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「留学ビザ」で日本の医療費を食う中国人

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3カ月の投与で465万円がかかるC型肝炎の特効薬「ハーボニー」。だが国保の医療費助成制度を使えば、自己負担は月額2万円で済む。この格安医療を目的に「留学ビザ」で来日する中国人が増えている、と「週刊現代」が報じた。同誌の元編集長の元木昌彦氏は「『現代』は中国人の摘発を訴えているが、同時に早急にやるべきことがある」と指摘する――。

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2010年12月、南海電鉄が企画した予防医療健診ツアーの体験会で心臓の検診を受ける中国人参加者(大阪・岸和田市の岸和田徳洲会病院)。(写真=時事通信フォト)

「日本の医療費が中国人に食い物にされている」

ある大富豪が「青いキリンを見せてくれたら、莫大な賞金を出そう」といった。
日本人は昼夜を問わず品種改良を重ね、青いキリンをつくった。
中国人は青いペンキを買いに行った。

これは『中国人vs日本人』(早坂隆著・ベスト新書)に出ているジョークである。

私だったら、中国人は日本人がつくったキリンを盗んで持って行ったとするのだが、それではジョークにならないか。

断っておくが、私は嫌中派ではない。観光旅行を含めて中国へは20回近く行っている。北京の胡同、三国志の時代を彷彿させる上海の朱家角、杭州の西湖から見た夕日、西安の屋台街など、中国ならではの街並みや味をこよなく愛する者である。

だが、『週刊現代』(5/26号、以下『現代』)が巻頭で報じている「日本の医療費が中国人に食い物にされている」を読んで、私の中にある振り子が嫌中側へやや傾いた。

「明らかに観光なのに保険証を持っている」

『現代』の内容をかいつまんで紹介しよう。

日本語が全く話せない70代の中国人患者が息子と日本の病院にやってきて、脳動脈瘤の手術をした。自由診療なら100万円から200万円はかかる。だがくだんの患者は健康保険証をもっていたため、高額療養費制度が使えた。自己負担は8万円程度だったという。

この患者は、日本で働いていたのでも、日本語を学ぶために留学していたわけでもない。

だが、留学ビザを取得すれば、日本では国民健康保険(国保)に加入する“義務”があるため医療保険が使えるのだ。以前は1年間の在留が条件だったが、12年から3カ月に短縮された。日本語を学びたいといって申請すれば、70歳でも80歳でも取得することができるのである。

新宿の在留外国人がよく利用する国立国際医療センターの堀成美は、「明らかに観光なのに保険証を持っている『不整合』なケースは年間少なくとも140件ほどある」と語っている。

来日してすぐの留学生が病院を訪れて、高額な医療を受けるケースもあるが、「深刻な病気を抱えている人は留学してきません。もともと患っていた病気の高額な治療を求めて受診するケースでは、治療目的なのかと考える事例もあります」(堀)

とりわけ需要が多いのはC型肝炎の治療

日本を訪れる中国人の間でとりわけ需要が多いのはC型肝炎の治療だという。特効薬のハーボニーは3カ月の投与で465万円かかるが、国保に加入して医療費助成制度を使えば、月額2万円が上限になる。

肺がんの治療に使われる高額なオプジーボは、点滴静脈注射100mgで28万円、患者の状態にもよるが1年間でおよそ1300万円かかる計算になる。

仮に100人の中国人が国保を利用してオプジーボを使えば、13億円の医療費が使われることになるが、高額療養費制度を使えば、実質的な患者の負担は月5万円、年間60万円程度で済むと『現代』は指摘する。

しかも、医療目的の偽装留学か否かを見抜くのは難しいと、外国人の入国管理を専門に扱う平島秀剛行政書士がいう。

「申請書類が揃っていれば年齢に関係なく、留学ビザを取ることができます。実際、高齢でも本当に日本語を学びたいという人もいますからね。厳しくやり過ぎると、外国人を不当に排除しているととられかねません」

ビザを取る方法はほかにもある。日本で事業をするといって3カ月在留すれば、経営・管理ビザがもらえ国保に入ることができる。

そのためには資本金500万円以上の会社を設立しなければならないが、500万円を一時的に借りて「見せ金」にし、ビザ申請のためのペーパーカンパニーを立ち上げればビザをもらえる。

そうしたペーパーカンパニーを立ち上げてくれる中国人ブローカーがおり、それとグルになって手引きする日本の行政書士もいるそうである。

医療ツーリズムは日本の病院の「下見」

それだけ日本の医療が中国人たちに信頼されているということではある。中国人富裕層たちを日本に連れて来て、高額な健康診断を受ける「医療ツーリズム」が人気になっている。彼らは当然、自由診療である。

だが富裕層の中にもケチなやつがいて、治療費を安く抑えようと、日本の保険証を取得する中国人は少なくないそうである。医療ツーリズムを積極的に受け入れている医療法人の元理事がこう語る。

「私がいた病院にやってくる中国人富裕層は、医療ツーリズムなどで高額な健康診断を受けたのち、いざ病気が見つかると、会社を設立し、経営・管理ビザをとって日本で治療するのです。彼らにとって医療ツーリズムは日本の病院の『下見』なんです」

中国にいる知人が病気になったら、書類上はその会社の社員にして、就労ビザを取得させることもできる。

こうした手を使えば、誰でも日本の保険に入ることができるのだ。

始末が悪いのは、罪悪感などほとんどないということである。この元理事は、来日した中国人にこういわれたそうである。

「私の知り合いなんてみんな、日本の保険証を持っているよ。中国に住みながら持っている人もいる。私だって日本にいっぱい会社持っているから、保険証なんてすぐ手に入る。まともに正規のカネを払うなんて、富裕層のなかでもプライドが高い人か緊急性のある人だけですよ」

別に違法なことをやっているわけじゃない、日本の制度を利用しているだけだから、何がいけないのかといい放ったという。

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