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体罰・パワハラについての一考察

イメージ図 出典:pixabay photo by pavlifox

為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

【まとめ】

・信頼関係がある中での体罰は選手を成長させることがある。

・信頼関係があったから体罰を行なっていいとは思わない。

・例外を認めると必ず悪用が出るので一様に体罰を禁止するしかない。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapanIn-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=40210でお読み下さい。】

体罰について興味深いやり取りがあったので、考えてみたいと思います。(編集部注:以下URLは為末大氏と橘昌幸氏のtwitter上のやりとり)

いじめも含め暴行で警察に任せるのがいいと思う

教師の人権が軽すぎる…博多高校「暴力動画事件」で露呈したこと

#現代ビジネスhttps://t.co/rqAo07sA7Phttps://t.co/rqAo07sA7P

相手がどのような思いかは結局他人にはわからないので、行為で判断するしかないと思います。相手は信頼しているはずだというのもまた、奢りじゃないでしょうか。 https://t.co/PfPL2RosuX

信頼関係があると、何をもって判断されるのでしょうか。またお勤め先で信頼関係のある部下を叩くことはあるのでしょうか? https://t.co/eK9dsK3XeR

ありがとうございます。

・仕事上ではそれほどの信頼関係にはならない

・矯正能力がある子供だからこそ叩く

・叩かれる側が後々理解したかどうかが信頼関係の基準

ということで理解しました。後でブログで書いてみます https://t.co/dopH5pADOO

これらのやり取りで浮かんだ私の疑問は以下のものです。

・信頼関係はどうすれば確認できるのか

・人は人を矯正することができるのか

・いつまでが子供なのか

・体罰が全て悪いとは限らないとしたら、具体的にどのようなルールを適用すべきか

画像を見る
▲写真 イメージ図 出典:pixabay photo by sasint

信頼関係があり、その際に行われる体罰(圧力を含む指導)は選手を成長させることがあるというのは確かにあるのかもしれません。長期的に、またその人個人の人間性が高まる点は賛同できませんが、短期的に競技力は向上する可能性はあります。ただ、肝心の信頼関係があるかどうかはどうやって測定したらいいのでしょうか?

野暮なことをいうようですが、結局のところいくら信頼関係があると指導者側が思っていても、体罰を受けた側が信頼していなかったと言えばそれでおしまいです。あんなに信じてくれていたじゃないかといくら指導者が主張しても、高圧的で言いだせませんでしたと生徒が言ってしまえばおしまいです。そもそも人間はどこまでいっても他人の心の中はわかりません。

また、信頼関係があったから双方が納得したからとしても、体罰を行なっていいとは私は思いません。臓器売買は双方の合意があればどちらにもメリットがある(表面的には)がありますが、それを踏まえても禁止されています。そのように双方の合意があろうとも、社会的に許されないとされていることはあるとおもいます。

人は人を矯正することができるのかですが、私はできないと思っています。振る舞いは矯正できますが、内面を変えることは難しいのではないでしょうか。私は人の成長はその人によってなされ、教育はその後押しをするという考えです。ですから、体罰を振るおうが振るうまいが矯正できないのでそもそも意味がないと考えます。自分がそんなに立派な人生を生きていないので自信がないのかもしれませんが。

私は、年齢や性別、国籍で態度を変えるべきではないと考えています。もちろん幼児であればそれなりに対応は変えるべきだと思いますが、基本人は一人の人間であり、誰かの所有物ではない以上、尊敬して接するべきだと考えています。ですからせいぜい教育はその人がなろうとしている姿の支援程度ではないかと考えています。

子供はまだわからない、いつか分かる日がくるから、体罰を行うということも、子供がいつ大人になるのか、また必ずしも体罰に感謝するとは限らないことを考えると賛同できません。ただ成人した人たちが主に形成する世論が比較的体罰禁止に傾いているということは、いつかわかってもよかったとは思っていない人の方が多かったという見方もできると思います。

全ての体罰が悪いとは限らないというのは、私もそう思います。ハリウッドの映画でも上官のビンタで我に変える若い青年が出てきたりします。体罰のみならず世の中のルールで禁止された中には、必ずしも悪いとは言えないものもたくさんあると思います。

ですが、ルールとして例外を認めていくかというと、それは別の話だと思います。ルールはいつも融通が効きにくく、時には理不尽さも含みます。それでもそのようなルールを適用した場合と、しなかった場合を天秤にかけ、メリットがある方を私たちは選んできました。体罰がもし個別の案件においてよしとするならば、必ずや生徒に信頼関係があったと言わせる指導者が出てくるでしょう。良い体罰、悪い体罰という余地を残せばその間で悩むのは、実は指導者であり生徒です。わかりにくいルールは現場を苦しめます。

人情溢れて知性的な大岡越前がたくさんいるならルールの適用は必要ないかもしれませんが、残念ながらそれは不可能ですし、時に人に依存したルールは暴走を起こしてきましたので、やはり全体をルールで一律に縛る必要があるのだと思います。

体罰を行う先生(悪質ではないもの)は熱い方が多い印象があります。星一徹も熱く、スクールウォーズの指導者も熱かったと思います。相手の人生に踏み込み人生を変えてやるんだという気概があります。おそらく本当に荒れた環境で、暴力を使ってでも引き摺り回してでも子供たちと向き合わなければならない場所というのはあるのだと思います。ですが、これも例外を認めると必ず悪用が出てくるので一様に禁止するしかないのだと思います。寂しい話なのかもしれませんが。

最後に体罰のことだけではなく、パワハラ、働き方改革、など一歩引いてみると、もっと大きな流れが私たちを包んでいることに気づきます。私はいつもマクロは何を言っているのかを聞こうとします。マクロに逆らっていいことはないからです。この個人の社会への転換を読み取り、それに向けた準備を子供たちにさせてあげる方が大切なのではないかと思います。

(この記事は2017年10月12日に為末大HPに掲載されたものです)

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