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歴史的な南北会談のカヤの外でただ見守るしかない安倍政権

 歴史が大きく動く瞬間を目撃したような気がしました。新たに開かれた扉が、朝鮮半島の平和に結びつくことを祈りたいと思います。

 その可能性を世界中の人々に確信させるに足る南北首脳会談でした。この動きが米朝首脳会談の成功へと引き継がれることを期待したいものです。

 昨日、南北の軍事境界線をまたぐ板門店で、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は11年ぶりの首脳会談を行い、朝鮮半島の「完全な非核化」実現を目標に掲げた「朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言」に署名しました。1953年7月から休戦状態にある朝鮮戦争を年内に終わらせる意思も確認し、文大統領が今年の秋に平壌を訪問することでも合意しました。

 南北首脳による会談は3回目で、北朝鮮の指導者が韓国側に入ったのは史上初めてになります。会談は板門店の韓国側の施設「平和の家」などで行われ、宣言に署名した後、両首脳は共同発表しましたが、金委員長にとっては西側メディアの前で初めての記者発表になりました。

 会談では朝鮮半島の非核化、恒久的な平和の定着、南北関係の進展が主な議題になり、最大の焦点である非核化について、宣言は「南北は完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した」と明記しました。ただ「完全な非核化」の具体策やその手法、期間は記されず、金委員長は非核化や対米関係などに一切言及しませんでした。

 この会談と共同宣言については様々な評価が可能ですし、それがどこまで実効性があるのか、北朝鮮が誠実に順守するのか、疑問視する意見も根強くあります。しかし、これまでの敵対関係から抜け出す第一歩として歓迎し、朝鮮半島の平和と非核化、南北の統一に向けて前進する出発点になってもらいたいと思います。

 この首脳会談と宣言の合意によって、少なくとも第2次朝鮮戦争の危機が遠のいたことは明らかです。南北間の対話と交渉が続く限り、軍事的なオプションが選択肢に上ることはないでしょう。

 朝鮮半島の非核化や南北間の交流、統一に向けての動きが始まることも確実です。朝鮮戦争の終結によって平和構築に向けての新たな可能性も生まれてきています。

 このような歴史的な南北会談の開催と成功に関して、日本政府は「対話ではなく圧力を」と特異な主張を繰り返すだけで、背極的な役割を果たすことができなかったのはまことに残念です。日本政府は文大統領に拉致問題を取り上げるように頼んだだけで、指をくわえて事態の推移を見ているだけでした。

 戦前、朝鮮半島を植民地支配していた日本としては、南北の分断に対しても責任があり第3者というわけではありません。南北間の和解を仲介し、統一に向けての動きを支援する歴史的な責任があるのではないでしょうか。

 しかも、憲法9条には戦争や武力の行使だけでなく武力による威嚇も、国際紛争を解決する手段としては放棄すると書かれていますから、安倍首相は戦争や武力による威嚇に反対し、対話や交渉によって南北間の対立や紛争を解決するべき立場にありました。しかし、北朝鮮危機に際して、安倍首相はこのような立場に立つことができず、今回の南北対話に際しても第3者的立場をとり続けています。

 一部の報道では、北朝鮮との日朝首脳会談の可能性を打診した安倍政権に対し、北朝鮮当局が「一切取り合うな」との指示を出していたとされています。南北首脳会談と米朝首脳会談など、国際的対話の枠外に置かれる安倍政権は当面、北との対話の契機をつかめないまま孤立を深めることになるという見方がもっぱらです。

 平昌冬季五輪の開会式に出席した安倍首相は、北朝鮮代表団の金永南最高人民会議常任委員長との立ち話で「平壌宣言と(拉致被害者らの再調査を約束した)日朝ストックホルム合意に立ち戻ろう」と呼びかけました。これに対して金議長は「謝罪と賠償が先」と取り合わなかったといいます。

 拉致問題についても、安倍首相は日米首脳会談や文大統領との電話会談で拉致問題を取り上げるよう要請し、いずれも快諾を得たとされています。しかし、今回の南北会談で話題になった形跡はなく、合意された宣言にも記載されていません。

 南北関係の改善と緊張緩和の促進によって、安倍首相は北朝鮮の核やミサイル発射を口実に危機を煽ることができなくなりました。このような事態の急変を、心の中でどう思っているのでしょうか。

 日本周辺の安全保障環境は急速に改善されようとしています。安倍首相によって推進されてきた軍事力増強政策の根拠は、今や音を立てて崩れ去ろうとしていると言うべきでしょう。

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