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焦点:アジア新興国で通貨安再燃、利上げを阻む「原罪」問題

[シンガポール 4日 ロイター] - アジア新興国の中央銀行は、自国通貨安と経済の先行き不透明感の高まりが同時進行するお馴染みの展開に対して、為替市場に介入しつつ、国内向けに流動性を供給するという、いつもながらの戦略を取っている。

アジア新興国の国債を多く保有する外国人投資家のつなぎ留めが欠かせず、おいそれとは利上げに踏み切れないためだ。

インドネシアやインド、フィリピンなど金利が比較的高いアジア新興国通貨の対ドル相場は、いずれも年初来で3%程度下げている。米国債利回りの上昇に伴う投資資金の奪い合いのほか、ドル高の進行、トランプ米大統領の「米国第一主義」による世界的な通商摩擦の激化や資本流出など、逆風がいくつも重なったためだ。

アジア新興国経済は既にこれまで成長をけん引してきた輸出受注に陰りが出ているが、通商摩擦の高まりによってサプライチェーンが分断されるリスクもある。

インドネシアルピア<IDR=>はこの3カ月で5%下落。インドネシア中銀はドル売りルピア買いの介入を粘り強く実施すると同時に、国債買い入れオペによって介入で吸い上げたルピアを市場に戻している。

インドネシア中銀はルピア防衛のためには利上げも辞さないと表明しているが、アナリストは懐疑的だ。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(シンガポール)のストラテジスト、クラウディオ・ピロン氏は、為替市場介入と流動性供給という現行政策について「必ずしも機能しなくなるまでこれで行くしかない」と述べ、通貨の安定を図りつつ、利上げの必要性にあらがうのは容易なことではないと指摘。流動性を供給しても国外に流出するだけで、通貨安が起きるようになった時には、投資資金を引き付けるために利上げせざるを得なくなるとした。

アジア新興国では1997─98年のアジア金融危機以来、為替市場への介入が当たり前の政策となってきた。米国と足並みをそろえて利上げするのではなく、いまだにドル売り市場介入を行っている。

背景にはアジア新興国が歴史的に外国からの投資資金に依存しているという事情があり、こうした体質は「原罪」に例えられることも少なくない。

外国人投資家によるアジア新興国国債の保有比率は、この6─8カ月間にかなり減少したとはいえ、なおインドネシアで40%、マレーシアで45%に上り、タイでもかなりの比率となっている。

こうした国の金融政策は海外市場の動きの影響を受けざるを得ず、中銀としても経済の持続的な成長維持と自国通貨の安定の間でバランスを取ることが欠かせない。利回りは高めにして外国人投資家を引き付けつつ、安定を保って国債が売られないようにする必要がある。

ウェストパックのアジア・マクロストラテジストのフランシス・チュン氏は「アジア諸国への資本流入は金利差だけでなく、成長見通しや実際のプロジェクトで得られる投資リターンも理由だ」と指摘。「特にインドネシアは利上げは最終手段だと思う」と述べた。

マレーシアとタイは国内の年金基金などに頼ることもできるが、インドやインドネシアはそうはいかない。このためインドは債券の投資規則を自由化して外国人投資家を誘致しようとしている。

多額の経常収支黒字を抱える韓国ですら、市場に資金を呼び込むために下半期に債券発行規則を緩和するとみられている。

フィリピンはインフレが高まり、ペソが下落して株式市場が下げているにもかかわらず、中銀は金融政策を変更しないと表明しており、今年初めには預金準備率を引き下げた。

インドネシア中銀は1─3月期にルピア防衛のために外貨準備から約60億ドルを支出。ルピアはこの数週間、1ドル=1万3950ルピア近辺で安定している。一方、国債は中銀の買い入れオペによって利回りが昨年並みの水準に維持されている。

しかしある外国人投資家は「世界的に金利が上昇すれば、インドネシア中銀は追随利上げか資本流出のリスクかのいずれかを選ぶ以外に選択肢がなくなる」と話す。

もっともインフレ圧力が不在のため、インドネシアなどアジア新興国がそこまで追い込まれることは当面ないというのがアナリストの見方だ。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのピロン氏は「インドネシア中銀は少しだけ時間を稼いだ。しかしルピアの対ドル相場が1万4000ルピアまで下落し、外貨準備が毎月50億ドルのペースで減り続ければ、これまでの政策はますます困難になるだろう」と述べた。

(Vidya Ranganathan記者)

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