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  • 2012年01月24日 21:59

30代の就労の現実と「夢」

 『毎日新聞』が少し前から、「リアル30’s:働いている」という特集を組んでおり、なかなかおもしろかったので、今日はこれについて少し。


1 30代の状況

 この特集は、平日の夜にポルトガル語を教えることに生き甲斐を覚えている女性や、「面白いこと」を求めて起業した男性、派遣を繰り返し失業中の男性など、就労をメインに据えながら、現在30代を迎えている方々のいろいろな状況を紹介したものです。

 思春期前にバブルが崩壊し、「失われた20年」と呼ばれる不況を経験している彼らの姿を描いております。私の感想としては、これまでの様に会社に勤めて一生を終わる人生で良いのかと考え、会社の歯車になるのとは違う道を選び、その中でいろいろ苦悩したり、努力したりしている人々といった印象が残りました。

 結果として仕事にやりがいを持って正規雇用で頑張っているという人を意図的に抜いてあるので、確かに彼らは30代ですが、当然、30代が全てこういう発想や、紹介されている生活をしているわけでもありません。また、30代以外の人がこうした発想をしていないかというとそんなこともありません。

 あくまで『毎日新聞』の記事はある人に対し取材を行い、その方のことを紹介したものにすぎません。そのため、確かにこういう人がいるかもしれないが、ある意味だからどうなのだといった感が否めない記事となっております。

 そのため、多少の分析めいたものが必要と感じたのか、「識者に聞く」として、社会学者の古市憲寿氏山田昌弘中央大教授等の見解を紹介しております。古市氏は「がんばる」職場も仕組みもないのに、上の世代の者が若者に「がんばれ」というのはおかしいのではないかと主張します。


2 山田昌弘教授の見解

 私がより興味が引かれたのが山田教授の意見です。彼の見解は簡単にまとめると以下のとおりです。

 今の30歳前後が就職活動を始めた2000年代初めは、ベンチャー企業が注目されたり、法科大学院ができたり、カウンセラーやファイナンシャルプランナーなどの専門職志向が強まり、組織に頼らずフリーでもキャリアを積めそうだと思えた。

 
 そのため、「プラスアルファとしてのやりがいを優先したい」という価値観が強く、「自分探し」も流行った。しかし、法科大学院に見られるように、成功した人は一部だけという結果に終わってしまった。

 だいたい30代になると自分の「夢」に見きりをつけ、現実を追いかけるようになるが、バブルの頃までなら、それからでも定職が見つかったのに、今は仕事がないのが現実となっている。

3 学校教育と「夢」

 実に示唆に富んだ見解です。現在でもいろいろな人がよく「夢はあきらめなければかなう」という趣旨の発言をしております。それ自体は悪いことではなく、「夢」をあきらめてしまえばかなわないのも事実です。

 しかし、「夢」を持っている人が全て自分の「夢」をかなえられるかというと、そんなことはなく、かなえられるのは一部の人というのが現実です。これは極めて当たり前の話で、歌手になりたい、漫画家になりたい、プロ野球選手になりたいと思っている者のうち、なれるのはどの位の割合か考えてみればすぐわかる話かと思います。

 こうした「夢」の尊重は学校教育における「個性の尊重」とかなり深い関係にあると考えます。確かに40人程度のクラスであれば、ある特定の分野で一番になることはそんなに難しい話ではなく、1人1人の「個性」や「夢」の尊重も不可能ではありません。

 しかし、社会にでれは競争相手はものすごい数となるわけで、分野によってはそれこそ何万人の中かから成功するのはたった1人といったものもあります。そうした現実を踏まえた上で今の日本の社会制度はどっちつかずのようなところがあると考えます。


4 「夢」と日本の社会制度

 つまり、「夢」を持つことを尊重するのなら、失敗した者にもそれなりに挽回の機会を与えるべきではないでしょうか。そうしたセイフティネットなくして、「頑張れ」と言うのはあまりに無責任ではないかと考えます。

 当然、社会の選択として別の選択肢もあります。つまり、初めから現実を見せ、「夢」を持たせないようにするという選択肢です。その典型的な例が将棋の奨励会で、年齢制限等を設け、ある期間までに一定基準に満たないものは排除するという方法です。

 後者は多少極端な場合も生じるでしょうが、今の日本の社会(教育)制度のように、一方で「夢」を持つことを推奨し、片一方で「夢」を追いかけて失敗したものを嘲笑する(仕事を与えない、一人前胃と見なさない)制度よりは、この方が一貫性があって望ましいのではないかと考えます。

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