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米朝首脳、妥協の可能性は低い

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トップ画像/会談する文在寅大統領とトランプ大統領(2018年5月23日)出典:The White House

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

2018年5月28日-6月3日

【まとめ】

・米朝首脳会談の日程が二転三転している。

現時点で612日に米朝首脳会談が開かれる可能性が再浮上。

米朝間の妥協や相互理解の可能性は容易ではない。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=40251でお読み下さい。】

たった一週間でこれほど首脳会談の日程が二転三転した例は記憶にない。北朝鮮が「首脳会談を受け入れるべきか再考せざるを得なくなる」と述べたのは5月16日。22日には米韓首脳会談冒頭取材でトランプ氏が「米朝首脳会談が実現しなくても構わない」とまで文大統領の目前で言い切った。これで文氏の面子は丸潰れだろう。

2日後の24日、トランプ氏は首脳会談中止を通告しつつも会談開催の可能性も排除しないという実に奇妙な書簡に署名した。金正恩氏は26日に南北首脳会談開催を求め、南北首脳が再び板門店で会談した。トランプ氏の発言も再び前向きとなり、現時点では612日に米朝首脳会談が開かれる可能性が再び浮上している。

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▲写真 南北首脳会談(2018年5月26日午後)出典:韓国大統領府

それにしても、トランプ政権の意思決定過程は一体どうなっているのだろう。同政権の外交安保チームは本当に機能しているのだろうか。ポンペイオ国務長官、ボルトン安保担当補佐官、マティス国防長官の間で温度差があり、現時点ではホワイトハウスにいるボルトンが主導権を握っていると報じられるが、果たして本当にそうなのか。

朝鮮半島の専門家は内心当惑していることだろう。一体何が起きているかについては、トランプ政権の高官ですら100%フォローできていないのだから。それでも、限られた情報の中でコメントしなければならない。こういう時は、誰が読み誤った、いや誰が反撃したなどという奇を衒ったトンデモ分析が乱れ飛ぶことも少なくない。

まずはトランプ外交の評価から。24日の会談中止を伝えるトランプ書簡の英語は「小学生レベル」だと筆者の帰国中の娘婿が嘆いていた。同感だが、文書にするだけまだ良い。内容は現在のトランプ政権外交安保チームの最大公約数なのか。首脳会談に最も前向きなのは、実はトランプ氏自身であることも忘れてはならない。


▲会談中止を伝えるトランプ書簡 出典:ドナルドトランプ大統領Twitter

金正恩は外交上手という分析があるが、果たしてそうか?朝鮮半島の外交は伝統的に「全方位外交」という名の「冊封・朝貢外交」だった期間が長い。考えてみれば、現在の北朝鮮外交も様々な勢力の間で巧みにバランスを取っている。外交巧者というよりは、外交的失敗を犯さないよう必死に立ち回っているように見えるのだが。

続いて中国だが、22日の米韓首脳会談冒頭でトランプ氏は「(5月8日の)第二回中朝首脳会談の後、金正恩の態度は微妙に変わった」「中国については気に入らない」などと述べている。これってまさか諜報機関からのブリーフィング内容ではないだろうな。それを喋るとすれば、とんでもない大統領だ。そうでないことを祈るしかない。

そもそもメディア上の通説は、北朝鮮が「中国の後ろ盾を得てより大胆」になったことで米朝首脳会談開催が危うくなったというものだが、これも本当にそうなのか。金正恩の基本的政策は当初柔軟だったが、中国と話しただけで「態度が変わった」とでも言うのか。根拠は何だろう。金正恩とその知恵袋を過小評価するのは危険だ。

過去数週間の間に、米朝首脳会談を題材とした政策シミュレーションを何度か実施してきたが、そこから推測できることは、米朝間の妥協や相互理解の可能性など決して容易でないということ。ボクシングに例えれば、今は第三ラウンドだが、このところ試合の展開が極めて速く、ラウンドの長さも増々短くなっている印象がある。

しかも、独裁的な指導者が事実上の担当官となって外交を動かしている点では米朝とも似たり寄ったり。どうやらこの試合、最終の十ラウンドまでドタバタが続くのではなかろうか。そうした懸念は日本だけでなく、韓国や中国も同様に感じているはずだ。恐ろしい程の予測不能性の中で行われる多国間外交は実に久し振りではないか。

〇 中東・アフリカ

イランはEUに対し、いわゆるイラン核合意(JCPOAの将来に関する新たな計画を5月末までに提示するよう求めているそうだ。しかし、コンセンサスがないと動けないEUがそんなに早く結論を出せるとは到底思えない。やはり、JCPOAは風前の灯なのだろうか。

〇 欧州・ロシア

ようやくイタリアで新政府が決まったかと思ったら、やれ空中分解だ、年内に新たな選挙実施だなどと言っている。ローマは相変わらずだ。フランスでは鉄道改革問題でまた抗議運動が燃え盛っている。5月30日、ギリシャでは相変わらず緊縮財政問題でストライキがある。米国の鉄鋼アルミ関税のEUに対する免除は6月1日に失効する。

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▲写真 首相に指名されたカルロ・コッタレリ元国際通貨基金(IMF)財政局長(右)と、セルジョ・マッタレッラ大統領(左) 出典:イタリア大統領府

〇 東アジア・大洋州

5月31日にロシア外相が訪朝するという。ついにロシアも動き始めたか。29日からインド首相がインドネシアとシンガポールを、ベトナム国家主席が訪日を、それぞれ予定している。6月1日から恒例のシャングリラ国際安保会議がシンガポールで開かれ、2日からは米商務長官が訪中する。

〇 南北アメリカ

今週一週間はブラジルでトラック運転手がストライキを予定している。61日には米国が正式に鉄鋼アルミに対する追加関税を発動する。更に、トランプ政権は自動車に対しても安全保障上の理由で新たな関税を考えているらしい。これで米国の国内産業が強くなることはないのに。トランプ氏の政策は増々悪循環に陥り始めたようだ。

〇 インド亜大陸

パキスタンで7月の総選挙に向けた準備が始まった以外に特記事項なし。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

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