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FTの5月12日の社説はThe Vision Fund’s vision remains a little bit blurry – Masayoshi Son’s tech project risks being too big, yet not big enough(ビジョン・ファンドのビジョンはややぼんやり~孫正義のIT企業に対するファンドは大きすぎ、でも十分に大きくないというリスクを抱えている)として、ファンドの名前が「見通し」や「洞察力」を意味するVisionにひっかけています。
この中でドイツのダイムラーなどの出資によりビジョン・ファンドの規模が目標の1000億ドル(約11兆円)に達することを踏まえて、「ファンドの資金力は疑いようもない(There is no doubting the fund’s financial muscles)」と認めます。
その上でボーダフォン・ジャパンや中国のアリババといった一生に一度の“あたり”のみならず、最近もインドのネット通販大手Flipkartを米ウォルマートに売却するなど、孫さんの先見性を評価。
さらに、米Uber、中国の滴滴など世界中のライドシェアリングの会社の株式を買っていることで、出資先の企業の経営統合を考えているとしたら、「それは興味深いアイデアだ」とも指摘。
一方で、Apple, Google, Facebook, AmazonそれにMicrosoftの方が手軽に買収資金を得ることができるため、買い負けるか、不必要に資金を投入することになると予想し「ビジョン・フォンドは、ファンドとしては大きすぎる一方で、テック界の巨人と戦うには小さすぎるという事実を乗り越えなくてはならない」と締めくくっています。
The Economistの最新号の表紙はまるで後光!The $100 billion bet – How Masayoshi Son is shaking up Silicon Valley(1000億ドルの賭け~孫正義はシリコンバレーを根底から揺るがしている)というタイトルの下にルーレットと、マジシャンを連想させる黒いセーターの孫さん。
孫さんについて「テック界でもっとも影響力のあるひとり」と総括しています。
孫さんが率いる1000億ドル(約11兆円)のビジョン・ファンドについて、「投資する先、及び資金の出し手の両方の産業を根底から変えようとしている(The Vision Fund is disrupting both the industries in which it invests and other suppliers of capital)」と総括。
一方で「資金力は必ずしも成功を意味しない」として、すべての投資判断を行う孫さんを「先を見通せるビジョナリーになるかもしれないが、単なる変人だったということになるかもしれない」といいます。
その上で、たとえ失敗したとしても3つの点で長期にわたる波紋があると解説。
(1)巨額の資金は未来の産業を形づくる:起業家に不必要なまでの大金を投じ、拒否するようならライバル企業にその資金を投入するぞと脅迫することで、起業家のやる気を奮起する。
(2)資金の出し手のファンド業界に多大な影響を与える:ビジョン・ファンドに対抗するため、シリコンバレー屈指のセコイア・キャピタルが最大のファンドを創成しているし、孫さんはこれまで資金が不十分だったインドや東南アジア各国、それに欧州の国々に資金を投入している。
(3)国や産業をまたぐ“ファミリー”の創設:孫さんが「ソフトバンク内のシリコンバレー」を作りたいと発言しているように、出資先どうしでアドバイスをしあったり、経営統合したりできる。
孫さんと共に目利きをしているドイチェバンク出身のRajeev Misraは、この“ファミリー”について、この中でエコシステムを作り上げることができる説明しているということです。
懸念としては「ビジョン・ファンドとソフトバンクの関係の複雑性」を挙げていて、興味関心の多くが一致している一方で、「それぞれの株主が投資先企業の行方に意見を異にするかもしれない」といいます。
さらに孫さんのみが「AI=人工知能、衛星、データといったパズルを組み合わせることができる」として、ポスト孫さん心配しています。