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北朝鮮の核問題と国交正常化

 南北首脳会談は、それなりのステップではあったと思いますが、「完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島の実現」という言葉の裏には非常に大きな困難がある事を忘れてはなりません。

 これは何を意味しているかと言うと、「在韓米軍が持っている核兵器も韓国から除去すべし。」という事を意味します。そうすると難しい点が出て来ます。まず、どちらが先にやるかです。北朝鮮は「行動対行動」の原則については、「行動を起こす時は同時でなくてはならない。」と常に主張します。

 つまり、北朝鮮と在韓米軍の行動が同時に行われる事を求めてくるでしょう。ただ、これは双方の行動が検証可能な状況下になければ、結局は「本当に同時に行動を起こしたのか。」が分かりません。

 えてして、「後だしじゃんけん」のような状態になりかねません。しかも、「北朝鮮の何と在韓米軍の何が同等の核廃棄なのか。」という事も難しいです。北朝鮮がどの程度の核施設と核兵器を持っているのかは大まかにしか分かりません。

 北朝鮮は、「核放棄については、同等の行動を同時に起こす」というかねてからの要求をしてくるでしょう。それは可能なのか、在韓米軍はそれを受けるのか、そもそも、それを受けて良いのか、という根本的な問が出てくるはずです。

 プンゲリの核実験施設廃棄で前向きな行動を起こしているように見えるかもしれませんが、プンゲリは6回の核実験でもう地形が崩壊する寸前ともいわれていますし、放射能汚染もかなりヒドいでしょう。

 「もう使えない実験施設を使わない事にした。」という事であれば、単なる空振り案件に過ぎなくなります。空振り案件に対して、「在韓米軍も行動を示せ。」と言ってくる可能性とて大いにあるでしょう。

 そして、北朝鮮は核のない朝鮮半島を本当に志向するのであれば体制保証を要求するでしょう。この点については、リビアのカッザーフィーが核を放棄したら、その後アラブの春で潰れて行った事との対比を北朝鮮は念頭に置いているようです。

 ただ、リビアのケースとは違って、北朝鮮の背後には中国、ロシアが居ますから、さすがにアメリカが一か国で体制転覆に突き進めるとも思えません。私は「そこまで北朝鮮指導層は懸念する必要はないのではないか。」と思うのですが、北朝鮮側が現在、どういう認識で居るのかはよく調査、研究しておく必要があります(えてして、我々が思ってもいない事を思っていると、北朝鮮側が思っている可能性はありますから。)。

 そして、日本が気にしなくてはならないのは、仮に完全な非核化が実現し、ICBMも放棄する場合、残るのは中距離、短距離のミサイルです。それを打つ可能性があるのは対日本だけでしょう。

 南北⇒米朝のユーフォリアの中で、北朝鮮は離間策を練ってくるような気がします。休戦協定⇒平和協定のプロセスは南北米中で進んでいくとの内容が板門店宣言にありました。日本は「仮にあなた達が折り合ったとしても、我々には譲れないものがある。」と言い続ける胆力が求められてくるかもしれません。

 そして、日朝ですがミサイル、拉致の問題を外す事は出来ません。更には、その後に来る日朝国交正常化の際には幾つか留意すべき点があります。比較的マグニチュードが小さいもので言うと、「KEDOで日本が被った損害の扱い」、「かつて貸し付けたコメの代金支払い(農水省の特別会計に資産として計上してある)」みたいなものがあります。マグニチュードが小さいと言っても、1000億円を超える金額ですけど。

 大きな話になってくると、「国交正常化の時に行う経済協力の水準」が出てくるでしょう。日韓の間では財産、請求権の問題を解決して経済協力を行う形でしたが、北朝鮮との間でその時の枠組みを超える形で合意する事は基本的にできないと思います。

 しかしながら、1990年の金丸訪朝団で朝鮮労働党、自民党、社会党の3党は、先の大戦後45年の償いについて合意しています。北朝鮮は、国交正常化プロセスの中で恐らくこの話を蒸し返してくるのではないかと懸念しています。到底受け入れられない話ですが、今後のプロセスに結構重く乗ってくるかもしれません。

 今後、気を付けなくてはならないのは、「功を焦らない」という事です。北朝鮮は日本の内政をとても良く見ています。内政で支持率回復を目指すための外交だと見られた瞬間に、足元を見て、色々なものの値がとても吊り上がります。

 官邸の奥から「カネに糸目をつけないから、何とかしろ」という声が聞こえてきそうな御時勢ですから、とても気になります。「選挙に勝ちたいんでしょ、これくらい安いものじゃないですか。」、先方からそんな囁きが出てきても不思議ではありません。

 ちょっと纏まりなく多くの事を書きました。現政権には慎重に、しかし成果の出る形で頑張ってほしいと思います。

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