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他人事ではない、次官のセクハラ報道 「社外からのハラスメント」にどう対処するか議論を

財務省事務次官の女性記者に対するセクハラ報道と辞任を見て、マスコミと財務省の問題だと思っている人は、あなたの会社でも十分セクハラが起こっていることを認識してほしい――。

女性に「受け流し」スキルを求める日本社会

セクシャルハラスメントに対する企業の配慮義務が法制化されたのは1999年(施行)。そのあと防止措置をとることが義務化されてからも10年以上が経っている。にもかかわらず、いまだに男性社会で働く女性は、社内外でセクハラにさらされている。

私が『上司の「いじり」が許せない』 (講談社現代新書)で取材した女性たちからは、男並みに働くことを期待されながら、一方で女性ならではの「いじり」やハラスメントを受けており、それに対して女性たち自身も空気を読んで受け流すスキルを磨いてきてしまったことがうかがえた。

現在20代のある営業職女性がそのようなスキルを求められ始めたのは、大学時代にさかのぼる。これは2010年代の都内有名大学での会話だ。

「先輩たちから、そういうこと(セクハラ的ないじり)を言われて怒ったり悲しんだりするのは大人じゃないとか、サムイって言われて」

「ある男の先輩が胸とかお尻とかを触ってきて『ほんとやめてください』とか言うと、怒るのがお前サムイぞみたいなこと言われました。触られるだけでありがたいと思えみたいな感じ。こういうときにアハハって笑って受け流すのがいい女だぞ、って思ってるんですよね、そういう人たちは」

総合職女性という存在が未だに組織において少数派であるなか、男社会で生き延びていくには、セクハラや下ネタに耐えることが条件になってきてしまった背景もある。ヒアリングした女性の中には、明らかにセクハラに引っかかることを言われても、怒らず、むしろ笑いの取れる切り返しをするというケースが多くあった。次のような証言もある。

「自分の職場は完全に男性社会なので、むしろ自分からハラスメントを許容するようなことをしないとやっていけなかったりします。例えば下ネタについていったり、カラオケで積極的に上司とデュエットしたり、お酌したり、などなど。もう慣れました」(法曹関係、30代女性)

「かなりハラスメントに許容度が高い会社で新卒から働いています。主にセクハラに対して許容度が大きい女子になることは自分の居心地の良さにも繋がるため、少し腹が立つことがあっても笑顔で受け流す術が自然と身についてしまいました」(メーカー 40代女性)」

多くの女性は、こうした状況を理不尽と感じ、仕事で見返そうと頑張っている。確かに、「新入りのときはコミュニケーションでしか相手に印象を残せないと思って頑張っていたけど、仕事の成果が出てきたらそれで認識してもらえるようになった」という事例もある。社内の男性陣を黙らせるような優秀さが、問題を解決することも状況によってはあるかもしれない。

しかし、仕事を頑張ってトップの営業成績を収めると、今度は「女を使っている」「上司の愛人」などと根も葉もないうわさを流され、さらにやっかまれたというケースも散見される。

こうした状況に無力感を覚え、女性たちは時には仕事に支障をきたすような精神状態に追い込まれたり、マッチョカルチャーの組織で競争し続けることから降りる決断をしたりしている。セクハラ風土は、確実に女性のやる気を削ぎ、離職を増やしている。企業は女性活躍推進で管理職や役員を増やす云々の前に、こういった環境がパイプラインを細らせていることに気が付くべきだ。

拒否しづらい「社外からのセクハラ」

加えて、とくに営業職では、今回女性記者が取材先である財務省官僚からのセクハラを受けたように、社外からのセクハラに遭っている事例が多々ある。

「25歳ぐらいの時 営業職で、顧客との会食後に、担当者の上司にラブホテルに連れ込まれそうになった。その際、胸を触られ、キスを迫られ「恥をかかせるな」と言われた。(メーカー系30代女性)

「25歳ごろ、常駐は専門職として、お客様設計支援をする立場だったという女性は接待的な場にも駆り出され、次第に暴言も増え、ホテルに誘われることも。 ホテルに誘われ続け、お持ち帰りされそうになったのは当時怖かった」(IT系30代女性)

取引先から受けるハラスメントに対しては、会社同士の関係性まで気にしてしまうことから社内よりも一層その場で拒絶しづらく、どこに訴えるべきなのかも難しい場合がある。多くは上司などに相談し、担当を変えてもらうなどの措置になるだろうが、その場合、相手に反省してもらうことが難しい。

この意味で、日本ハムの執行役員が社長同席の場で航空会社の従業員に対して卑猥な発言をしたことについて、被害の報告を受けた航空会社が日本ハムに申し入れ、当該執行役員と社長退任につながった航空会社の対応は素晴らしい。自社社員からの訴えを、顧客である企業にきちんと伝えているのだ。

社外からのハラスメントにどう対応すべきか

厚生労働省は3月末にパワハラ対策についての報告書を出している。
(参考記事:https://news.yahoo.co.jp/byline/nakanomadoka/20180401-00083358/

ここでは、「流通業界や介護業界、鉄道業界では、顧客や取引先からの 暴力や悪質なクレームなどの著しい迷惑行為については、労働者に大きなストレスを与える悪質なものがあり、無視できない状況にあるという問題が提起された」と、取引先からのパワハラについての議論がされたことが明記されている。

顧客や取引先からのハラスメントの対応について、同報告書は職場内で起こるものとの違いを以下に整理している。セクハラにも言えそうなので引用しよう。

(1) 職場のパワーハラスメントと比べて実効性のある予防策を講じることは一般的には困難な面がある。
(2) 顧客には就業規則など事業主がつかさどる規範の影響が及ばないため、対応に実効性が伴わない場合がある。
(3) 顧客の要求に応じないことや、顧客に対して対応を要求することが事業の妨げになる場合がある。
(4) 問題が取引先との商慣行に由来する場合には、事業主ができる範囲での対応では解決につながらない場合がある。
(5) 接客や営業、苦情相談窓口など顧客等への対応業務には、それ自体に顧客等からの一定程度の注文やクレームへの対応が内在している。

事前に防止することなどが困難であることが議論されているが、次のような意見も出ていたという。

「顧客や取引先からの著しい迷惑行為への対応については、事業主が顧客に対してあらかじめ著しい迷惑行為をしないよう直接働きかけることは難しくとも、雇用する労働者に対して取引先の労働者等に対して著しい迷惑行為をしないよう周知・啓発することは可能」

「顧客や取引先からの著しい迷惑行為が社会的な問題になっている状況を踏まえれば、顧客や取引先からの著しい迷惑行為の問題に対応するためには、事業主に対応を求めるのみならず、周知・啓発を行うことで、社会全体で機運を醸成してくことが必要である」

今回、テレビ朝日が、自社の社員が受けたセクハラについて「報道するかどうか」の判断をしつつも、それ以外に財務省に申し入れを行うなどの組織としての対応策を打てなかったこと。週刊誌に被害実態が出た場合に、加害者が所属する組織である財務省が被害者に申し出ることを呼び掛けるといった非常識な対応をせざるを得なかったこと。

これらは、社外からのハラスメント被害を受けた場合、あるいはそれを告発された場合に、組織がどう対応すべきか、手続きが整備されていない、また、そもそもこのように声が上がることが想定されていないことをうかがわせる。

こうした議論を社会全体で、そして、それぞれの組織で、広く本格的にはじめる時期が来ているのではないだろうか。

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