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復興債の日銀直接引き受けで長期金利は上昇するか? 片岡剛士

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片岡剛士の経済解説メルマガ『The Neo Economist』の今週の記事(Vol.7)より、一部紹介するコーナーです。

今週の目次
0.Neo Economistからのお知らせ
1.週刊『経済ニュースの基礎知識TOP5』
2.週刊『日本の経済論点』「復興債の日銀直接引き受けで長期金利は上昇するか?」
3.Q&Aコーナー
4.おわりに

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1.週刊『経済ニュースの基礎知識TOP5』〜Economic news TOP5

さて、各ニュースの用語解説と、そのニュースをどう見ればいいかを紹介するコーナーです。新聞報道から印象に残ったニュースを取り上げてみたいと思います。今週も震災関連の話題がメインです。
こちらでは第2位のニュースのみ紹介します!

◆第2位 震災復興基金に関する検討

第2位は、東日本大震災の復興財源を集約するための「震災復興基金」に関するニュースです。国の一般会計から切り離して時限的な基金を設置し、復興債、震災復興税、国への寄付を基金に集めて、そこから被災地の整備などに使うというものです。被災地復興以外には使わず、資金の出と入を明確にすることができるという点はメリットでしょう。

個人的にはいよいよ復興に関する議論が本格化してきたかなという思いなのですが、気になるのが、復興債、震災復興税、国への寄付といった3つの中で、震災復興税に関する議論のみが先行しているように感じられる点です。

震災復興税については、第1位でふれる復興構想会議においても五百旗頭真議長が意欲を示していることはご存知のとおりです。民主党は消費税、所得税、法人税のいずれか、もしくは複数を組み合わせて「復興連帯税」(仮称)を作るとの事です。

所得税や法人税については、低所得者層や赤字法人には課税されないため、被災者や被害をうけた企業への負担を回避できる可能性はあります。一方で内閣府試算によれば25兆円と言われる規模の増税を行うためには、かなりの増税を覚悟しなくてはならないでしょう。更に景気悪化が進めば、低所得者層や赤字法人が増えるため、政府が想定するだけの税収を得ることが困難になってしまう可能性があります。

一方消費税は税収が比較的安定しているため、おおよその税収を見込むことが可能です。しかし、現行の仕組みでは消費税率引き上げによる被災者への税負担増を避けることができません。

民主党税制改正プロジェクトチームの小澤鋭仁座長は復興連帯税の中身については今後詰めていくとしながら、即増税を行えば日本経済が収縮してしまうため、例えば3年もしくは4年後といった形で時期をずらして増税を行うことが重要だと指摘しています。

以上のように復興連帯税については中身や時期といった問題点があり、即座に多額の資金を得る際には不確定要素が多いと考えます。例えば報道では5年間で25兆円捻出するのならば、1年間で5兆円捻出すれば良い。すると消費税換算すれば2%分の増税が5年間続くことになるといった議論があるようですが、復興は早ければ早いに越したことはありません。必要な金額を小出しに捻出するということはそれだけ復興が遅れることを意味します。多額の資金をまず集めて、やれる事をどんどん行っていくことが必要なのではないでしょうか。

そして現段階では、復興債の中身に関する議論を先行して進め、金額の規模、返済のタイムフレーム、その際の日本経済の将来像といった点を重点的に検討するほうが良いと思います。

震災復興に関する基金の議論において、数量的な形でどんな手段をとれば何が生じるのかといった試算や考え方を明示した議論がなされていないようにも見受けられます。ベキ論ではなくたたき台に即した検討が必要でしょう。

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2.週刊『日本の経済論点』〜Economic policy ミシュラン

◆「日銀の復興債直接引き受けで長期金利は上昇するか?」


この一週間で最も注目した経済政策・経済論評を徹底批評・解説するコーナーです。たった5分で、正しい経済の見方が分かる!

今回は日銀による国債引き受けに関して、いくつか論点を絞って論じてみたいと思います。

報道等では日銀による国債引き受けに関して奇策であり、まともに検討すべき政策ではないという議論がよくなされています。

例えば「昭和恐慌からの脱却過程で高橋是清が採用した政策が契機となって戦後のハイパーインフレを生み出した。だから危険である。」という議論については、vol5の本欄で誤りだと述べました。他にも長期(名目)金利が急騰するという反論があるようです。このあたりから考えてみましょう。

■日銀による国債引き受けを行うと長期名目金利は上昇するのか?

日銀による国債引き受けとは、政府が国債を発行し、それを日銀が購入(引き受け)して、資金を供給するという方法です。ただし、立命館大学の松尾匡教授が明確に説明されている(注1)ように、日銀による国債引き受けによって長期名目金利が急騰するとは考えづらい。

国債市場を考えてみましょう。国債市場において長期名目金利が上昇するというのはどんな場合を指すのでしょうか。国債市場を需要と供給に分けて考えてみますと、供給が需要を上回る場合、つまり超過供給の場合には国債の価格は下がり、国債金利は上昇します。逆に超過需要の場合には国債の価格は上がり、国債金利は低下します。日銀の国債引き受けとは、政府が発行した国債(つまり国債供給の増加)分だけ、日本銀行が国債を買取る(国債需要の増加)わけですから、需要と供給は同じだけ拡大して価格は変化しません。つまり国債金利は上昇せず一定となる筈です。

いやそんなバカなという方がいらっしゃるかもしれません。長期名目金利が上昇するという可能性は無いのでしょうか。以下では、日銀の国債引き受けにより、政府が資金を得、それを用いて復興事業を行う場合を考えてみましょう。そして長期名目金利の変動は、流動性効果、所得効果、フィッシャー効果という3つの効果が、時差を伴いながら組み合わさった形で変化した結果である点に着目しましょう。

流動性効果とは通貨や信用の増加が資金需要にもたらす影響を指します。日本銀行が国債を引き受けることで政府に資金を提供し、それを用いて政府が復興事業を行えば、資金は民間へと流れます。結果、通貨や信用が増加するわけですから、長期名目金利は下がるでしょう。

所得効果についてはどうでしょうか。所得効果とは、景気の先行き感の変化が投資活動に影響を及ぼし、さらに資金需要に影響するという効果を指しています。例えば、日銀の国債引き受けにより政府が十分な規模の事業を行えば、復興需要が生じて民間の投資活動が活発化するでしょう。そうすれば、資金需要が高まるため需給は逼迫して長期名目金利は上がるということになります。

最後に、フィッシャー効果について検討してみましょう。フィッシャー効果とは名目所得の変化が予想インフレ率の変化を促すことで、投機的投資のための資金需要が変化し、それが名目金利の変化を促すというものです。日銀による国債引き受けにより政府が復興事業を行えば、予想インフレ率は上がると考えられます。そうすれば資金需要は増加して長期名目金利は上昇するでしょう。

以上の話をまとめてみます。日銀による国債引き受けによって日銀がマネーを供給し、政府が財政支出を行った場合、当初流動性効果による長期名目金利の低下の影響が強く、企業の内部留保が潤沢で資金需要が大きく拡大せず、デフレギャップが大きい状態で予想インフレ率の上昇が緩やかであるのならば、長期名目金利は低下すると考えられます。その後、より潤沢に資金が提供されていき、資金需要が拡大し、予想インフレ率が明確に上昇していけば、長期名目金利は上昇していくでしょう。

日銀による国債引き受けによる財政・金融政策のポリシーミックスが功を奏せば、最終的に長期名目金利は上がると考えられますが、当初その動きは弱いと考えられます。そして急騰するという可能性は小さいと思われます。松尾匡教授のエッセイにあるデータを見てみますと、日銀が国債の借り換えのための引き受けを行った場合には国債の名目金利が上がっていますが、予想インフレ率を考慮した実質金利は下がっています。つまり、インフレ率の拡大による名目所得増加効果が国債金利上昇による利払い費増加の効果を上回っているわけです。実質金利は下がるということは、財政・金融政策のポリシーミックスにより総需要が刺激されるという理屈とも整合的なのです。

■財政・金融政策のポリシーミックスの視点から見た日銀の国債引き受け

日銀の国債引き受けが有効であると私が考える第一の理由は、それが財政政策と金融政策のポリシーミックスであって、単に財政出動を行う場合に懸念される円高を金融緩和により抑えこむことが可能であるという点です。

こう書きますと、以下のような疑問が生じるのかもしれません。財政政策と金融政策のポリシーミックスということなら、政府は国債(復興債)を発行して資金を市中から調達して財政支出をし、日銀は包括緩和の枠組みを更に拡充させて、市中にある長期国債の買い切りを含む金融緩和をあわせて行うという策もあり得るのではないかという疑問です。

なぜ上記のような、政府と日銀がそれぞれ財政出動・金融緩和を行うという話ではなく日銀による国債買入れが良いといえるのでしょうか。

私が考える理由はまず、我が国が15年にわたりデフレに陥っており、このデフレには日銀による金融政策運営の問題が大きいと考えている点にあります。日銀の行動様式は15年間何も変わっていないと言えるでしょう。

以上のような認識を前提とすると、政府が仮に思い切った財政出動を行った場合でも日銀が金融緩和を拡充することでサポートするとは考えづらい状況です。手続きとしては<以下、略>

■その他の論点

さて、その他の論点として重要だと考えられる点についてふれておきましょう。それは、電力供給による生産のボトルネックの影響をどのように考えるかという点です。<以下、略>

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片岡剛士(かたおか・ごうし)/記事一覧
1972 年生まれ。慶応義塾大学大学院商学研究科前期博士課程(計量経済学専攻)修了。現在三菱 UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員。専門は応用計量経済学、マクロ経済学。著作に『日本の「失われた20年」-デフレを超える 経済政策に向けて』(藤原書店、2010年、第4回河上肇賞本賞受賞)等。

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