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他人が怒られてるのに私が傷つく、ひといちばい敏感な心を持つあなたへ【精神科医が解説】

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 『不登校新聞』にて『ひといちばい敏感な子』(著・エレイン・N・アーロン/翻訳・明橋大二)を紹介したところ、編集部も驚くほど多くの読者から反応があった。その声の多くは「やっと自分がキツかった理由がわかった」というものだった。そこで翻訳した小児科医・明橋大二さんに、よりくわしい解説をうかがった。

――『ひといちばい敏感な子(The Highly Sensitive Child)』(以下、「HSC」)の翻訳本を出すきっかけはなんだったのでしょうか?

 『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』(2000年)という本に出会ったのが始まりでした。「敏感であることで生きづらさを抱えている人たち(The Highly Sensitive Person)」(以下、「HSP」)について、心理学者のエレイン・N・アーロンさんが本にまとめておられたんです。

 私は精神科医として病院で勤務するかたわら、スクールカウンセラーやフリースペースの運営にも携わってきました。その際、ずっと気になっていたのは、いじめや体罰など、はっきりとした理由がないのに、学校に行こうとすると腹痛や頭痛を訴える不登校の子が少なからずいることでした。

 いろいろ調べているうち、アーロンさんが「HSP」の子ども版である「HSC」について本を出されていると知りました。しかしまだ日本では出版されていなかったんです。自分だけではなく、こういう情報を求めている親御さんはきっと多いにちがいない、と思ったのが、翻訳を思い立った経緯です。

外部刺激が“ダメージ”に

――「ひといちばい敏感な子」とは、具体的にどういったケースなのでしょう?

 音やにおいなど、何に敏感かというのは人それぞれです。気圧の変化や空気の汚れに敏感な子もいて、授業が終わると教室の窓を全開にしていたという子もいます。他人の気持ちにも敏感です。「クラスメートを叱っている先生の声を聞くのがつらかった」という話をよく聞きます。よく誤解されてしまうのが、「教室内のピリピリした雰囲気がイヤだ」という単純な話ではありません。「HSC」の場合、そうした雰囲気から「ダメージ」を受けてしまうと考えていただくとイメージしやすいかと思います。

――「ダメージ」というのはわかりやすいですね。私が取材するなかでも「教室の音自体がつらかった」という話もよく聞きました。

 一方で、同じ教室にいても、大半の子どもはそうした刺激を何気なくやりすごせるわけです。そうなると、えてして「ガマンが足りない」「心が弱い」といった話になりがちですが、そうではないんです。生まれ持った特性として、外部からの刺激を必要以上に感じとってしまい、その結果として「ダメージ」を負ってしまうというわけです。

 そもそも「HSC」にとって、学校ほど過酷な社会はありません。大人であれば、対人関係が苦手であったとしても、それをさほど必要としない働き方を選ぶことができます。しかし、学校という場は全員が同じでなければいけないし、同じであることが求められます。そのなかでちょっとでも変わった行動をしようものなら、いじめの対象になってしまうかもしれない。「学校に適応できないなら社会でやっていけないぞ」とよく言われますが、ある意味、社会よりも過酷なのが学校という場所で、そういう集団の苦しさを誰よりもキャッチしてしまうのが「HSC」だと思っています。

 研究によると「HSC」は5人に1人いると言われています。「ダメージ」を受けやすいと聞くと、ネガティブな印象を持たれがちですが、「身に降りかかる危険を即座に感知できる」と捉えるならば、生き物が生存するうえで、欠かすことのできない能力です。

 ところが、最近は「世間の荒波に負けない強さ」を持っていることに価値が置かれる息苦しい時代になってしまった。結果として、「HSC」にとって、非常に生きづらい社会になってしまっているのではないかと思います。

障害でも病気でもない

――一方で、自分の子が「HSC」だとわかったら、当然「どうしたら治るの?」と親は悩むと思います。

 前提として、「HSC」は生まれ持った特性の一つです。病気でも障害でもありません。「黒い目の人がいれば青い目の人もいる」ということとなんら変わりません。だから「HSC」は病名ではないし、治すべきものでもありません。むしろ、ここで問題となるのは、そうした特性をよしとしない社会のまなざしです。

 とはいえ、社会はそんなかんたんに変わるものじゃないし、すこやかに生きてほしいという親御さんの気持ちもわかります。では、どう接したらいいのか。いちばん大切なことは「無理強いをしない」ということです。「HSC」に無理強いをすることは、ときとして暴力的とさえ受け取られかねません。

 ただし、その大前提のうえで、アーロンさんは「背中をそっと押してみること」も大切だと言っています。なんだか矛盾するようにも聞こえますが、その子の特性を理解しつつ、勇気づけをしていくことも大切だということです。「HSC」のなかには、石橋を叩いて叩いて、結局、渡らない子もいます。

 しかし、「必要以上に怖がっているだけで、これはできる」と親が判断できるのであれば、「大丈夫、あなたならできるよ」というアプローチもときにはあっていい、ということです。

 子どもは「みんなと同じように○○したい」という思いも持っています。その気持ちを親が汲み取り、背中を(あくまで控えめに)少し押してみる。もしたまたまできたら、それは子どもの達成感にもつながりますし、でも難しそうなら無理強いはしない、ということです。

――「HSC」に該当するか否かについては23項目に及ぶチェックリストがあるんですね。

 やはりこれがいちばんわかりやすいと思います。アーロンさんはこれに加えて、「DOES」という4つの特徴を重視しています。「DOES」とは「D(深く処理する」「O(過剰に刺激を受けやすい)」「E(全体的に感情の反応が強く、とくに共感能力が高い)」「S(ささいな刺激を察知する)」のそれぞれの英語の頭文字を取ったものです。「HSC」にはこの4つの特徴すべてが存在する。言い換えれば、どれか一つでも当てはまらないものがあれば「HSC」ではないとなります。

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