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- 2018年04月27日 08:29
CMで大活躍!千鳥ノブの「大(おお)◯◯」は「クセがすごいんじゃ」に続くキラーフレーズになれるか
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BLOGOS編集部
2ヶ月ほど前だろうか、週末午後にテレビで流れていたCMに「あら?」と意表を突かれた。続けて流れた2本のCMに同じタレントが出演していたからだ。同じスポンサーのCMがリフレインされたわけではない。別々のスポンサーによるCMでだ。
それがCM女王と言われるランクの人気女優、例えば綾瀬はるかあたりなら珍しいことではない。連ドラの主演でもしていれば、CMゾーンで別スポンサーのCMが続くこともよくある例だ。だが、そういう条件下とは何も関わらない場で出くわした2本のCMだったので、忘れ難い印象となった。まず始めに流れたのは次のCMだ。
< スマートニュース クーペン編 >このあとに続いたのが次のCMだった。
NA「スマートニュース」
~車中後部座席に千鳥大吾とノブ~
ノブ「腹へったなぁ」
大悟「(スマホを手に)このスマニューのクーペンから選べよ」
ノブ「なんやクーペンって、クーポンやろ」
大悟「見てみいズラーッとクーペン並んどるじゃろこのクーペンの中から好きなクーペン選べ」
ノブ「クーペンが気になる!」
大悟「ウウ~ン」
大悟・ノブNA「スマートニュース 今すぐダウンロード」
< P&G 車のファブリーズ編 >
妹「(車中にイヤな臭気が漂っている)わ、この匂い!(ドアを閉めて)」
兄「絶対酔う!(怒)」
母(小西真奈美)「芳香剤つけるから♡」
父(千鳥ノブ)「え? (モノローグになって)芳香剤の匂いもキツイ~」
NA「ファブリーズ無香タイプは車の匂いを無臭化 (兄妹、車中の匂いを心地よく吸う)車のファブリーズ」
父「(快適な笑顔で)はぁ~」
ノブの「下からツッコミ」がマスに刺さった

BLOGOS編集部
のだが、テレビを眺めていてCMでノブ連打という、その現実に追いついていない自分がいた。確かに千鳥は人気で、ノブは「クセがすごい」がヒットフレーズとなり、千鳥の人気上昇をもたらすシンボリックな要素にもなっていたが、CM需要でノブが相方の大悟より半歩先を行く現実に「そうか、ノブなんだ・・・」と広告業界から教えられたような気分だった。
ノブを見つめ直してみる。ノブはツッコミ百花繚乱の時代に、「怒」「間」「鋭」「妙」「語彙」「例え」など、様々なツッコミのスペシャリストが群雄割拠している中、ツッコミに必要なそれらの要素を持ち合わせた上で、彼らとは異なるスペックを携えていて、それがノブのノブたる磁力になっている。
そのスペックを言葉にするなら「願」か。大悟ののらりくらりとした掴みどころのない脱線を止めるために、(上記の各種スペックも踏まえた上で)切実な懇願が大悟にぶつけられる。見渡せば、ツッコミを担う人々の多くがそれが至極当然であるかのように、ボケを「上から制する型」を用いているが、ノブは「頼むからちゃんとしてくれい」という感じで、ボケを「下から願い出て制する型」を頻用している。
そしてノブは岡山弁の「~じゃ」という語尾を多用する。これは、「むかーしむかしのことじゃった」という昔話の語り部(要するに「まんが日本昔ばなし」の常田富士夫なのだけど)を匂わせ、仙人、正直爺さん、ご隠居、村長(むらおさ)、村人・・・そんな民話に登場する素朴な人物たちを思わせる。
となると千鳥の漫才というのは、村に降りかかった災厄(大悟のボケ)を、村の民衆が願掛け祈祷お祓い(ノブのツッコミ)で鎮める、「まんが日本昔ばなし」と言えるかもしれない。
ノブのツッコミが「下から願い出る型」だとしたが、ツッコミには「上から下へ」と「下から上へ」という、投球フォームならばオーバースローとアンダースローのような違いがあって、このアンダースローのフォームを用いるツッコミはかなり少数派だ。
だが、最近では男女コンビの「にゃんこスター」や「パーパー」がこのアンダースローのフォームを採っていて、こういう文脈に世相をこじつけると、にわかに「評」っぽくなってそれらしく聞こえてくるという類例で記すが、「ハラスメントを避ける、クレーマーを避ける、炎上を避ける・・・そんなトラブル回避に気ぜわしく配慮しなければならない現代を、彼らのようなお笑いにおけるツッコミのアンダースロー型が映し出しているのかもしれない」・・・「評」終了。
意義深かったノブの「オードリー論」

BLOGOS編集部
<2018年4月21日(土) オードリーのオールナイトニッポン >ノブによるオードリー論だ。このくだりはさらに、若林が春日のキャラをすべて操っているのだと思い込んでいたが、実は春日が大阪の大喜利イベントで秀逸な回答を連発していた実力者だと後日知り、春日が実力を備えた上での、あの目を引く「ピンクアンドロイド」のキャラだったのかと、ノブがオードリーを再認識した話に至る。
若林「2008年なんですよ、僕らM‐1の決勝が。(略)それを見たときに、率直に、ノブさんどう思ったんですか俺たちのこと」
春日「そのとき大阪?」
ノブ「大阪。これはほんとに面白いと思った。ネタは面白いと思ったけど・・・そのう、春日そんときもう着てたよなピンク?」
春日「着てます着てます。ああいうのは今も、見た目はそう変わってないですね」
ノブ「ようやるなあと思った」
若林「あははははは!」
ノブ「みんな当たり前なんやけど、これ一時期な、大阪でめっちゃその話になったのよ。オードリー論みたいな話」
若林「オードリー論? ちょっとこわいすね聴くの」
ノブ「ぜんぜん、いい意味。オードリーってホント東京でやり出して良かったよなーっていうか、勝手に俺らが言ってんねんで、面白いよなーも含めて」
若林「はいはいはい」
ノブ「若林もネタをちゃんとしてるし、で、春日なんやけど、それやっぱピンク着て、あの感じでトゥースって出てきて、我が輩は~とか」
若林「あははははは」
春日「我が輩は言わないです。(それはデーモン)小暮さん! 我が輩はなんて言わないです。私です」
ノブ「わたし? そうそうそう、トゥースとかね。あれは大阪じゃ、たぶん、なんやろな、面白くないやつ、みたいに、あの、思われるというか」
若林「ああー、なるほど」
ノブ「たぶん手見せ(ネタ見せ)とかで受からないタイプなのよ」
若林「あああ、まず受からない」
春日「へえ~、奇抜すぎて?」
ノブ「一発屋キャラみたいな。でも、ちゃんと面白いやん。春日ちゃんも若林も」
春日「春日ちゃん・・・春日ちゃんって呼んでくれるのノブさんと徳光(和夫)さんだけ」
若林「でも誰かに、吉本の先輩に、ルミネで、それ(キャラものを)やり始める時期あるじゃないですか。僕らも普通にスーツとかでやってた時期ありますけどね。だって(漫才の登場で春日が)ゆっくり出てくるの、もし吉本で東京でやり始めたら、ルミネの楽屋でもう色んないじられ方して」
ノブ「そうそうそう」
若林「(いずれピンクのベストは)脱いでたと思う、って(吉本の先輩に)言われたことあります」
ノブ「ほんとそう。いるのよ大阪でも。でもそれ俺ら大きな間違いで、大阪勢、オードリー論を喋ってたやつらが全員間違えてて」
若林「あはははは」
春日「そんなことある?」
若林「そんなことあるんすか」
ノブ「結局そうよ、俺らもストロングスタイルみたいな顔して、さあ第二のダウンタウンだみたいな顔してな、ぶっきらぼうに、あのよう~とか、変なボケ、なんか時事ネタとか入れませんよ、ストロングなネタですみたいなことやってたけど、今、東京での俺ら見てみい、大方言(おおほうげん)よ!」
春日「(爆笑)」
ノブ「大方言(おおほうげん)、やめてくれい~、わしはノブじゃ~」
若林「あははははは」
ノブ「結局な、最初のフックというかパンチというか・・・(そういうものが必要だってことを受け入れず、いきがっていた)」
漫才の同業者として、大阪視点の異業者として、ノブが語ったオードリー論はなるほどと頷けることが多く、意義深い語りだった。
が、このオードリー論に頷きながら、それ以上に気にかかって耳に残ったのが「大方言(おおほうげん)」というフレーズだった。なんだ、この「大方言」という耳慣れない「大(おお)」は? それから番組中にノブはこの「大(おお)〇〇」という表現をさらにいくつか繰り出した。
- 松田健次
- 放送作家。落語会の企画制作も手がける。
1966年生 著書に「テレビの笑いをすべて記憶にとどめたい」「落語を聴くなら春風亭昇太を聴こう」「F(エフ)」。らくご@座(あっとざ)の名称で落語会の企画制作を手掛ける。
らくご@座:http://rakugo-atto-za.jp/
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