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安倍首相の“断言癖” 大平正芳氏「アーウー」の方がマシ?


【周りは尻拭いに奔走(時事通信フォト)】

 歴代の首相には、ユニークな言語表現の持ち主が少なくない。「角栄節」といわれ、早口ながらわかりやすい語り口で庶民に政治を伝えた田中角栄氏、その盟友の大平正芳氏は国会答弁で「あー」「うー」と前置きして語ることから「アーウー宰相」の異名を取ったが、角栄氏は「アーとウーを省けば見事な文語文になっている」と評した。

 対照的に、小泉純一郎氏は「自民党をぶっ壊す」など要点だけのワンフレーズポリティクスで世論を動かした。歴代首相を取材してきた政治ジャーナリストの野上忠興氏が語る。

「往年の総理大臣は、自分が不用意な発言をすれば政界や行政、経済にどれほど大きな影響を及ぼすかをわかっていた。だから言い回しには慎重で、思いきった発言をする場合も効果と影響を十二分に計算したうえで語った」

 しかし、安倍晋三首相が自分の発言が及ぼす影響をどこまで考えているかは疑問だ。モリカケ問題では断言癖で国家のあり方までねじ曲げてしまった。

 勢いに乗っている時の安倍首相は“俺は何でもできる”と歴代政権の憲法解釈を変更し、「最高の責任者は私だ」などと述べ、国民には実行困難な目標をたやすく実現してみせると約束する。そのとき多用するのが、「最高」「必ず」「一切」「全員」といった強調表現だ。

 森友問題をめぐる有名な次の言葉には、自分の行為の正当性を強調する副詞が何重にも重ねられている。

「私も妻も『一切』、この認可にも国有地払い下げにも関係ないわけでありまして、私や妻が関係していたということになればこれは『まさに』私は『間違いなく』総理大臣も国会議員も辞めるということは『はっきりと』申し上げておきたい」(2017年2月17日、衆院予算委員会)

『一切』『まさに』などを省けば明瞭な日本語になっているのだが、この強調が大きな二次被害をもたらした。

 佐川宣寿・前国税庁長官は国有地売却の「交渉記録は破棄した」とウソをつき、近畿財務局の役人たちは「首相夫人」の関与が記述された公文書改竄にまで手を染めた。

「総理大臣が発した言葉」につじつまを合わせるために、公文書という「国家の歴史」が書き換えられたといっても大袈裟ではない。

※週刊ポスト2018年6月1日号

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