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KON397「株主の要求が明暗を分けた~コダックと富士フイルムの現在地」

米コダック
株価低迷で上場基準抵触の恐れ

▼苦戦するコダックに対して、好調を維持する富士フイルム

米映像機器大手イーストマン・コダックは3日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)から上場基準に抵触する恐れがあるとの警告を受け取ったと発表しました。

コダックの経営はズルズルと悪化してきていて、今相当に厳しい状況に追い込まれています。

約10年前デジタルカメラが普及する前、世界を富士フイルムと二分していた当時、株価は40ドル前後でした。一時はデジタルカメラにも乗り遅れまいと努力していて、20ドルあたりをキープしていた時期もあり、努力の成果を認められていました。

しかしここに来て社長の交代などもあり急速に力が衰えてきて、株価は30日連続で1ドルを割り込むという厳しい状況です。上場廃止との警告を受けたということですが、もはや「秒読み」と言っても過言ではないでしょう。

このような状況にあるコダックに対して、かつて世界を2分していたライバル富士フイルムはどうなのかというと、実は今かなり好調を維持しています。

2000年に社長に就任した古森氏によって、抜本的な事業の構造改革に成功しました。

カラーフィルムやデジタルカメラのイメージング・ソリューション部門は、写真フィルム市場が業界ごとほぼ消滅するという状況になり、ペーパー関連もキヤノンなどの後手を踏んでしまい、芳しくない結果でした。

しかし、そこで残った、インフォメーション・ソリューション部門(メディカルシステム機材、記録メディア、ヘルスケア製品など)とドキュメント・ソリューション部門(オフィス用複写機・複合機、プリンターなど)に見事に活路を見出しました。

ドキュメント・ソリューション部門では、富士ゼロックスの株を買い増し、75%を取得して完全連結対象としました。

インフォメーション・ソリューション部門では、2008年に富山化学を買収しヘルスケア事業にテコ入れしています。

結果、2000年度に1兆3833億円だった売上は、2006年度には2兆7800億円に倍増し、利益も順調に伸びています。かつて売上の6割弱を占めていたイメージング・ソリューション部門は約2割に減少し、代わりにドキュメント・ソリューション部門が42%を占めるという変貌を遂げています。

これは、見事な結果だと思います。

▼コダックと富士フイルムの明暗を分けたのは?

かつて世界を2分していた両者(コダックと富士フイルム)が、なぜこれほど違う結果をたどることになってしまったのでしょうか?

ちょうど先日、エコノミスト誌の記者が私のところへ来て、「両者の明暗を分けた理由は何か?」ということを尋ねてきました。

富士ゼロックスを買収できたという「運」があったという見方もあるでしょうし、確かに大きな要因だと思います。

しかし、唯一の最も大きな違いは「配当の方針」にあったのではないかと私は考えています。

常々、日本企業は配当が少ないと外国人投資家からは非難される傾向があります。が、今回はそれが「吉」と出たのです。

富士フイルムの場合、アナログ写真市場が壊滅的な状況を迎えたとき、なんと2兆円のキャッシュを保有していました。もし米国の言うとおりに配当をしていたら、富士フイルムに2兆円ものキャッシュが残っていることはなかったでしょう。

米国の考え方は、必要なら銀行から借りる、あるいは市場から調達すればいいので、もっと配当すべきというものです。ゆえに、この考え方に則っていたコダックには、同じタイミングでキャッシュはなく、コストダウンしか道は残されていませんでした。突然死する産業でコストダウンをしても意味はありませんから、ほぼこの時点で詰んでしまったと言えると思います。

突然死する産業に身を置いていたものの、2兆円のキャッシュのお陰で、富士ゼロックスの株を買い増し、富山化学を買収することが可能だったわけです。

配当をしてこなかったことが、戦略的な投資を可能にしたと言えるでしょう。

富士フイルムの場合、時価総額が1兆3000億円に対して2兆円のキャッシュでしたからある意味異常値ですが、キリンビールが国内ビール市場で大苦戦していたときに生き残れたのも、同様に潤沢なキャッシュを抱えていたからでした。

明暗を分けてしまった富士フイルムとコダック。両者の違いを生み出した背景には、元をたどれば日米株主の要求の違いが大きく影響していると私は考えています。

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