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南北問題、日本の曖昧な外交姿勢 - 外岡立人

安倍首相の韓国に向ける視線が変わった。

11年ぶりの南北首脳会談が4月27日行われた。その直前、ムン韓国大統領は、北朝鮮と日朝首脳会談を開きそこで拉致被害者問題について話し合いを持ちたいと伝えるよう、安倍首相から電話で依頼されていた。

当初、半島の非核化と平和条約締結に関する問題が主要な南北首脳会談の中で、そのような日本からの依頼について話し合う時間がとれるのか疑問視されていたが、ムン大統領は会談の中で約束通り安倍首相の希望をキム委員長に伝えた。すると予想に反して、キム委員長は安倍首相との会談について即座に了解したとされる。

北朝鮮と日本の間には多くの解決すべき問題がある。戦後補償の問題は大きいが、韓国と同様に従軍慰安婦問題もあるかも知れない。日本からの拉致被害者問題は北朝鮮にとっては小さな問題で、もしかすると記録さえ失われている可能性もある。会談が実際に行われるのか、日本政府から公式に発表されていない。拉致被害者問題が本当に取り上げられるかについても現在では定かではない。

朝鮮半島完全非核化と終戦協定締結が実現した場合、ムン大統領とキム委員長が今年のノーベル平和賞のトップにノミネートされるとの噂もある。米国では、それはトランプ大統領の功績が大きいから、トランプ大統領こそ受賞すべきとの声も出ている。いずれにしても、5月末から6月上旬に開催が予定されている米朝首脳会談の結果による。

そもそも米国保守層はキム委員長の言葉を信頼していない(日本でもそうであるが)。しかし先日の南北会談のテレビ実況で、一般社会のキム委員長に対する印象が大きく変わったことも事実だ。

ピョンチャン五輪を契機にすべては大きく動き出した。五輪前に懸命に北朝鮮との連携を強め、統一チームの結成、北朝鮮特使団の受け入れ、さらに米国との連絡調整等に余念無くムン大統領は動き回った。そこに安倍首相は、”微笑み外交”は意味がない、北への制裁を弱めてはならない、等と電話会談で語った。それに対しムン大統領は、これは内政問題であり、口を出さないで欲しい、と語気を強めたとされる。

ムン大統領は進歩派として韓国大統領選で勝利している。その考え方には北朝鮮の政策と一部共通している部分があるようだ。そういう意味ではキム委員長とは相性が良いのかも知れない。

キム委員長も五輪を契機に韓国、中国、米国、ロシアとの非公式での対話を増やした。日本は五輪で選手はがんばったが、政治家はそれを契機に何もする気配は見せなかった。それは仕方がないとしても、今になって安倍首相は米国と韓国の大統領に密かに、日朝首脳会談開催の仲介を求めだしているようだから、いい加減な外交姿勢といえる。

日本は今のところ北朝鮮問題に関して蚊帳の外におかれている。海外のメディアでもそのように表現されている。

終戦協定締結と北朝鮮の非核化が実行されたとき、キム委員長とムン大統領の名前は歴史に刻まれるだろう。

我が国の首相は国内での支持率は相当低くなっているが、国際的にはどのような評価が得られているのか気になるところである。

いずれにしても拉致被害者の帰国は、我が日本の政府が責任をもって実現させなければならない。

【参考資料】

Japan's Abe, used to being Trump's buddy, finds himself out of step on North Korea. Washington Post, 3/13/2018

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外岡立人(医学博士、前小樽市保健所長)

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