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失言王・麻生氏vs断言王・安倍氏、タチが悪いのはどっち?


【なぜ簡単に断言するのか(時事通信フォト)】

「政治家は言葉が命」といわれる。その“命”を粗末に扱って批判を浴びているのが“失言王”こと麻生太郎・財務相兼副総理だ。

「セクハラ罪という罪はない」「はめられたんじゃないか」「どの組織だって改竄はありえる話だ」

 放言三連発。そのたびに国会で謝罪し、発言撤回に追い込まれた。しかし、政治家の言葉というなら、安倍首相の「断言癖」の方が影響の深刻さにおいて麻生氏の失言をはるかにしのぐ。

「最高の責任者は私だ」

 勢いに乗っている時の首相は“俺は何でもできる”と歴代政権の憲法解釈を変更し、国民には実行困難な目標をたやすく実現してみせると約束する。そのとき多用するのが、「最高」「必ず」「一切」「全員」といった強調表現だ。

 しかし、ひとたび守りに回ると自分の言葉に縛られてしまい、状況の変化に応じた決断ができなくなる。

 米朝首脳会談に向けて関係国が駆け引きを展開している対北朝鮮外交は、本来なら、「拉致の安倍」を自任する首相にとって一番の見せ場のはずだが、ここでも「断言癖」に手足を縛られている。

「私の内閣で『必ず』解決する決意で拉致問題に取り組む。オールジャパンで結果を出していく」

 政権に返り咲いた5年前、安倍氏は拉致被害者家族会にそう約束すると、国会答弁などでも「目的は(横田)めぐみさんはじめ拉致被害者『全員』を取り戻すことだ」(2014年3月19日、参院予算委員会)といった発言を繰り返した。

 主張は正しい。他国に拉致された国民を全員帰国させるのは政府の責任だ。「だが」と拉致議連幹部がいう。

「総理のいう『必ず』解決のゴールはどこで、『全員』とは何人のことなのか。政府認定の拉致被害者はすでに帰国した5人を含めて17人。その他に、北に拉致された可能性が排除できない特定失踪者が約880人いる。あの言葉で、総理は拉致被害者を何人帰国させたとしても、全面解決とはいえなくなった」

 金正恩にもそこを突かれた。日本側の要求が高いとわかると、北は首脳会談の相手から日本を外した。蚊帳の外に置かれた首相はトランプ大統領に「拉致解決」の口添えを頼み、拉致被害者家族を訪米させて国連本部で北朝鮮人権問題のシンポジウムを開くなど、国際社会に「北の非道」を訴える圧力外交を展開する。

 それに対して、金正恩はこれ見よがしに「米国人の拉致被害者3人」を返してトランプ大統領を喜ばせた上で、日本人拉致については「解決済み」(朝鮮中央通信)とけんもほろろ。日米の拉致問題を分断され、手玉に取られたのだ。

 北朝鮮の核・ミサイル問題でも、首相はこの4月、国会で重大な断定発言をしている。

「ICBM(大陸間弾道ミサイル)だけが廃棄されたのでは日本にとって『意味がない』。日本を射程に入れるミサイルもしっかりと廃棄されるべきだと話したい」

 その通りである。北はすでに日本全域を射程に入れる準中距離弾道ミサイル「ノドン」を数百基配備している。ICBMが廃棄されれば米国に届くミサイルはなくなるが、ノドンを廃棄させない限り日本への脅威は残る。

 しかし、「意味がない」と言い切ってしまうと、米朝首脳会談に進展があっても、ノドンが残る限り日本は「合意を歓迎する」とはいえなくなる。外交の選択肢を自ら大きく狭めてしまった。

 こうみると、失言王の麻生氏と断言王・安倍首相の言葉の質の違いがよくわかる。麻生氏の失言は、本人が非を認めて渋々ではあっても謝罪、撤回すれば一応収まる。安倍首相の断定は訂正や撤回がきかない。

※週刊ポスト2018年6月1日号

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