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福岡魚市場株主代表訴訟判決と取締役の子会社不正調査義務(その2)

先日(福岡魚市場株主代表訴訟判決と取締役の子会社不正調査義務)のエントリーをアップいたしましたが、その続編であります。この判決では親会社取締役の善管注意義務違反の内容として「監視義務違反」(不作為による任務懈怠)が認定されているわけですが、親会社の他の取締役の違法行為を是正できなかった、ということではなく、子会社の取締役の不正を見抜けなかったという点において興味深いものがございます(被告3名は、いずれも親会社の取締役であり、かつ不正があった子会社の非常勤役員)。つまり子会社不正を早期に発見できなかったことに関する任務懈怠と、不正の兆候を知りながら十分な調査をしなかったことに関する任務懈怠の双方が問題になっているものです。

取締役と監査役では少し異なるかもしれませんが、平成11年の釧路市民生協組合債事件高裁判決や平成21年の大原町農協事件最高裁判決における「監査見逃し責任」の論理が、子会社不正を見逃してしまった親会社取締役の法的責任にも妥当することを、本判決は示しているようであります。会計や法律の専門家ではない会社役員は、会計専門家のように「粉飾決算」を発見したり、法律専門家のように不正行為を発見することまで求められるわけではなく、不正の疑い、つまり「異常な兆候」を発見すれば足りるわけでして、その「異常な兆候」が監査役や親会社取締役に見える範囲でどのような外形が存在するのか、その異常な兆候を知った場合の調査のレベルとはどのような事実を指すのか・・・・・という点を、この代表訴訟判決はかなり具体的に示しているところが参考になります。

子会社の経営トップが不正に関与している場合など、子会社独自の不正調査に期待が持てないケースがありますが、こういったケースにおいて不正調査の第一次責任者は親会社取締役であり、親会社監査役は、そういった親会社取締役の職務執行を監視検証する形で子会社不正に対応することになります。企業集団内部統制のような不正の未然防止ではなく、すでに不正が発生した疑いのある状況を前提とした状況(有事対応が必要となる状況)での監査役の業務監査の在り方にも参考となる判決ではないかと思われます。いずれにせよ、社内調査委員会による調査内容についても、きちんと取締役が精査しておかなければ「調査委員会の報告を安易に信用してしまっており、不正調査としては不十分」と判断される可能性があります。不正の兆候が発見された場合、(たとえ不正の発見が困難であったとしても)どの程度の調査を尽くせば善管注意義務違反にはならないのか、こういった判決を通じて議論する必要がありそうです。

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