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特集:6回目の日米首脳会談に思うこと

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今週はフロリダ州マー・ア・ラーゴで日米首脳会談が行われました。トランプ政権発足後ではこれが6回目に当たります。電話会談は公表されている分だけでも約20回。さらに3回目のゴルフもありました。安全保障問題では米朝首脳会談への対応、経済問題では日米貿易摩擦という2つの難問を抱え、大荒れも予想された日米関係でしたが、良好な「安倍=トランプ関係」を足場に何とか乗り切ることができたようです。

これぞ長期政権のご利益、と言いたいところながら、昨今の日本は内政面で長期政権の「マイナス効果」が噴出しつつある。そろそろ「ポスト安倍政権の日本外交」について、思考実験を開始すべき時期に差し掛かっているのかもしれません。

●トランプ流:首脳会談へのさまざまな思惑

事前に日米首脳会談の日程表(4/17-18)を見たときに、「まあ、これなら大丈夫だろう」とホッとした気分になった。2晩とも夫人を交えた夕食会が予定されていて、2日目の午前の予定が空欄になっていたからである。

空欄を埋めるのは、たぶんゴルフであろう。これだけ手厚くもてなす賓客に対し、「情の人=トランプ」がムチャは言ってこないだろう。事前に日本の外交当局が、「首脳会談は何とかゴルフ付きで!」と念願していたことは想像に難くない1

夫婦セットでなければならない事情もあった。安倍首相は森友学園問題があり、夫人を人前に出したくはなかったかもしれない。しかし最近のトランプ氏は、ポルノ女優との不倫問題が注目を集めている。ここは「夫婦円満」な場面を見せる必要があったのだろう。

かくもトランプ大統領はトラブル続きだが、3月1日に鉄鋼アルミ追加関税を言い出したあたりから、一種吹っ切れたような状態になっている。米朝首脳会談の受け入れ、中国との通商戦争、そして相次ぐ閣僚の辞任、解任、交代劇などである。おそらくご当人は、「やっとペースが掴めてきたぜ」と思っているのではないだろうか。

大統領自身が手応えを感じている様子は、以下のツィートでも確認することができる。筆者の知る限り、ラスムッセンの世論調査について触れるのはこれが5回目である。

○Rasmussen Daily Report



Rasmussen の世論調査では、他社よりも政権支持率が高めに出る。今週は久しぶりに、「全体的な」支持が不支持を上回っている。秋の中間選挙を意識するトランプ大統領は、「やっぱり支持者は反応してくれている!」と自信を深めているところであろう。日々、このデータを見ながら支持者との間合いを計っている様子であり、トランプ流ポピュリズムのバロメーターと言えるかもしれない2

日米首脳会談に合わせてトランプ大統領は、「ポンペオCIA長官が先週、訪朝して金正恩に会った」とツィートで披露し、「首脳会談の候補地は5か所」などとおいしいネタも提供している。「偉大なる視聴率男」ならではのメディア扱いの上手さと言えよう。

ただし大統領の心中を推し量ってみると、今回の日米首脳会談では「大好きな安倍首相が相手だが、米国の労働者のために俺はここまでやったぞ」というところを見せる必要があった。そのためにはキツイ言葉の応酬もあって、日本側に少し痛い思いをさせてやりたい。お得意の「プロレス流儀」を考えていたのではなかっただろうか。

●経済・貿易:大き過ぎる日米間の不均衡

その意味で、懸案となっていた鉄鋼アルミ問題を、日本側が無理に解決しようとしなかったのは正解だったかもしれない。こう言うと鉄鋼業界に怒られるかもしれないが、今週発表された2017年度の貿易統計(速報値)によれば、鉄鋼の対米輸出は2129億円と全体の1.4%に過ぎない。しかも中身は高機能製品が多いので、25%の関税が加わったとしても、その分の需要がすべて他国の製品に流れるとも考えにくい。

敢えて鉄鋼製品の適用除外を「お願い」するとしたら、「代わりに何を寄越すのか」という話になってしまう。もちろん日本側として、切れるカードがないではなかった。しかし、トランプ氏の好む「ディール」に飛び込むことは危険も付きまとう。これに先立つ米韓交渉では、韓国側が事実上の輸出自主規制を申し出ることにより、鉄鋼輸出の適用除外を勝ち得ている。かかる管理貿易的な手法は、日本として採るべきではなかっただろう。

そして全体はと言えば、2017年度の対米輸出は15兆1819億円、輸入は8兆1828億円とほとんどダブルスコアに近い。日本全体の貿易黒字は2兆4559億円に過ぎないので、これをもって「日本が黒字を溜め込んでいる」という批判は当たるまい。また現在の日米貿易に、ゆゆしき非関税障壁が潜んでいるとも思われない。それでも米国側から、「いくらなんでも不均衡が過ぎる」と突っ込まれれば、「仰る通り」としか答えようがない。

「通商摩擦は所詮、政治ゲーム」と割り切って、何か米国側に「お土産」を差し出すとしたら以下のような「手口」が考えられる。が、いかんせん小粒なものばかりである。

米国産牛肉に対する関税引き下げ・・・豪州産牛肉との関税格差が拡大している。とはいえ、米国産牛肉の輸入は前年比で増えている(数量で3.5%増、金額で9.3%増=4040億円)。関税格差は米国をTPP交渉に呼び込む「材料」でもあり、日本側としてはここで慌てて引き下げるのは避けたいところである。

米国産LNGの輸入・・・シェールガスの開発輸入は2017年から始まったばかりで、金額的にはまだ小さい(577億円)。むしろ投資計画をアピールすべきところ。

防衛装備品の購入・・・F35ステルス戦闘機やイージス・アショアなど大口の購入が既に決まっており、追加で買える案件はさほど多くない。

今回の日米首脳会談は、通商法232条関連(鉄鋼アルミ)は日本側の失点となったが、それ以外は「概ね事なきを得た」と言っていいだろう。何よりそのことを示しているのは為替市場である。「日米首脳会談で通商問題が再燃!」となれば、それだけで2~3円程度の円高が進んでも不思議はなかった。しかし為替市場は、何事もなかったかのように107円台で推移している。今回の日米首脳会談では為替に関する言及がほとんどなく、通商摩擦は材料視されずにやり過ごすことができた。

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