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日本の文化価値の底力を過小評価してはいけない

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■経済やビジネスの明るい話題が少ない日本

 最近、巷では政治的な話題がものすごく賑やかだ。モリカケ問題のようなスキャンダルで騒がしいということもあるにせよ、長く蔑ろにされていた未解決の問題がこの時とばかりに次から次へと暗い穴の底から這い出して来ている感じだ。長い間の日本人の政治無関心のつけが一気に出て来ているように見えてしまう。やはり日本は長い間、「経済一流、政治は二流」の国だったのだなとあらためて思う。

ところがその経済、あるいはビジネスに関わる話題も、ウキウキするような明るい話題は昨今本当に少なくなった。もちろん、人工知能等、技術に関わる話題は毎日溢れるように出て来るし、そういう意味ではその関連のビジネスに関わる情報も山のようにあるとも言えるのだが、よく注意して見ていると、それで日本企業が、これならやっていけるという確信を持てるような話題はほとんど含まれていない。その逆に、このままでは日本企業も日本自体も壊滅してしまうという類の悲観的な言説は増える一方だ。残念なことだが、これが2010年代の終盤を迎えた今の日本の現状だ。

本来、こんな時には、かつての日本の凄さを思い出せ、というような話がもっと出て来てしかるべきところだが、昨今では、「かつての日本の成功(重厚長大/第二次産業での成功)はこれからの日本の成功(ソフトウェア/第三次産業での成功)の足枷」、という認識もかなり浸透してきているせいか、ほとんど目にすることもない。近年、成功している日本企業の代表の役割を一手に背負って、お手本であり続けたトヨタでさえ、最近ではお手本としては賞味期限切れ気味で、「あのトヨタでさえ生き残れないのではないか」という悲観的な論調に変わりつつある。それもあって、「日本企業は本当にどこも生き残れないのではないか」という漠然とした不安が日本中を覆っている。

こんなことを書くと、日本企業としてユニコーン企業に認定された、フリマアプリ運営のメリカリやアパレルのZOZOTOWNあるいは深層学習の産業応用でトヨタ自動車からも出資を受けた、プリファード・ネットワークスなど、今の日本にもいくらでも成功例があるのだから、もっとそういう企業を注目すべき、というお叱りを受けることも少なくない。まあ、それはごもっともなのだが、それでも、どうもこのような企業の成功例が、大勢を占める旧来の日本企業を触発して、全体として市場や、さらには国家が活性化するという方向には行っていないように思えてならない。この両者を繋ぐ何かが欠けている。

日本は高齢化が進み、生産年齢人口も総人口自体も減って、社会全体の活力も弱り、税金も高く、法律等の環境もベンチャー起業家が活動しにくいとなれば、米国流のマインドを持っていて英語も流暢な人や、そういう人の多い企業なら、あえて日本に留まる理由もなくなってしまう。成績優秀な高校生で、日本の大学ではなく、米国等の一流大学の進学を目指す学生が出て来ているが、それが日本の優秀な学生のスタンダードになって、日本に残るのは二流人材ばかり、しかも資本は外資が牛耳っていて、日本人社員は収奪されていく、そんな未来がこのままでは本当に現実になってしまうだろう。

■日本ならではの価値に寄り添うことが必要

そういう意味で、日本という国土の内部、あるいは日本文化に発生起源を持ち、日本人の心の深層にある思想や行動原理にそった、より歴史を生き残った要素を核とする成功のエッセンスを見つける努力がどうしても必要なように思う。またその方が、多くの人が納得して、普遍的で息が長く、未来にもつながっている道を示すことができるはずだ。

そのように言うと、「日本人の習慣や心性は製造業の成功には大いに寄与したが、インターネット時代になって、ソフトウエアやサービス業が主流になると、米国人や中国人のほうが相性が良く、日本人には不利というステレオタイプな反応が必ず返ってくる。たしかにそれはあたっている部分もあるのだが、それで以上終了とするのは少々結論を急ぎすぎだ。日本人にとって、幸いなことに、この国にはまだ磨けば光る巨大な資源が眠っている。

トヨタや松下(現パナソニック)、東芝等の日本の製造業が世界を席巻している間も、日本発の文化が国境を超えて他国に大きな影響を与えるという現象は見られなかった。だが、どういうわけか、バブルが崩壊した後になって、日本の文化産業は世界中で注目され、経済的な成功を実現するようになり、いつのまにか海外からの日本のイメージは、テレビや自動車のようなプロダクトから、ポケモンやガンダムのような文化産業へシフトし、しかも外国人から「クール」と評価され、世界で確固たる地位を築くことになる。

■クール・ジャパン戦略の挫折

このアップトレンドに相乗りすべく、第二次安倍政権の誕生後、内閣府、経産省主導で、いわゆる「クール・ジャパン戦略」が開始され、日本の魅力を海外へ情報発信して、日本の商品やサービスによる売り上げの増大を目論んだ。そして、政府の支援を受けて日本文化輸出を支援するクールジャパン機構(CJF)が設立された。失われた10年、20年とどんどん「失われた」時期が長くなっているという焦りにも似た感情が日本を覆っていたこともあり、大いに期待され、鳴り物入りで始まった活動だったと記憶する。

ところが、どうやらクールジャパン機構(CJF)はあまりうまくいっていないのでは、という噂が飛び交っていると思ったら、昨年秋には、日経新聞から非常に状況が悪化している旨を伝える記事が出る。事業の過半数が収益などの計画を達成できていない、ガバナンスが効かない等、散々な言われようだ。

www.nikkei.com

だが、あらためてクールジャパン機構の出資先を見てみると、残念ながらとてもではないが「クール」とは程遠い案件が並んでいる。そもそも文化産業というのは、工業製品のように数値目標を決めて、一様に管理できるようなものではない。こうなると、国際政治学者のジョセフ・ナイ氏が述べていた「政府は文化を管理できないし、管理すべきではない」あるいは「文化を管理する政策がとられていない点自体が、魅力の厳選になりうる」という意見が正しかったように思えてくる。しかも、関わる人達の感性や年齢の問題もあるように思える。

世界で喝采を受けたのは、「日本文化」といっても、マンガ、アニメ、ゲーム等のポップカルチャーであり、その良さを肌感覚でわかるのは、日本人でも、40歳くらいまでで、それより上の年齢層は(人によって違うのはもちろんだが、一般的には)実のところほとんど理解できないのが本音だろう。クール・ジャパンも失敗なのか、としょげる前に、世界で受け入れられている「クール」の」正体を、もっと徹底的に分析しておく必要がある。

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