記事

ネット業界が左右する?中国の物流市場

中国通な社長のビジネスコラム 第52回 -秋葉良和

 新年好!中国も春節を迎え、華々しい雰囲気となっている中、本年初めてのコラムです。

中国のインターネット利用者最新状況の分析

 中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)が1月16日に2011年度インターネット利用最新状況を発表しました。ざっと内容を見ると、ネットユーザー総数は5億1300万人(昨対比5500万人増)、うちスマートフォンを含む携帯電話を介しての利用者数は総数の69.3%を占めているそうです。PCを立ち上げなくても移動時間などのちょっと空いた時間で気軽に利用できるということもあり、ここ中国でも利用端末が変化してきています。

 また微博をはじめとするミニブログ、SNSの人気は凄まじくその利用割合は49.7%にまで高まっており、その反面一般的なブログやメール、ネット掲示板利用はいずれも大幅に利用頻度が下がっているとのこと。そのような状況下、企業や広告代理店は微博で人気の投稿者(芸能人、一般人)に目を付け、製品の宣伝を口コミで展開してもらう『代言』の需要も急増、中国でも有名になった蒼井そらさんの『代言』料金は1億元(≒12億円、1元12円換算)程度の価値があるなどとも言われています。

 インターネット利用者が増えると、当然オンラインショッピング利用者数も増えます。2011年度のオンラインショッピング利用者は1.87億人。興味深いのは中国人のクーポン好きにぴったりと当てはまったグルーポンなどの共同購入サイト利用者が6,465万人と急増したことにより、昨年対比20.8%増加したこと。またオンラインショッピングの取引額は何と7,735億6000万元(≒9兆2827億円)となり、中国における全小売市場取引額の4.3%を占めるに至りました。そのわずか2年前、2009年度のオンラインショッピングの利用者は約1億人、取引額が2500億元だったことを考えると、この3年の短期間でオンラインショッピング利用者数は倍増、取引額に至っては約3倍になっています。

 余談ですが日本人が誤解しやすいのは、日本と同じようにB to BやB to Cが主要と思いがちなこと。実は個人間オークション等のC to Cが最も多く70%以上を占め、次いでB to C(23.2%)、そしてB to Bの順序。ただし、利用者の総数が多いため、B to Cも23.2%とはいえ、取引額自体は約1790 億元(≒2兆1480億円)にも達します。

注目される物流対応

 オンラインショッピング利用急増により、現在最も注目されているのは物流業界です。日本でもおなじみのEMS、UPS、DHL、fedexなどは1980年代より中国市場に参入、またローカル物流業者数も年々増えています。物流業界が注目されるのは単に利用者数が増えているという理由だけではなく、広い中国において未だ物流網が整っておらず、取扱いや管理もまだまだ雑で改善の余地が多いくある業界だからということもあります。今後サイト事業者が成功するか否かは、いかに物流をコントロールできるかという点に尽きると思います。その中で、ハードとソフトの面、両方に以下のような問題が挙げられます。

ハード面の問題として、◎営業者のナンバープレート地域外の越境は容易には出来ず、全国を簡単に往来できるようなシステムではない点に加え、配送車保有台数も許可制の為、各社提携関係などが複雑に絡み合っていること◎温度帯管理が出来る配送設備が充実していないこと

ソフト面の問題として、◎貨物に取扱い対する意識の違い◎データ管理、棚卸などの管理のずさんさ◎配達員自身の信用問題

 特にソフト面の問題として挙げたデータ管理のずさんさや配達員自身の信用問題は深刻です。データ管理がずさんで翌日配送を約束しながら5日後に届くことは当たり前、また配達員自身が荷物を横領したり、作業が面倒で荷物を廃棄したりする例も(この点は日本でも年賀状の時期にたまに耳にしますが)。そのためローカルの物流企業は配達員を雇用する際に、保証金として3ヶ月分の給与にあたる額を事前に預けることを条件にしている企業さえあります。

 いずれにしてもローカル物流企業のサービス概念が向上するには相当な年数がかかると思われ、そのため大手のサイト事業者は、先に述べた信頼できる国際的なサードパーティー物流企業であるUPSやDHL等に依頼しながら、同時に自社物流の拡充を急いでいます。実際、中国で人気のあるアマゾン、当当網(本、メディアが主流)などは自社物流倉庫やシステム確率のために相当な額を投資しており、また京東(家電等が主流)などはUPSを巧く使い分けたりしています。

 しかしながら最近では、頼みの綱であった外資系物流企業の動きも混沌としてきています。ひとつは市場を牽引してきたDHLが昨年撤退を決めたこと。配送品質では遠く及ばないローカル物流企業であっても、ローカル業者の提示する低価格帯が市場に浸透してしまい、利益を圧迫してきたことが主な原因です。そこに追い打ちをかけるように起きた事件が、中国では話題になっています。UPSで発生した横領問題です。日本ではあまり伝えられていないのでここで内容をご説明します。

 UPSの元現場主任が、現役社員13名、元社員ら4名を仲間に引き込み総勢18名の『犯罪チーム』を組織、運賃をごまかし1年弱で980万元(≒1兆1760億円)を横領したという事件です。昨年末に判決が出て、1年半~9年弱の禁固刑が課せられました。同社では配送の際重量を2回計る方法で、軽い方の重量を適用し、運賃を決めます。社内のシステムを知り尽くしている集団は、集荷センターと配送センターの2カ所で重量をごまかす作業を開始。例えば、実際に顧客より受領した荷物重量は10kgだとすると、顧客からは10kgに基づいた正常料金を取り、2回目に図るときにわざと軽い2kgの貨物を選び同じバーコードコピーを被せながら計量、UPSへの入金は2kgの重量を納める。海外に出荷する際にも他の貨物と一緒に配送するため細かく分からないのでチェックをすり抜けるという流れです。内部告発により調査が開始され、現場に設置したビデオ映像に不振な動きが映っており逮捕に至りましたが、このような手法を巧妙に利用し140トンの貨物を6トン弱にまで減らし、980万元を横領したという訳です。余罪もあると疑われ現在も追加調査されています。

 この件ではサイト事業者には損害は発生せず、UPS側に損失が発生しましたが、サイト事業者の中では、『あのUPSでもこの程度のものか』との雰囲気も広がり、より自社物流に注力する流れに拍車がかかりそうです。

 そこで考えるのは日本物流企業が職員全員をいっそのこと日本人にして対応するという逆転技です。

 現在多数の日系物流会社が中国市場に進出していますが、今ひとつ上手くいっていません。その理由は自社社員教育に時間を要すること、また配送免許の関係上、ローカル他社と提携をして対応しないといけないという状況のため。事業に必要な全ての免許取得は大変かも知れませんが、核となる主要サービス部分を日本人が対応することにより、その確実性が高まっていきます。以前では人件費の問題でローカル職員を雇用するのが当たり前でしたが、現在では中国の都市部において家賃を始めとする物価も日本を越えるエリアもあり、また現地の給与もある一定の条件を満たせば欧米式給与のように高額となり、結果日本人職員の一般平均給与を上回るというような状況も出てきています。

 今すぐには無理でも中国市場の拡大、物価・人件費の高騰を考慮すると、近い将来中国にて日本人自身が対応する日本式サービス業は需要が高まるかも知れませんね。(執筆者:秋葉良和・A-commerce 編集担当:サーチナ・メディア事業部)

トピックス

ランキング

  1. 1

    五輪中止は決定済み? 記事に驚き

    天木直人

  2. 2

    コロナとN国で紅白歌合戦ピンチ

    渡邉裕二

  3. 3

    朝日の言論サイト「論座」で誤報

    やまもといちろう

  4. 4

    PCR至上主義は幻想 韓国で露呈

    中村ゆきつぐ

  5. 5

    長嶋茂雄に激怒 元選手語る事件

    幻冬舎plus

  6. 6

    石破氏 誹謗中傷はTV局にも責任

    石破茂

  7. 7

    首相がアビガン承認を急いだ背景

    川田龍平

  8. 8

    ひろゆき氏がテラハ問題に言及

    ABEMA TIMES

  9. 9

    河井夫妻支えた安倍首相の思惑は

    猪野 亨

  10. 10

    官邸主導で露呈 日本の技術敗戦

    新潮社フォーサイト

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。