視している点に大きな問題があります。
そのような軽薄な議論では、国民に十分な知識を伝えるという「有識者」の役割を果たしたことにはなりません。
皇室の伝統やその土台となる国家観についての深い議論を行い国民に示していく、新たな「有識者」による議論が必要だと思います。
「皇室典範に関する有識者会議」は、そのメンバー構成からして、皇室典範に関する有識者とはとても言えない面々でしたから。
その他の委員は、日本古代史学者はいいとして、社会心理学者(女性学者)、国際政治学者、経済界、西洋古典文学者、政治学者、憲法学者、元官僚。
皇室の伝統をまともに論じられる専門的な知識を持っているとは思えません。
本人達が悪いわけではなく、明らかに人選の問題。骨のあるメンバーを外し、女性・女系天皇ありきで押し切ろうとたくらんだのでしょう。
5.まとめ
いろいろ説明しましたが、まとめてひとことで言えば「女系天皇は、1500年以上の皇室の伝統とその土台となる日本の国家観に合わない」ということに尽きます。
安易に女系天皇を選択して後で後悔することのないよう、長い時間をかけて専門的で深い議論が交わされていくことを期待しています。
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以上、なりきり終了。
できるだけ、意見を決めかねている人が女系天皇反対論を支持したくなるように書いてみたつもりですが、どうでしょう。
私は女系天皇賛成派なので、自分で書いていて山ほどツッコミたくなりましたが。
いずれにせよ、女系天皇の賛成論と反対論は、どっちかが正しくてもう一方が間違いとか、どっちかの支持者が賢くてもう一方がアホというものではありません。
どちらにもそれなりの正当性と論拠があるけど、異なる価値観を土台としているから、結論が違うというだけのことです。
さて、次回以降は中立的な立場で、女性天皇の賛成論と反対論それぞれの強みと弱みを分析していきたいと思います。
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3.実務的にも女系天皇より旧皇族復帰の方が有利
女系天皇容認派は、旧皇族の復帰についての実務的な問題点を過大評価する一方で、女性皇族の婿取りについての実務的な問題点を過小評価しています。
私は、旧皇族の復帰の方が、女性天皇の婿取りよりも実務的には容易(厳しく見積もっても同等程度)と評価しています。
(1)旧皇族の復帰の問題点は長期的には解消できる
旧皇族の復帰について問題視されているのは、次の2点。
・国民に親しまれておらず国民の理解と支持を得られない
・本人の意思次第で復帰する人としない人に分かれ、皇位継承が安定しない
確かに、大人の旧皇族をすぐ復帰させて天皇にしようとしたら、そういう問題も起こるでしょう。
しかし、いま5歳の悠仁さままで皇位継承は確定しており、仮に旧皇族から天皇が出るとしても、悠仁さまが亡くなられるであろう70年以上あとの話。
皇族復帰を拒否しない方を選んで、徐々に存在感を高めていき、皇位継承権は今後生まれた子供だけに与えるとか、現在の皇族の養子にする形をとるとか、工夫次第で国民の理解と支持を得ることはできるはず。
70年かけて長期的・計画的に取り組めばいいのなら、たいていのことはできます。
(2)後継者不足は顕在化してから対応すれば十分
そういえば、旧皇族を復帰させようが、男系男子継承だと十分な人数の後継者が得られないという問題もありましたね。
問題意識はわかりますが、仮に5人の若い旧皇族が復帰し、悠仁さまと合わせて6人になったとしたら、この懸念が現実化するのはいったい何代、何年後でしょう。
確かに、紀宮さまから愛子さままで9人連続して女の子が生まれたのは不運でしたが、同じことがそう起こるとは思えません。
多少運が悪くても、悠仁さまから3代、100年ぐらいは大丈夫でしょう。
皇位継承は、古来より何度もさまざまな種類の危機に見舞われ、そのたびにその時々の人々の知恵で危機を回避してきました。
どだい、半永久的に修正せず使える皇位継承のルールを、今の人達の浅知恵で決められると考えるのが間違いです。
将来的に問題が生じるリスクが多少あっても、ある程度の期間は問題なく使えるなら、問題の解決は後世の賢人たちの手に委ねればいいのです。
顕在化するかわからないリスクを過大視し、その解決のためと称して本来あるべき姿を崩すのは、1500年以上続く伝統を一時預かる者として傲慢だと思います。
(3)女性皇族の婿取りは、今そこに迫る解決困難な課題
一方で、女性皇族の婿取りはどうでしょう。
こちらは長期計画というわけにはいかず、三笠宮家と高円宮家の女性皇族はさておいても、眞子さま20歳と佳子さま17歳の人生を変えることになります。
結婚したら一般人になると言われて育てられた女の子に、20歳とか17歳になって突然婿取りを強いるのが、果たして現実的なんでしょうか。
また、男性は女性と違い、結婚したら家庭に入り仕事を辞めると考えている人はゼロに近い。仕事が立派なものであればあるほどそうでしょう。
そういう現実がある中で、女性皇族の夫にしても恥ずかしくない、それなりに立派な男性を婿取りすることなどできるでしょうか。
ちなみに、イギリスのエリザベス2世の夫のエジンバラ公フィリップはギリシャの王族出身、デンマークのマルグレーテ2世の夫のヘンリクはフランスの伯爵の子供。
男性王族の妻と違い、女性王族の夫は王族か貴族の出身でないと難しいことを示唆していますが、王族も貴族もいない日本で、いったいどうするつもりなのでしょう。
4.世論調査で女系天皇支持が多いのは、国民的な議論が足りないから
世論調査では、女系天皇への支持が多いようですね。
【女系天皇の意味知ってる人は81%が女系天皇に賛成(2009年11月13日NHK)】しかしこれは、国民に皇位継承問題についての知識が足りないだけのこと。
(前略)
女性天皇の子どもが天皇になる「女系天皇」の意味を知っているか尋ねたところ、「よく知っている」「ある程度知っている」があわせて51%、「あまり知らない」「まったく知らない」があわせて45%となり、3年前に比べ「知っている」と答えた人が15ポイント減っています。
そのうえで、女系天皇の意味を知っていると答えた人に、女系天皇を認めることの賛否について尋ねたところ、「賛成」が81%、「反対」が14%となりました。
ここまで説明してきた、伝統を変える理由がない、男系の伝統には実質的な意味がある、実務的にも女系より旧皇族が有利、という3点を詳しく説明すれば、国民の意見は変わると確信しています。
2005年の「皇室典範に関する有識者会議」は、1500年以上の皇室の伝統を尊重することなく、戦後60年の命しかない日本国憲法の男女平等という価値観や近い血族のファミリー的な現在の天皇家の形を絶対視している点に大きな問題があります。
そのような軽薄な議論では、国民に十分な知識を伝えるという「有識者」の役割を果たしたことにはなりません。
皇室の伝統やその土台となる国家観についての深い議論を行い国民に示していく、新たな「有識者」による議論が必要だと思います。
「皇室典範に関する有識者会議」は、そのメンバー構成からして、皇室典範に関する有識者とはとても言えない面々でしたから。
【「皇室典範に関する有識者会議」委員一覧】座長がロボット工学者で、座長代理が裁判官。
◎吉川弘之 元東京大学総長(専門:ロボット工学)
○園部逸夫 元最高裁判所判事
岩男壽美子 慶應義塾大学名誉教授(専門:社会心理学、女性学)
緒方貞子 元国連難民高等弁務官(専門:国際政治学)
奥田碩 日本経済団体連合会会長、トヨタ自動車(株)代表取締役会長
久保正彰 東京大学名誉教授(専門:西洋古典文学(ギリシャ・ローマ))
佐々木毅 前東京大学総長(専門:政治学、西洋政治思想史)
笹山晴生 東京大学名誉教授(専門:日本古代史)
佐藤幸治 京都大学名誉教授(専門:憲法学)
古川貞二郎 前内閣官房副長官、元厚生事務次官
◎は座長、○は座長代理。肩書はいずれも2005年当時。
その他の委員は、日本古代史学者はいいとして、社会心理学者(女性学者)、国際政治学者、経済界、西洋古典文学者、政治学者、憲法学者、元官僚。
皇室の伝統をまともに論じられる専門的な知識を持っているとは思えません。
本人達が悪いわけではなく、明らかに人選の問題。骨のあるメンバーを外し、女性・女系天皇ありきで押し切ろうとたくらんだのでしょう。
5.まとめ
いろいろ説明しましたが、まとめてひとことで言えば「女系天皇は、1500年以上の皇室の伝統とその土台となる日本の国家観に合わない」ということに尽きます。
安易に女系天皇を選択して後で後悔することのないよう、長い時間をかけて専門的で深い議論が交わされていくことを期待しています。
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以上、なりきり終了。
できるだけ、意見を決めかねている人が女系天皇反対論を支持したくなるように書いてみたつもりですが、どうでしょう。
私は女系天皇賛成派なので、自分で書いていて山ほどツッコミたくなりましたが。
いずれにせよ、女系天皇の賛成論と反対論は、どっちかが正しくてもう一方が間違いとか、どっちかの支持者が賢くてもう一方がアホというものではありません。
どちらにもそれなりの正当性と論拠があるけど、異なる価値観を土台としているから、結論が違うというだけのことです。
さて、次回以降は中立的な立場で、女性天皇の賛成論と反対論それぞれの強みと弱みを分析していきたいと思います。