- 2018年06月01日 09:14
<サンデー・モーニングと関口宏>流行に背を向けたキャスターはこうしてできあがった
1/2高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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筆者は、関口宏に、面と向かってつぎのような失言を発してしまったことがある。
「関口さんみたいに、ちゃんと大学出てて、といってもG−MARCH程度でいいんですが、俳優で、昔は売れてて、今は俳優で行くのも将来はあまり明るくないなあ・・・と思っている芸能人はいませんかねえ」
あきらかに失礼な発言である。関口は「おれは役者で売れなくなったわけじゃないよ」と冗談めかした怒り顔で答えた。「そうですよね」筆者も慌てて言葉を継いで誤魔化した。当時の関口宏と言えば『クイズ 100人に聞きました』(TBS)や、『知ってるつもり?!』(日本テレビ)『サンデーモーニング』(TBS)といった人気番組で、司会を務める押しも押されもせぬ大物である。
その大物司会者誕生の端緒となったのが『クイズ 100人に聞きました』。当時、フジテレビ系列で放送されていた芸能人トーク番組『スター千一夜』では、田宮二郎、高島忠夫、石坂浩二、関口宏、吉永小百合、山口崇と言った俳優陣が、司会を務めていたが、その中で『クイズ 100人』のプロデューサーが目を付けたのが、ちゃんと大学を出ていて育ちも良い関口宏である(関口は往年の大二枚目・佐野周二の息子)。筆者なら、ほかでは石坂浩二も、候補に挙げるだろうがこの人は頭が良すぎるのが難点だ。
【参考】NHK「ノーナレ」が証明するテレビのナレーション過剰
本人の努力も、その3倍はするスタッフの努力もあって『クイズ 100人』の関口宏は司会者として、めきめきと力を付けていくが、ディレクター、プロデューサー、放送作家達は、「関口の司会がもう少し上手ければ番組の魅力もアップするのになあ」と、ぜいたくな悩みを言っていたものである。
関口に司会をしてもらうに当たって『クイズ 100人』のスタッフが、留意したのは関口が徹底してフリーなトークをする部分をなくすことである。
*オープニングジョーク
*解答者のプロフィール紹介で何を話すか
*解答のフォローの少数意見として何を発表するか。
スタッフは、それらすべてを用意した。用意した上で、長い時間を掛けて関口と討論した。当然、関口から拒否されるスタッフ側の案もあり、そんな時はスタッフは大慌てとなった。納得すれば関口は予定通りの司会をする。スタッフはそれを見て安心したが、一方で「破綻のない司会は物足りないなあ」とも思っていた。それらが関口の司会の原型をつくっていったわけだ。
突然だが「あたりまえ」のことを書く。
「企画がだめなテレビ番組はすべてつまらない」
この命題は真か? 実は「真」ではない。
「企画がだめでもおもしろくなるテレビ番組はある」
これが「真」である。
芸人系の演者の場合は特にそうだが、明石家さんまやビートたけしは、おもしろくないまま舞台を去るのは自分の名折れだと思っている。だから、おもしろくない企画の司会者になってしまった時も自分で何とかおもしろくしてしまって、はちゃめちゃな、当初は考えもしなかったおもしろい物が出来あがることがあるのだ。