記事

司法修習生給費制議論に関する素朴な疑問

かならずどなたかがおっしゃると思っておりましたので、私のような全体像のみえていない弁護士が申し上げることではないと静観しておりましたが、あまり視点の異なる問題を呈示される方もいらっしゃらないようですので、ひとことだけ「司法修習生給費制議論」に対する本当に素朴な疑問を申し上げたいと思います。

本日あたりのマスコミの論調を拝見いたしますと、日弁連のほうで「司法修習生の給与の存続を求める意見」に対して、自民党の反対が根強く、結局のところ当初の予定どおり「貸与制」になるのでは・・・といったことが報じられておりまして、マスコミとしても税金を投入して司法修習生の給与をねん出することは国民の合意が得られないであろう、といった意見が強いようであります。そして自民党の意見としても、またマスコミの意見としても、たとえば(いったん貸与制としたうえで)公益活動に従事することを条件に、返済義務を免除するというのはどうか、といった方向性が出されております。

私にとって「ちょっとビックリ」なのは、上記の意見では公益活動をすることに値段がつけられている(返済免除)ということであります。これは「値段をつけなければ弁護士は公益活動をしないであろう」といったことが前提とされているように思えます。しかし私の周囲の若手弁護士で、公益活動をしていない人は留学中の人を除いて探すのはむずかしいです。たとえば大阪弁護士会は老若男女の区別を問わず、平成19年から「公益活動」は義務化されておりまして、義務違反には罰金の制裁が課せられます。私も普段の日弁連、大阪弁護士会での委員会活動に加えて、この8月から10月はADR(裁判外紛争解決センター)の仲裁人をしております。1回2時間の審理でマンション組合における紛争の仲裁業務を行い、4回合計8時間の審理、その後仲裁人間での審議のすえ、合意に至らなければ仲裁判断を下します。決定書を書きあげたり、調査の時間を合わせれば、20時間以上は仲裁人の業務に従事し、報酬は全部で5000円程度であります。しかし、弁護士である以上は社会的正義のために「公益活動」に従事するのは当然だと思いますし、法律専門家のスキルを社会に還元するのは弁護士の職責であると考えております。

また、私は関西の社内弁護士の方々の委員会をとりまとめておりますが、関西の企業内弁護士の方々も、社内で「また弁護士会行くの??」と白い目で見られつつも、公益活動のために一生懸命委員会活動に従事しております。これも弁護士である以上、公益活動は当然のことだという認識のもとであります。東京の大手の法律事務所のHPをみますと、やはり若手の弁護士が公益活動に積極的に従事しておられる様子がうかがわれます。

つまり、貸与制にしてみても、弁護士は日常的に公益活動に従事することはあたりまえ(むしろ義務化されているところが多い)ですから、今の議論を前提とするならば、おそらくほとんどの弁護士が貸与されても返済免除になる、つまり実質的には給費制と変わらないことになるのではないでしょうか。どうも、いまの議論はあまり生産的なものではない、と思うのであります。国民に意見を問うのであれば、こういった実際の弁護士の業務の事情を踏まえたうえで、「弁護士が公益的な仕事をするのは当たり前、かりにお金のない人のために無償で仕事をしても、それでも返済免除は認めない」という方向性が妥当かどうか、という議論をしなければ、さらに将来に問題を残すことになると思うのでありますが。本当に素朴な疑問でありますが、この議論は弁護士の業務の実情を知っている方がどれほどなさっていらっしゃるのか、ちょっとよくわからないのでありますが。。。

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。