馬総統は親中国派、蔡英文氏は中国との距離感、台湾独立派でありました。
この選挙の結果をみるに当たり、台湾が今、経済的に中国なしでは機能しない、という明白なメッセージにも聞こえます。実際、台湾企業の経済界における躍進振りは目覚しいものがあり、パーソナルコンピューター業界やEMS(電子機器受託製造)においても世界のトップクラスを走っており、その経済基盤が中国本土側にあることは明白であります。
つまり、今の台湾はイデオロギーと経済基盤の実態がかけ離れつつあると見るべきであります。
台湾の食品大手企業である統一企業(カナダでもT&Tというスーパーを立ち上げました。今は売却済みです。)の高董事長がインタビューでこんな事を言っています。
「13億人の人口がありますからここでうまくやっていけばもうほかに行かなくてもいい。統一企業も重点的に投資しています。将来的には中国全省に拠点を置いて事業を展開したいと考えています。」正直申し上げまして高董事長のこの発言には改めてビックリしております。台湾と中国の本質的な問題は歴史の中に埋もれた形で何も変化していない中で中国の急速な経済発展に自分たちの思想は横においておき、ビジネスを構築するといっているわけです。
ある意味、この構図は97年の中国返還前の香港でも同じだったかもしれません。そして、当時の香港もそれで経済的に極めて潤うことが出来ました。更に個人ベースではリスク分散として資産を世界の安全なところに置き、第二のパスポート、ないし、永住権を確保することでそれをセキュアしてきました。
もちろん今の台湾も非常に似た動きがあります。ここバンクーバーでも台湾出身の方は多く、香港出身者と同様、ビジネスにかなり偏重したところがあります。
この状況からすれば台湾と中国はWIN-WINの関係を長期にわたり築くことが前提になってきます。今後、その構築が更に進み、台湾側からの中国への投資や資産が増大するにつれ、イデオロギー上の問題は実質的に封印状態になるのでしょうか?
ところで台湾や香港の人からすれば同じ中国人というブラッドの中、体制の相違だけがそこに存在するわけでビジネスという点からすれば国民性やセンスに共通するものがあり、台湾、香港が情報量の点などで一歩有利に展開しているという構図でしょうか。
一方、多くの日本企業は中国で案外苦戦をしていると聞いております。13億という巨大市場に目を奪われ誰でも簡単に儲けられるという妄想が日本企業にあるとすれば、それは80年代後半に日本企業がこぞってアメリカで不動産を買いあさり、投資をしていって大ヤケドをしたのとダブります。私は経営者としてこういう状況だからこそ、中国への投資シフトはほどほどにして他の東南アジアで地位を築くほうがリスクは少ない気がします。
つまり、台湾が親中国の関係を密接に続ける以上、中国市場において台湾企業対し日本企業は苦戦することにもつながるかもしれません。
今日はこのぐらいにしておきましょう。