- 2018年05月22日 09:15
なぜ40歳以上の会社員は輝きを失うのか
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佐渡島庸平さん(左)と高橋晋平さん(右
■「自分も金を出したい」ものしか売れない
【高橋】佐渡島さんは『宇宙兄弟』などたくさんのヒット作を編集者として担当していますが、本の企画はどうやって立てるんですか? 著者の「これを書きたい!」と、編集者の「これがウケそうだ」では、どちらを重視しますか?
【佐渡島】両方あります。高橋さんの近著『一生仕事で困らない企画のメモ技(テク)』みたいな単発のビジネス書では後者ですね。でもマンガや小説だと、連載が何十年も続く可能性がある。作者が「これを書きたい!」と思わないと続けられないんですよ。だから編集者としては「普遍性があるかどうか」を気にします。
【高橋】普遍性ですか?
【佐渡島】以前、後輩の編集者がある作家の原稿を読んで「今回はおもしろいです!」って書籍化の企画をあげてきたんで、僕はこう言ったんですよ。「お前、ひと月に数冊しか本読んでないみたいだけど、この本はその中の1冊に入るの? 金を出して買う?」。すると「買わないです。仕事として無理やり読まされるなら、おもしろいですけど……」って。それを作家に伝えるのがお前の仕事だろう、と。
【高橋】本当にそうですよね。自分が買わないのに、誰かが買うわけがない。
【佐渡島】サラリーマンは企画したものが売れようが売れまいが、給料が毎月自動的に入ってきますよね。だから、お金のことを考えずに企画する癖がある。それは企画に対してすごく無責任な態度です。無責任な人って、たとえば「新しい!」だけで企画を一点突破しようとするでしょう。でも本来は、お客さんが納得して財布のひもを緩めるかどうかがすべてであって、それ以外は遊びごとなんですよ。人の心が動くというところまで責任を持てるかどうかが、企画者として大切なことだと思います。
■辞めるのは成功体験を積んでから
【高橋】僕は3年半前に会社を辞めましたが、もし会社にいたら、今ごろどうしていただろうって考えることがあるんですよ。今だから言えるのかもしれないですけど、上司に怒られてもいいから、なんらかの方法でとりあえず企画を世に出しちゃって、それでファンがついたらそれでいいじゃんって考え方をしたかもしれないです。
【佐渡島】今はネット上で自分のアイデアを試せますから、話題になるかどうか試せばいいんですよ。
【高橋】会社に所属した状態で、ですね。
【佐渡島】そうです。自分の企画が社内で理解されないと不満な人は、そうやって世に出して試してみればいいんです。それで世間もしーんとしていたら、完全に自分が悪い。たぶん99%くらいの人が、自分が悪いのに周囲、つまり会社が悪いって言っているだけですからね。
■社内外問わずいろんな人に会うべきだった
【高橋】あと、僕はバンダイにいるとき、びっくりするくらい会社内しか見えていませんでした。「∞(むげん)プチプチ」という玩具を企画したときは、プチプチの会社(名古屋市に本社のある川上産業)に行きましたし、「猫背」というフィギュアを企画したときは整体師に会いに行きましたけど、それでも狭かった。あと会うのは版権元や権利元の人くらい。
でも本当は、会いたければ誰でも会えるはずで、たとえば佐渡島さんならわかってくれるかもしれない……と思ってコルクに持ち込んだら何かが起きるかもしれない。何かを突破するために、社内外問わずいろんな人に会うべきだったなあというのは、今だったら思えます。
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