- 2010年07月25日 01:52
産地偽装事件における「お詫びリコール」のあり方を考える
うなぎ、お米など、ふたたび食品偽装事件が新聞に登場しておりますが、理研ビタミンさん(東証2部)が販売している「ふえるわかめちゃん」について、商品には国産(鳴門産)と表示されているにもかかわらず、実は中国産の疑いがあることが発覚した、との報道がなされております(毎日新聞ニュースはこちら)。そこで同社は、商品を既に購入した消費者から、その販売商品を回収することを決定されたそうであります(理研ビタミンさん「弊社一部受託商品の自主回収について」 )。なお自社調査によりますと、鳴門産わかめの原料の一部納入業者から産地証明がとれない、とのこと。理研ビタミンさんとしては、商品の安全性にはなんら問題はないものの、産地偽装(JAS法違反)の疑いがあるものとして、該当商品の回収(消費者への代金返還)を行う、とされております。
食品検査機関に情報が寄せられ、これをもとに検査機関が調査したところ産地偽装の疑いが生じ、検査機関より理研ビタミンさんに調査要請がなされたそうですから、発端は関連会社内部からの情報かもしれません。理研ビタミンさんは、本日(7月24日)の各新聞朝刊に「お詫びとお知らせ」なる公告を出しておられます。日経新聞朝刊に掲載されていた「お詫び」を閲覧いたしましたが、商品および受託商品の特定(どの商品を指しているのか、なぜその商品だけが回収の対象となるのか)、商品回収手続きなども明確に表示されており、産地偽装事件に関与せざるをえなくなった企業として、真摯に危機対応に努めておられる様子がうかがわれます。
本来、リコールには強制リコール(法令に基づいて製品回収等が求められているもの)と、自主リコール(法の定めはないが、消費者の生命・身体・財産等への損害拡大のおそれがあるために、自主的に製品回収を行うもの)がありますが、本件のようにどちらにも属さない「お詫びリコール」が近年は増加傾向にあり、BtoC企業におけるコンプライアンス経営のひとつと言われております。理研ビタミンさんの販売する商品の場合も、自らリリースされているように「商品自体の安全性には問題ない」わけであり、また産地偽装の疑いは取引先にあるわけですから、果たして商品回収まで行う必要があるのかどうかは、議論の余地がありそうです。とりあえず、国産わかめが使用されているから購入した、という消費者の方々を裏切ったことは間違いないわけですから、これへの謝罪の意味があるのかもしれません。
しかし、新聞公告や理研ビタミンさんのWEBサイトの広報をきちんと読んだところ、消費者の手元にある商品の回収、返金については明示されていても、市場に流通している商品の回収についてはどこにも記載がございません。すでに商品を購入した方々への謝罪の意味はわかるとしても、これから購入するおそれのある消費者に対するメッセージはどこにも見当たらないのであります。数のうえでは、消費者の手元にある(まだ食していない)商品とは比べ物にならないほどの流通途上の商品が市場に出回っているものと思われます。これら流通途上の商品について、理研ビタミンさんは回収したり、注意喚起をしたり、小売業者から消費者へ向けてのメッセージを要求したり、という行動はされないのでしょうか?「お詫びリコール」なるものが、企業のCSRの一貫として消費者の信頼を回復(維持)するために、自主的に行うものであるならば、一番先に行うべきことは「これ以上、産地偽装によって騙される消費者を増やさない」ことであり、すでに購入してしまった方々への代金返還はその次ではないか、と考えるのでありますが、いかがなものでしょうか。
企業不祥事でもっとも企業の信用毀損につながるのが「二次不祥事」であります。たとえば本件でも、取引業者に非がある場合には、これを冷静に伝えることで信用低下は防止できるものと思われます。しかし、一次不祥事への対応を誤ると、そこに消費者に対する企業の「本当の」気持ちが透けてみえる場合があり、これが露呈されて信用を著しく毀損してしまうケースがあります。私の意見はいくつもある答えのうちのひとつ(偏った意見)にすぎないものかもしれません。しかし「お詫びリコール」の際の消費者への対応のベストプラクティスを、こういった機会にこそ一度ゆっくりと考えるべきではないでしょうか。



