記事

"温かい牛乳を飲むと熟睡できる"は本当か

1/2
あなたの睡眠は医学的に正しいものだろうか。たとえば「寝る前にホットミルクを飲むとよく眠れる」といった話は本当なのか。「寝不足」は体に悪いのか。一方で「寝過ぎ」はどうなのか。最新の医学論文をふまえ、臨床の最前線とオンライン健康相談の両方で活躍する医師が解説する――。

画像を見る

■年々減少している日本人の睡眠時間

「自分は良い睡眠を取っている」と自信を持って言える人は、どのくらいいるのでしょうか。成人の睡眠の推奨ラインとされる7時間以上の睡眠(※1)を取れていない方は年々増加傾向にあり、厚生労働省の調査では約7割の方が7時間未満の睡眠でした(※2)。睡眠時間を増やせればいちばん良いのですが、やらなければならない日中の仕事やストレスに備えるため、短い時間でもよりよい睡眠を取りたい、と思われる方が多いかと思います。

オンライン健康相談「first call」でも、睡眠に関する相談がたくさん寄せられます。例えばこんな相談をよくいただきます。

「睡眠不足で、仕事中に集中力が維持できなくなりつつあり困っています。なかなか寝付けません。薬などにはなるべく頼りたくないのですが、簡単にできることはないでしょうか?」(30代、男性)

「しっかり眠れなくて困っています。帰宅は早くて20時、遅いと日を超えます。朝は早いので、うまく睡眠を取りたいと思っています。眠りについてのアドバイスをお願いします。」(30代、男性)

多くの働く方が、仕事のパフォーマンスへの睡眠の影響に悩まれており、薬に頼らずに何か日常的に対処できる方法を求めておられることを実感します。

そんな眠りに関して、「寝る前にホットミルクを飲むとよく眠れる」という話を耳にします。みなさんも聞いたことあるのではないでしょうか。

そこで今回は、ホットミルクが本当に睡眠に効果があるのか、を検証します。

■「牛乳が睡眠の質を上げる」は本当か

1934年のある論文の中に、「コーンフレークと牛乳を食べることで、夜中に目が覚めることを減らせるかもしれない」という記載があります(※3)。この論文が発端かはわかりませんが、「眠れないときには牛乳を飲むと良い」という話が広く広まっているようです。実際に聞いたことがある方も多いのではないのでしょうか。

画像を見る
写真=iStock.com/kazoka30

では、本当に牛乳は睡眠の質を上げるのでしょうか? これまでの医学から言える結論は、「半分合っているけれど、半分間違っている」です。

70人の成人に8週間続けて、寝る前に500mlの牛乳を飲んでもらったという、フィンランドで行われた研究(※4)があります(毎日寝る前に500mlの牛乳を飲むのはかなりつらいと思うのですが、それでも飲んでもらったようです)。その結果はなんと、毎日の努力もむなしく、牛乳を飲むことと睡眠の質との間には関連性がない、というものでした。

しかし、牛乳をある牛乳に変えたところ、「睡眠の質が高まり、夜中に目覚める回数も減った」という結果が出ました。そのある牛乳とは、「夜にとれた牛乳」です。

先ほどの70人に、今度は夜にとれた牛乳を毎日500ml飲んでもらいました(この方たちは合計16週間も毎日500mlの牛乳を寝る前に飲んだということになります。ものすごい研究です)。すると、「睡眠の質が高まった」「夜間起きる回数が減った」と感じた方の割合が、有意に多くなったのです。

■夜にとれた牛乳が、睡眠の質を上げるカラクリ

では、なぜ夜にとれた牛乳は睡眠の質を上げたのでしょうか。

その答えは、牛乳に含まれる「トリプトファン」と「メラトニン」という物質にあります。トリプトファンもメラトニンも、睡眠の質を上げる作用がある物質で、医薬品などにも応用されています。牛乳が睡眠の質を上げる可能性があるのは、これらが含まれているためと考えられています。

しかし、これらの物質の濃度は、昼に取れた牛乳と、夜に取れた牛乳とで大きく異なります。ある研究によると、夜にとれた牛乳は昼にとれた牛乳よりもトリプトファン濃度が25%多く、メラトニン濃度はなんと約9.8倍に達することがわかったのです(※5)
実際に動物を使った実験でも、昼間にとれた牛乳を飲ませた場合には血中のメラトニン濃度は上がらなかったものの、夜間にとれた牛乳ではメラトニン濃度が上昇していることが確認されました(※6)

とはいえ、牛の搾乳は、昼夜を問わず行われていることが多いようです。そのため、市販されている牛乳が夜にとれたものか、昼にとれたものかはわかりません。目の前のパックに含まれた牛乳が、夜にとれた牛乳であれば、寝る前に飲むことで睡眠の質を上げられるかもしれませんが、完全に運任せになってしまいますね……。

運に頼らずとも睡眠に効果のあるものとして、キウイやさくらんぼを寝る前に摂取することで、寝付きが良くなったり、睡眠の質を上げたりする効果があるという研究が行われています(※7、※8)。これは、キウイに含まれるセロトニンという物質や、さくらんぼに含まれるトリプトファンやメラトニンが効果を発揮していると考えられています。

逆に、睡眠の質を下げてしまうものとしては、アルコール、カフェインなどがよく知られているところかと思います。

あわせて読みたい

「健康」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    小池知事は検査数少なさ説明せよ

    大串博志

  2. 2

    官邸の思い付きで日本は大混乱に

    篠原孝

  3. 3

    自粛ムダに…百貨店へ並ぶ高齢者

    佐々木康彦 / ITmedia オルタナティブ・ブログ

  4. 4

    岩田医師 東京都は血清検査せよ

    岩田健太郎

  5. 5

    自粛要請も休業判断は店任せの謎

    内藤忍

  6. 6

    中国のコロナ感染「第2波」懸念

    ロイター

  7. 7

    布マスク普及呼びかけに医師指摘

    名取宏(なとろむ)

  8. 8

    韓国がコロナ詳報を公開する背景

    WEDGE Infinity

  9. 9

    ロックダウン=都市封鎖は誤訳?

    かさこ

  10. 10

    ロックダウン寸前 法改正が急務

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。