
総人口が減少する中で、現在の日本は65歳以上の高齢者が占める割合(高齢化率)が27.3%に上昇。この現象は今後さらに加速して、2065年の高齢化率は38.4%に達し、約2.6人に1人が65歳以上の社会になると推計されている。そんな「高齢化」について、木下氏はどのように考えているのだろうか?
取材・文/ボブ内藤 撮影/公家勇人
介護認定の伸び率を抑えた「大東元気でまっせ体操」
みんなの介護 木下さんは日本の「高齢化」についてどのように考えていますか?
木下 高齢化は日本人が長生きするようになったことで生じたことだと思いますが、同時に、健康寿命とのギャップが問題になっていますね。つまり、健康に生活できる期間が過ぎれば長寿そのものがリスクになってしまうわけで。
そんな社会に対応するには、医療や介護の制度をこれまで以上に手厚くしていかなければならないのはもちろんですが、健康寿命の期間を延ばして長寿リスクを軽減する方向での社会的投資も、今後、積極的に行っていくべきだと思います。
みんなの介護 健康寿命を延ばす取り組みとして、木下さんが注目している活動はありますか?
木下 大阪府の大東市で行っている「大東元気でまっせ体操」は、そのユニークなネーミングとともに印象深いですね。
身体の状態に合わせて座位、立位、それから寝たままでできる3パターンの体操で、逢坂伸子さんという理学療法士の方が中心となって週に1回くらいのペースで100カ所近くの場所で実施されているといいます。公的施設だけではなく、企業が無償で会議室などのスペースを提供していたり、市民グループが中心となってその場を設けているケースもあるそうです。
体操の内容もさることながら、高齢者の方々が決まった時間にひとつの場所に集まって、お互いコミュニケーションをとるという点でも健康増進の効果があるんですね。
その結果、大東市では高齢化が進んでいるにもかかわらず、介護認定の伸び率が下がったといいますから、とても意義のある取り組みだと思います。
みんなの介護 介護認定の伸び率が下がれば、逼迫(ひっぱく)している介護費の削減につながりますね。
木下 意地悪な見方をすれば、介護費を削減して保障をおろそかにすることが目的なんじゃないかと言う人がいそうですが、そこは丁寧に説明していくしかないですね。これについては、地域活性化事業と同じことですが。