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テレビはもはや"ネット文化の一部"である

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コンテンツ制作集団への脱皮が生き残りへの道

ただし、コンテンツを作り、それを商品として売るというビジネスは必ず残ります。テレビ局が今も行っているコンテンツ作りという仕事はなくならないのです。これから先、テレビ局に求められるのは、「テレビ局」という名称を捨て、エンターテインメント制作集団、もしくはコンテンツ制作集団への脱皮を視野に入れることでしょう。自らが制作したものを発表する場は、地上波だけに限定するのではなく、ネット、映画など、幅広い範囲に設定すべきです。そういう形にしないと「コンテンツ制作者」としての未来も完全に失ってしまうかもしれません。

現在のテレビ局がなくなる運命にあっても、放送波としての地上波は残ります。ニュースやオリンピックなどの人気コンテンツは、地上波で流しても常に需要はあります。ただし、それらのコンテンツを流すだけで、採算を合わせることができるかどうかはわかりません。

やはり、発表する場や制作手段を問わずにコンテンツを作り、それをいろいろな形にリフォーマットして提供していく制作集団になるしか生き残る道はないのです。残念ながら、現状を見る限り、そうした動きは本格的にはまだ出てきていません。

発表する場や制作手段にこだわらないという点では、KADOKAWAは一つの見本と言っていいでしょう。元々は書籍だけを出版していましたが、そのうちに映画制作から始まって、ライトノベル、コミックなども出し、アウトプットのパターンをどんどん増やしてきました。さらにはネット上で電子ブックも配信しています。

その結果、出版だけにこだわらなかったKADOKAWAだけは、出版不況と言われる中、縮小傾向にある小学館や集英社、講談社を押しのけて、売上高で横ばい状態を維持できています。自分たちの価値は、紙の本を出版するという手段にあるのではなく、コンテンツ制作にあるということに1日でも早く気付き、それだけでなく実際に変化を遂げていく必要があるのです。

番組フォーマットの流用で見える危機意識の欠如

いち早く変化を遂げなくてはいけないのは、すでに触れたようにテレビ局にも言えることです。さまざまなコンテンツをテレビという機械でリアルタイムで見ることに、もはや価値はありません。重要なのは、そのコンテンツが面白いかどうかだけなのです。タブレットで見るのか、パソコンの画面で見るのかは、視聴者が勝手に選んでくれます。

ところが、テレビ局側の姿勢はなかなか変わっていきません。例えば、先日日本のテレビ局が制作したドラマをネットサービスで見始めたのですが、とにかく見ていてストレスがたまってきます。

最初にイライラするのは、毎回、話の冒頭で前回の振り返りを数分間見せられることです。オンデマンドで公開する際には、あれを編集でカットすべきでしょう。地上波で1週間に1話ずつ見ている場合は前週までのストーリーサマリーはいいかもしれません。しかし、オンデマンドで見るときは連続して視聴する場合が多く、そうすると「さっきこのシーン見たばかりだよ」と文句を言いたくなるのです。また、オンデマンドではCMがカットされているのですが、CMを挟んだ直後の場面では、話をつなげるためにCM前の映像を10秒ほど見せられます。これにもイライラさせられるのです。

この状況を見てもわかるように、どのコンテンツも地上波専用に作ったという意識を丸出しにしています。有料サービスにもかかわらず、細かいところに気を配っていないのです。アメリカも昔はそうでした。ところが今では、ネットで流す場合はしっかりとリフォーマットしてコンテンツを流しています。簡単な編集作業を行うことでこうした点は改善されるのに、日本ではそれを怠っているのです。こうした点に触れるにつけ、危機意識のなさが垣間見えてきます。

「お茶の間でテレビ」はもうなくなる

今やどのテレビ局もネット上でオンデマンドの有料サービスを提供するようになりました。ラインナップを見ると、自局で制作したドラマやバラエティを配信すると同時に、それ以外のコンテンツも数多く配信しています。最終的にはその方向に進まないと生き残れないのですから、そちらにいち早く力を注ぎ、コンテンツ制作集団への変貌を図るべきです。

2050年までには、テレビ受像機でコンテンツを見る人がいなくなると私は考えています。4Kや8Kの時代が来ると言われていますが、家庭用のテレビではその効果を実感することはできません。自宅のお茶の間にテレビが置かれ、放送時間になったら家族みんなで同じ番組を見るという光景は将来的には失われていくでしょう。

こうした時代の変化に対応し、番組の作り方、編集の仕方を今から改めていかないと、この先絶対に生き残ることはできないと思うのです。

夏野 剛(なつの・たけし)
慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授
1965年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京ガス入社。95年ペンシルベニア大学経営大学院卒業。97年NTTドコモ入社。iモードの立ち上げに関わる。現在はドワンゴなど複数の取締役を兼任。『自分イノベーション』(総合法令出版)『「当たり前」の戦略思考』(扶桑社)など著書多数。

(写真=iStock.com)

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