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米朝首脳会談はトランプ流「一人相撲」になるか―前哨戦としてのイラン核合意の破棄

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  • トランプ政権は米朝首脳会談に先立って、5月12日までに、イラン核合意を見直す見込み

  • 2015年に成立したイラン核合意は、イランに対する制裁の解除と引き換えに、その平和利用目的の核開発を限定的に認めていた

  • イラン核合意が破棄された場合、中東一帯の緊張を高めるだけでなく、北朝鮮にも「大量破壊兵器に関して譲歩しない」というメッセージになる

  • その強気の態度は、北朝鮮に「米国は信用できない」と再認識させ、ただでさえ困難な米朝首脳会談をトランプ氏の一人相撲にしかねない

 4月28日、トランプ大統領は米朝首脳会談の候補地をモンゴルとシンガポールの2ヵ所に絞ったと発表。その前日の南北首脳会談を受けて、6月初旬までに開催される予定の米朝首脳会談に向けての動きが本格化しました。

 これと並行して、米朝首脳会談の前哨戦は既に始まっています。

 トランプ大統領は5月12日までに、2015年のイラン核合意の破棄を決定するとみられています。この合意はイランに対する制裁を解除する代わりに、その核開発を制限するものです。

 トランプ政権はイランが合意に反して核武装を目指していると主張しています。イラン核合意が破棄されれば、中東の緊張が高まることはもちろん、大量破壊兵器の問題で強いメッセージになるだけに、米朝首脳会談の行方を左右しかねません。そのため、北朝鮮政府もこれを注視しているとみられます。

米国からみた北朝鮮とイラン

 北朝鮮とイランは、いずれも米国と対立してきました。しかし、米国からみた両国の位置づけは、やや異なります。

 新たに国務長官に就任したポンぺオ氏は非核化で譲歩しないと強調する一方、「北朝鮮に体制転換(レジーム・チェンジ)を求めない」と明言。これに対して、(2003年のイラク侵攻を主導した)ボルトン大統領補佐官はイランの体制転換にまで言及しています。ここからは、北朝鮮よりイランに厳しいトランプ政権の態度が浮かび上がります

 米国にとって北朝鮮は、米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)を既に保有している点で、より直接的な脅威です。ただし、核・ミサイルを除けばその影響力は北東アジアでも限定的であるため、トランプ政権は「大量破壊兵器さえもたなければ金正恩体制を認めてもよい」という立場なのです。

 これに対して、イランとの対立はもう少し複雑です

 イランはまだ核弾頭も米国を直接攻撃できるミサイルも保有していません。しかし、ハマスやヒズボラなど中東各地の反イスラエル過激派組織を支援し、シリア内戦でも米国と対峙してきた、米国にとって「目の上のたんこぶ」です。さらに、イランは世界屈指の産油国で、米国は1979年のイスラーム革命以前にはその油田開発の多くを握っていましたが、現体制のもとで排除されてきた経緯があります。

 そのため、トランプ政権にはイランの現体制そのものを問題視する傾向が強く、北朝鮮以上に厳しい対応になりがちなのです。

核合意の見直し圧力

 問題となっている核合意は、オバマ政権の働きかけにより、2015年にイランと米英仏独ロ中の6ヵ国との間で結ばれたものです。この合意はイランの核開発計画の全面的な放棄を定めたものではなく、その平和利用を限定的に認めるもので、これに基づき国際原子力機関(IAEA)の査察が行われてきました。

 ところが、イランと敵対するイスラエルやサウジアラビアはこの合意に強く反発。イスラエル政府はイランの核施設に対する空爆の可能性を示唆しており、サウジのサルマン皇太子は「イランが核武装するならサウジもそうする」と警告しています。

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 これと並行して、2016年の大統領選挙期間中からトランプ氏はイラン核合意の見直しを主張してきました。

 オバマ氏と対照的にイスラエルやサウジアラビアとの伝統的な同盟関係を重視し、イランを敵視するトランプ氏は今年1月、ヨーロッパ諸国や米下院に対して、5月12日までにイランにより強硬な制裁を実施するかの判断を要求。その後、ポンぺオ国務長官やボルトン大統領補佐官など、反イラン色の強い強硬派が相次いで指名されたことで、イラン核合意の破棄が現実味を帯び始めたのです。

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