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台湾の総統選に参加して、日本のネット選挙と直接選挙を考える

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10万人が集まる選挙

台湾の総統選から1週間が経ちました。総統選の日にあわせ、僕の嫁が台湾人ということもあって帰省することになり、政治への参加意識の高い台湾の選挙を見てみたい、と現職国民党の馬英九氏と、初の女性総統が実現するかという民進党の蔡英文氏の最終演説が行われる場にそれぞれ行ってきました。

まず、この動画を1−2分でもご覧下さい。

これは、民進党の蔡氏の最終演説の応援に駆けつけた、元総統の李登輝氏の応援演説の動画です。演説内容は分からなくても、場の雰囲気は少しでも伝わるでしょうか?まさにあの瞬間あの場に僕もいたのですが、スタジアムに10万人ほどの人が集まっていました。2階席も満席です。人口2300万人ほどの国で、1候補者の応援に10万人が集まるのです。馬氏の方はもっと集まっていたそうです。あちらは、若者層を意識してか、Facebookのいいね!のマークをもじったマークや、歌手によるライブなど、盛り上がりはまた違っていましたが、歩くのさえ大変なくらい集まっていました。


国の代表を直接選ぶということ、選ばれるということ

一国の代表を国民が直接選ぶ。そして候補者の演説には、10万人が集まる。選ぶ側も真剣だし、選ばれる側もあれだけの人が直接自分のために熱狂的に応援してくれている声を、姿を見れば、この人たちのために私は頑張る!という責任感と、期待を受けていることは身にしみて感じていると思います。簡単には辞められないし、気軽に立候補できるようなものでもない。音楽ライブのコンサートのような盛り上がりです。歌手がライブが好きだと、元気をもらうとよく言いますが、まさにライブ会場で、ファンとしてだけではなく、リーダーとして未来を託している姿と、実感している姿がそこにはありました。

台湾が直接選挙で総統を選ぶようになったのは、1996年からです。それまでは、国民大会で総統が決められており、第1回総統選(1948年)〜第5回(1972年)までは連続して蒋介石氏が、第6回(1978年)〜第7回(1984年)までが蒋介石の息子の蒋経国氏が総統に選ばれてます。1988年に蒋経国氏が死去したため副総統の李登輝が代行し、第8回(1990年)の国民大会では、そのまま李登輝氏が総統に選ばれました。

その李登輝氏が総統時代に台湾の民主化を進め、初めて憲法改正を行って1996年に直接選挙による総統選が実現し、初代直接選挙による台湾総統となったのです。その際、「1期4年・連続2期」の制限も付け、独裁政権の発生を防止する規定も定められています。また国会議員も、1948年の中国大陸から国民党の議員が李登輝総統時代の1991年の総辞職まで改選されておらず、「万年議員」と呼ばれるほど実態のない議員が大半を占めていました。そして1992年に全面改選が行われて万年議員がいなくなり、国民が直接選挙で全ての議員を選べるようになっています。その後も国会議員の数は225名まで増えてものの、2008年の馬総統時代に議員の権限強化と増え過ぎた議員数を削減するために113名と半減されています。(詳細はwikipediaの中華民国立法院を参照)

もう1本動画をご覧下さい。こちらも選挙に敗れた蔡氏の直後の演説です。

これは生放送の映像ですが、何本かyoutubeに上がっており、60万回ほど再生されていました。カメラは若者の涙をよく映してますが、実際には年配者の方が多いものの、若い人の姿も多く見られましたし、支援者は本気で涙を流しています。以下簡単な抜粋ですが、実際素晴らしいスピーチだったそうです。


「みなさん悲しくて泣きたい気持ちがいっばいだと思います。思い切って泣いてください。四年前に私達も沢山挫折がありましたが、諦めず頑張ってきました。台湾人は挫折に強い、諦めずに頑張ってきました。これからもそうしなきゃ。今回の選挙で、私達は大企業に頼らない、貯金箱募金を作りました。これからも頼りません。台湾はこれからも戦いの声が必要なので、皆様の声が極めて大切です。国民党もおめでとうございます。国民の声を聞いて、いい国を作っていくことを期待しています。」


一番悔しくて悲しいのは蔡氏自身だったと思いますが、勝った馬氏に批判ではなく、おめでとうと言える人間性、民進党からの、そして初の女性総裁の姿を見てみたかったと率直に思いました。国民党の支援には中国に進出する大企業が付いています。彼らには中国から圧力もかかります。日本のように大企業や組織票が力を持つようなことにならないよう、貯金箱募金の大切さ、地方を含めた弱い立場にある国民が諦めずに、力を合わせてまた頑張ろうと言いたかったのでしょうね。国民党にもそんな声を聞いて欲しいと最後の願いを込めて、約10分間の党首としても最後のスピーチを終えられました.


日本のリーダーを直接選挙で選ぶことを考える

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(c) GOETHE画像素材 PIXTA

日本では直接首相を選べないどころか、議員数の削減すらまともに実行できていません。その上、なぜこれほど頻繁に総理大臣が代わるのでしょうか?2005年の小泉総理から毎年代わっているのですよ。毎年。自分の会社の社長が毎年代わるなんてことはないですが、この7年間で誰も2年も続いていない。なぜ、直接僕らは総理大臣を選べないのか?なぜ、こうも簡単に立候補して、国民の期待も感じないまま首相に選ばれて、すぐに無責任に辞めてしまうのか。台湾の総統選を見て、強く思いました。アメリカの大統領選も事実上直接選挙と代わらないし、李登輝氏がこだわったのはフランスの大統領選のような直接選挙。日本はドイツを参考にしているかもしれないけれど、ドイツのように機能していない。日本の政治はここから変えるべきなんじゃなかろうか?

そう思って調べてみると、直接選挙による大統領制を導入すると日本の天皇制との関係が複雑になり現実的ではないようでしたが、中曽根元総理が、「首相公選制」という直接選挙によって首相を選ぶということを提唱されていた。さらに、2001年に小泉元総理が、「首相公選制を考える懇談会」という会を12回にわたって検討していたそうです。2001〜2002年というと僕もすでに社会人で投票権もありましたが、恥ずかしながら知りませんでした。これからの日本の社会を考えるにあたり、もっと政治に対する意識を高めないといけないと改めて思いました。

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