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竹熊健太郎著『フリーランス、40歳の壁 自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?』を読んで感じた絶望と希望について

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編集家・フリーライターの竹熊健太郎氏(1960年生まれ)といえば、『サルでも描けるまんが教室』等のヒットで知られる異才であり、1973年生まれの私が大学生だった1990年代前~中盤、陳腐な言い方をすれば、「今をときめくモノカキ」的位置づけの人物でした。現在は無料Web漫画雑誌「電脳マヴォ」の編集長を務めています。そんな同氏に深く共感したのが、2014年10月に見た以下のツイートです。

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〈「サブカルは40歳越えたら鬱になる」というのは正確でない。「自由業は40歳越えたら鬱になる」が正しいと思う。この辺りからだんだん仕事が減るからだが、なんで減るかというと、仕事を発注してくる社員編集者が、だんだん自分より歳下になるからである。〉
これは当時かなりRTされ話題になっていたので私も見ましたが、このツイートに端を発し連投される一連の自由業(フリーランス、そして主に文筆業について)に関する考察がまさに「我が意を得たり!」という感じがありました。私はこの時41歳2ヶ月で、「鬱」とまでは言いませんが、確実に自分の業務領域はこのままでは減っていくであろう感覚は抱いておりました。

というのも、私のようなウェブメディアの編集者・フリーライターというものは、日に日に参加人数が増えており、さらには2014年当時はキュレーションメディアの勃興もありクラウドソーシング系の激安ライター需要が増加している時期にあたっていたからです。

「どんなにコピペパクリクソ原稿であろうとも、バキバキのSEO対策施したサイトに掲載されれば1PVとしての価値は大先生の原稿と等価」--こうした状況をモノカキ界隈が受け入れざるを得ないな、ケッ、みたいな状況でした。だからこそ私も竹熊氏のこのツイートに首肯するしかなかったのです。

また、私自身2000年代前半、20代後半の頃に雑誌のライターをしていたのですが、同世代の人々が廃業したり実家を継いだりするのを見聞きしてきて「そんなに長くできるものでもないな」と思ってきましたし、31歳を超えたあたりから途端に自分よりも若い編集者が出てきて明らかに仕事が減ったことを実感しました。

それまでは「中川君」と小僧扱いをされ、言えば何でもやるしライターの業務範疇外の小間使いのようなことまで唯唯諾諾とやっていた私。新聞社に写真を買いに行くし、弁当を買いに行くこともあるし、深夜に酔っ払った編集者から呼び出しをくらったらすぐに行くし、早朝に「引っ越しするからお前手伝え。今トラックが来ているけど」と言われたら豪雨の中自転車に乗って彼の家まで行ったりしたものです。こんな「小僧プレイ」をしていると年上の編集者から可愛がられ、仕事がもらえたのですがこの人達が異動したり、現場を離れたりするとどうなるか。

仕事がなくなるのですね。当時、編集者は自分のチームを作っているようなところがありました。山田という編集者がいた場合「チーム山田」を結成し、山田の下にフリーライターAとBとCがいる。Aは音楽ネタに詳しくBはCMネタに詳しく、Cはアイドルに詳しい、といった感じです。ここでは私が「B」ですが、山田編集者は我々3人の中で誰が一番「使える」かを考えAとCがいかに優秀かをこれ見よがしに私に言ってきます。恐らく他の2人にも同様のことを言い、発奮させていたのではないでしょうか。

そして山田編集者は編集部で私のことを他の編集者に紹介しようとしない。完全に自分の支配下に置き、自分が仕事を頼みたい時に「いやぁ、吉田さんの仕事でパッツンパッツンなんですよ! 今回山田さんの仕事は無理っす!」と言われるのを回避していたものと考えられます。

◆自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?

ここから考えるとフリーライターという仕事はよほどの才能と特化した専門分野、これぞ! という能力がない限りは結局「使い勝手がいい」「従順である」ということが仕事を得るにあたっては重要になるといえましょう。そしてこの2つの要素をまとめてしまえば「若い」ということに尽きるのです。だからこそ私は竹熊氏のツイートに共感しましたし、もう一つ言うと「竹熊さん程の人物であってもこんなこと思っていたのか!」という驚きもありました。

さて、この一連のツイートを発端に生まれたのが2018年4月18日に発売された『フリーランス、40歳の壁 自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?』(ダイヤモンド社、1400円+税)です。この本を44歳自由業の私は希望を得るために読み始めたのですが、「序章」「第1章」までは共感し、「第2章」からは絶望の連続となってしまったのです。

フリーランス、40歳の壁――自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?
フリーランス、40歳の壁――自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか? [単行本(ソフトカバー)]
竹熊 健太郎
ダイヤモンド社
2018-04-19

序章では「あるある!」みたいに軽い気持ちで読んでいました。それは以下のような記述についてです。
〈自由業は本当に自由なのでしょうか。自由なところも勿論あります。労働時間が自分で調節できることです。そもそも「朝、起きるのが嫌だ」「通勤ラッシュに揉まれるのが嫌だ」という中学生のような理由でフリー生活を選ぶ人間も多いのです。私がそれです。〉
また、第1章では竹熊氏のフリーランスとしての歩みを紹介しつつ、どんな人に仕事が集まるのか、といった話にもなります。これも完全同意です。55歳ぐらいの無名のプロカメラマンBさんになぜか仕事がいつも来る理由についてです。Bさんは特にすごい才能や特技があるというわけではなく、言われたことをこなすカメラマンですが、若い編集者ともなぜか仕事をしています。
〈それでもBさんに仕事が来ていたのはなぜでしょうか。それはその雑誌の編集長、またはその上に出世している出版局長などと若い頃一緒に仕事をしていて、お友達だったからです〉
さらにこんな指摘もします。
〈業界で長くフリーとして仕事ができる人は、ほぼ、次のどちらかです。【1】特別な才能(または専門領域)を持っていて、余人をもって代えがたい「先生」になっている人。【2】キャリアがあって、出版社の偉い人とお友達である〉
今はウェブメディア隆盛になっており、イケてるライターは記事に顔出しで登場したりSNSで自分の記事を告知するなど、上記の指摘が完全に当てはまるわけではないでしょう。ただ、出版業界中心にやってきたフリーランスは完全にこの2つの法則が当てはまると思います。

これが1章までの話なのですが、なぜ2章以降私は絶望してしまったか--。

それは、登場する人物があまりにもダイナミックかつ豪快かつ優秀な人々ばかりだからです。竹熊氏が知り合いに話を聞くのですが、ラインナップがすごい!

・とみさわ昭仁(古書店経営、ライターなど。元々ゲームのシナリオなども書いていた)
・杉森昌武(出版プロデュース等。シリーズ320万部『磯野家の謎』などを作る)
・田中圭一(『うつヌケ』著者、漫画家キャリア30年にしてサラリーマンも常にやる)
・FROGMAN(『秘密結社 鷹の爪』作者、DLE取締役)
・都築響一(編集者、『TOKYO STYLE』等著者、メルマガ『ROADSIDERS' weekly』発行)

現在47歳のFROGMAN氏を除き、50代後半~60代前半の人々が並びますが皆現役です。山あり谷ありの自由業人生を皆さん送ってきたのですが、とにかくエピソードが豪快! まさにバブル期の世間全般の好景気に始まり、1997年をピークとして雑誌の黄金時代を駆け抜けてきた人々の成功と時々の失敗が次々と描かれるわけです。

◆ウェブ活用のヒントを得たい人へ…

具体的エピソードは本書を読んでの驚きとしていただきたいので書きませんが、私が出版業界に入った2001年はすでに書籍・雑誌の発行部数は右肩下がりになっていました。だからこそ、上記の人々が大ヒットを生み出したという話については羨望の眼差しで見てしまいますし、己の才能との差を感じ、「はぁ……オレの人生、こんなダイナミックじゃねぇ……」とため息をついてしまうのでした。さらに現在でも皆さん仕事をこなすほか、新しい仕組みを生み出そうとしている。到底自分にはできないことを次々とやってしまえる才能を突き付けられることこそ、本書がもたらす「絶望」です。

というか、他人の実績を次々と聞き出してはいるが、竹熊氏自身だって『サルまん』に始まり、『色単』『箆棒な人々』など話題&ヒット作を次々と出した人物じゃないか! 大学教授にもなった人物でもあるぞ! おいおい、(竹熊氏が主人公である)1章までは「共感」と書いたけど、いや、それも違うぞ! と思うのでした。とはいっても同氏は様々な紆余曲折もあるので、その部分もキチンと本書では読んでいただきたい。竹熊氏は現在、無料Web漫画雑誌「電脳マヴォ」編集長・経営者としてネットで漫画を読むにあたってのプラットフォームを作り、新たな才能をいかに発掘するか、という取り組みをしています。

どうです? 本書を「40歳過ぎてもフリーでやっていくってどういうことなんだー! ノウハウを教えてくれ!」という人を救済する本だと思っていた人からすれば、本書の内容は「オレを絶望させやがって!」となるかもしれない。

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