記事

ディズニーを歩くだけでも楽しい人は一流

1/2

みなさんはディズニーランドのようなテーマパークを、どのように楽しんでいるだろうか。編集者として『宇宙兄弟』など数々のヒット作を担当した佐渡島庸平さんは「ディズニーランドは巧みに設計されていて、誰でも楽しめる。一方でクリエイティビティの高い人は感じることもあるはずだ」という。これに対しバンダイで「∞プチプチ」などのヒット商品をつくった高橋晋平さんは「おもちゃの作り方も同じ。適正な『余白の量』は時代によって変わる」という。企画の達人同士の対談をお届けしよう――。(第3回、全3回)

■ニンテンドーラボの「余白」の残し方

【高橋】4月20日、「ニンテンドースイッチ」をバイクや釣りざお、ピアノなどに変身させる段ボール製のキット「ニンテンドーラボ」が発売されました。任天堂のアイデアの豊かさには本当に驚きました。加速度センサーなどが内蔵されたコントローラーを、段ボールのパーツと組み合わせるだけで、遊び方がぐんと広がる。そこで遊び方の「余白」を残す、というのがすごいな、と。

【佐渡島】「余白」ですか?

【高橋】用意されたパーツだけでも楽しめますが、仕組みは段ボールですから、いくらでも自作することができるんです。新しい遊び方をみつけて、SNSで発信する人がたくさん出てくるはずです。この「余白」の作り方がうまい。カードゲームで言えば、全部真っ白なカードを渡されて遊べ、と言われても誰も遊べませんから。

【佐渡島】インスタグラムもそうじゃないですか。インスタがはやった理由は、写真の「よしあし」に対する余白がすごく大きかったからですよ。キレイな写真を褒めるだけでなく、写り込んでしまったものを見つける楽しさもある。フェイスブックよりも、余白の設計に遊びがありますよね。

■新しいじゃんけん「グーチョキパーダラピン」

【高橋】5月5日に「グーチョキパーダラピン」という新しいカードゲームを発売しました。5種類の手で戦う新しいジャンケンです。グーチョキパーの3種類に、グーチョキパー全部に勝つ「ピン」と、全部に負けるがピンには勝つ「ダラ」の2種類の手を増やしています。このときも遊び方の「余白」を残すことを心がけました。

ジャンケンに2種類の手を増やしただけなのですが、その結果、ほかにもいろいろなルールを増やすことができるんです。こう考えたのも、「ニンテンドーラボ」のように、最近のヒット商品はうまく余白を残していることが多いからです。

【佐渡島】僕は「余白の量を読む」のが、まさに「時代を読む」ということかなと思っています。テーマ自体が普遍的でも、「余白の量」は時代によって変わるんですよ。人々の文化度が上がると、その文化の中にいる人たち全体のクリエイティビティが上がるので。

【高橋】どういうことですか?

■料理はコースからアラカルトに進化した

【佐渡島】いい例は料理です。日本にもともとあったのは和食ですよね。そこにあるときイタリアンやフレンチが入ってきた。でも当時の日本人はイタリアンやフレンチの楽しみ方を知らない。だから、最初はコース料理を食べるんです。どんな料理があるのかもわからないので、外からきたものそのまま楽しむしかなかった。

でも、何度か食べると、「パスタがある」「ワインと一緒に楽しむ」といったことがわかってくる。日本人のクリエイティビティが上がるわけです。そうなると今度はアラカルトで食べる人が増えてくる。好きな料理を自分で組み立てられるようになったからです。すると街には、アラカルトを出すビストロみたいな店が増えてくる。つまり余白の量が増えたんです。

【高橋】おもしろい!

【佐渡島】『美味しんぼ』の初期には、おいしいイタリアンレストランの見分け方として「アルデンテでパスタを出す」というエピソードが出てきます。当時はアルデンテ(歯ごたえが残るゆで上がり)でパスタを出す店がなかったんですね。ほとんどの人は芯までゆでたナポリタンしか食べたことがなかった時代ですから。

【高橋】今は家庭のパスタだって、アルデンテで出てきますよね。

【佐渡島】自宅でイタリアンやフレンチを作る人も多いはずです。日本におけるイタリアンやフレンチの食文化は、余白が一切なかったコース料理の時代から、ホームパーティーができるまでに進化したわけです。

■ディズニーやイケアは考えなくても楽しく過ごせる

【高橋】料理以外にもたくさん例がありそうですね。

【佐渡島】誤解を恐れずに言うなら、「週末にディズニーランドに行く」というのは、クリエイティビティの高い楽しみ方だとは思えないんです。

【高橋】わかる気がします。

【佐渡島】ディズニーランドは楽しみ方を巧みに設計しています。コース料理と同じで余白がないんです。みんなと同じ順番をたどることになる家具店の「IKEA(イケア)」もそうですね。

【高橋】確かに余白がない。

【佐渡島】つまりディズニーランドやイケアは、あまり考えなくても楽しく過ごせる場所なんです。もちろん「コース料理」ではなく「アラカルト」で楽しんでいる人たちもいます。たとえば「ディズニーランドで一切アトラクションに乗らない」という過ごし方です。僕はそれこそがクリエイティビティだと思うんですよ。

■ギフト需要は「これ、一体なんだよ」で売れる

【高橋】本はどうなんですか?

【佐渡島】本というメディアの問題は余白が少ないことなんですよ。例外はあります。ユニクロの柳井正さんの『経営者になるためのノート』は、余白が広く取ってあって、ノートのように書き込める。自分が書き込むことで、はじめて完成する本なんです。

本に限らず、今までのコンテンツは完成品としての精度が重要でした。しかしインターネットが普及して以降、完成品の精度はほとんど意味を失いました。もう少し時間がたてば、精度の高い完成品なんて、スキャンして3Dプリンタから出力してしまえばすぐ手に入ってしまう。そうなると、本にせよ玩具にせよ、コンテンツそのものより、それに対して自分はどう考えたか、どう反応したか、どう使ったかが重要になります。

「ギフト需要」が典型的です。「これ、一体なんだよ」「なんで買ったんだよ」とそのタイミングで口コミが起きるから売れるんですよね。大事なことは、その商品がコミュニケーションの仲介役になれるかどうかなんです。

あわせて読みたい

「クリエイティブ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    ユッキーナ引退 裏に事務所の闇?

    渡邉裕二

  2. 2

    人はなぜ不倫しないか 識者疑問

    PRESIDENT Online

  3. 3

    200人感染の東京 重症化見えるか

    中村ゆきつぐ

  4. 4

    10万円給付に13兆円かかった理由

    千正康裕

  5. 5

    竹中平蔵氏を叩く情報弱者に呆れ

    城繁幸

  6. 6

    警官が自殺 朝鮮総連の警備に闇

    文春オンライン

  7. 7

    感染増も無策か 小池都政に愕然

    大串博志

  8. 8

    コロナの誤解指摘 辛坊氏に反響

    女性自身

  9. 9

    感染拡大を放置 安倍政権に怒り

    鈴木しんじ

  10. 10

    風営法の改正で感染拡大防止せよ

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。