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皇位継承問題を考える(5.女系天皇反対論者の主張(前半))

 2か月放置した皇位継承問題の連載ですが、再開します。あと5回ぐらいなので、半月で終わるかな(←無謀な宣言)。
 今回は、女系天皇反対論者の主張を紹介します。

 これまでの連載は、以下をご覧ください。
  皇位継承問題を考える(1.男系断絶後は女系容認。改正はここ数年以内に)
  皇位継承問題を考える(2.男系継承の伝統、継承者不在の危機)
  皇位継承問題を考える(3.2005年の皇室典範に関する有識者会議)
  皇位継承問題を考える(4.番外編 ~女性宮家報道について~)

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 わかりやすくするため、中立的な立場ではなく、私自身が女系天皇反対論者になりきったつもりで、読者の方を説得するような方法で紹介してみます。
 それでは、以下、私は女系天皇反対論者です。

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1.長く続く伝統を変える理由がない
(1)女系より旧皇族を優先するのが伝統に沿う
 皇位は、1回の例外もなく男系で継承されてきました。
 継体天皇、光仁天皇、光格天皇の例でわかるのは、近くの女系子孫に皇位を継承する可能性は考慮せず、当然のように遠縁の男系子孫を選んできたという事実。

 この1500年以上続く伝統を、あえていま変える理由があるのでしょうか
 遠縁の男系子孫がいないのなら仕方ありません。しかし、旧皇族の男系子孫が多くおられます。

 悠仁さまの男系子孫が途絶えたら、眞子さま、佳子さま、愛子さまの子孫ではなく旧皇族の男系子孫が継承するのが、皇室の伝統に沿った自然な姿だと思います。

(2)旧皇族は群を抜いて現在の皇族に近い存在
 旧皇族天皇に反対し女系天皇に賛成する方は、「旧皇族はもはや天皇の男系子孫とは言えない」と考えているのでしょう。
 天皇との共通の祖先は600年以上前だし、皇族を離れて65年経つし、源氏や平氏や熊沢天皇も天皇の男系子孫なわけで、遡りだしたらキリがないじゃないか、と。

 しかし、それは事実認識を間違っています。
 旧皇族は、1947年まで皇族として暮らし皇位継承権を持っていた点で、DNA上だけの男系子孫とは決定的な違いがあり、群を抜いて現在の皇族に近い存在です。

 しかも、皇族を離れた経緯も戦後の混乱期特有のもので、皇室の伝統に沿ったものではありません。
 日本国が窮乏する中で、数多くの皇族を養い続けることを問題視したGHQから命令があり、やむなく従ったものです。

 また、当時は昭和天皇の子供、弟、甥に6人の男性がおり、皇位継承に不安がないと見込んだことも、旧皇族の離脱の理由になっていました。
【1947年10月13日の皇室会議での片山哲首相の発言】
 皇位継承の御資格者としましては、現在、今上陛下に2親王、皇弟として3親王、皇甥として1親王がおわしますので、皇位継承の点で不安が存しないと信ずる次第であります。
 いま皇位継承に不安があるというなら、その原因は、65年前の「皇室の伝統に沿わない」「皇位継承に不安がないという見込み違い」という二重の過ちでなされた旧皇族の離脱。
 率直に当時の過ちを認め、旧皇族を復帰させればいいだけのことです。

2.男系の伝統を守る実質的な意味もある
 以上のように、旧皇族を優先すべき理由は「伝統だから」で十分だと思いますが、「今でもその伝統を守る意味があるのか」と問う人がいるかもしれませんね。
 そこで、百歩譲って1つの例外もない男系の伝統を忘れて、現代の目で男系継承と女系継承のどちらが優れているのかを白紙から考えてみましょう。

 「優れている」ことの判断基準として最も重要なのは、どちらの方が「日本国の象徴」として国民の尊敬を集め続けることができるか
 私は、以下の3つの点で、男系継承の方が国民の尊敬を集め続けられる可能性が高いと思っています。

(1)「女性が男性に嫁ぐ」という社会の風習に合致する
 日本国憲法では「男女平等」と定められています。それは認めます。
 しかし、こと結婚とか相続になればどうでしょう。今なお、女性が男性に嫁いで苗字が変わり、姉がいても弟が家を継ぐという形が一般的です。

 そういう社会一般の風習を軽視すべきではありません。
 女性皇族と一般男性が結婚した場合、たとえ婿入りの形式を整えても、女性皇族の「天皇家の娘」としての権威が失われるのは避けられないと思います。

 特に、夫の父が政治家など有力者であった場合、夫が天皇家を乗っ取ったように見えるのではないでしょうか。
 男性皇族と有力者の娘の結婚と、女性皇族と有力者の息子の結婚。男女を入れ替えただけですが、後者は皇族が配偶者の影に隠れて権威が失われ、国民の尊敬が集められなくなるおそれがあると思います。

 女系継承の場合、女王の夫の権威に一歩譲るのは、ヨーロッパでも同じです。
 ヨーロッパの王家には「○○朝」という名前がついていますが、これは男系直系継承では変更されず、女系継承では直系でも変更され、王朝交代とみなされます。

 例えば、19世紀のイギリス女王ヴィクトリアは「ハノーヴァー朝」の女王ですが、その長男エドワード7世は「サクス=コバーグ=ゴータ朝」の王です。
 「サクス=コバーグ=ゴータ」とは、ヴィクトリアの夫でエドワード7世の父、アルバートの苗字です。アルバートはドイツ人で、「サクス」はザクセンの英語読みです。

 つまり、歴史に残る大女王のヴィクトリアでさえ、息子の苗字については夫に譲っているわけです。

 今のイギリス女王エリザベス2世は「ウィンザー朝」ですが、その息子チャールズ皇太子が即位すれば、「マウントバッテン=ウィンザー朝」に代わることになります。
 「マウントバッテン」とは、エリザベス2世の夫でチャールズの父、エディンバラ公フィリップ・マウントバッテンの苗字ですね。

 女王の息子は、父の苗字と母の王位を受け継ぐという考え方のようです。
 女系継承(=王朝交代)の例が昔から数多いヨーロッパでは、それでもいいのでしょうけどねぇ。

(2)男系でのみ受け継がれる遺伝子(Y染色体)がある
 人間の遺伝子は46本の染色体でなりたっており、そのうち2本が性染色体です。
 性染色体は、男性はXY、女性はXXの形をしており、子供は両親から1つずつを受け継ぎ、XとYを受け継げば男の子に、XとXを受け継げば女の子になります。

 これが何を意味するかというと、子供が男か女かは、母親とは関係なく、父親からXとYのどちらを受け継いだかのみによって決まるということです。

 父から息子にY染色体が受け継がれ、同じY染色体がその息子に……というように、男系継承が続く限り、永久にまったく同一のY染色体が受け継がれていきます。

 概念上、神武天皇から今上天皇に至るまで、男性天皇のY染色体はすべて同一のものということになります。
 女系天皇を認めると、ずっと天皇家に残り続ける遺伝子はなくなり、代を重ねるたびに遺伝子は1/2の確率で気まぐれに受け継がれ、最終的には祖先と同じ遺伝子をまったく持たない天皇となってしまいます。

 性染色体がすべてを決めるわけではありませんが、神武天皇(現実的なところでは継体天皇)からずっと同じY染色体が受け継がれているというのは、天皇の権威を裏付ける根拠の1つとなり得ます。

 現代は何事にも科学的な根拠が求められる時代。男系継承には女系継承にはない一定の科学的な根拠があるというのは、男系側の大きなアドバンテージです。

(3)男性皇族はスキャンダルの可能性が低い
 これは生々しい話になるので言いたくないのですが、現実には影響が大きい話。
 男性皇族と女性皇族では、男女関係に由来するスキャンダルが発生する可能性が違うと思います。女性皇族の方が可能性が高い。

 あまり具体的には書きませんが、加護亜依型、酒井法子型、夏目三久型など、恋人や夫に由来するスキャンダルの形はいろいろありそうです。
 この3つのパターン、男女を入れ替えて想像してみてください。同じことが起こると思いますか?

 世の中、とかく女性のスキャンダル(特に性的な)には厳しい。

 良し悪しはともかく現にそうなっているのですから、女性皇族がスキャンダルに巻き込まれて国民の尊敬を一気に失うリスクは、無視することはできません

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 長くなってきたので、ここで1回切ります。

 私自身の意見は旧皇族より女系優先。自分と違う立場になりきって書くのはなかなか難しいですね。
 しかし、価値観の異なる両側の意見ともかっこよく説明できてはじめて、官僚としては一人前。そのトレーニングと思ってがんばります。

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