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岩田規久男「緊急寄稿 震災からの経済復興」を読む! 片岡剛士

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片岡剛士の経済解説メルマガ『The Neo Economist』の今週の記事より、一部紹介するコーナーです。

今週の目次
0.Neo Economistからのお知らせ
1.週刊『経済ニュースの基礎知識TOP5』
2.週刊『日本の経済論点』 岩田規久男「緊急寄稿 震災からの経済復興」を読む!
3.エール大学の書斎から2(第2回「貧乏父さん、金持ち母さん(1))
4.Q&Aコーナー
5.おわりに

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0.Neo Economistからのお知らせ

Vol.6をお届けする本日で震災からちょうど一ヶ月となります。震災の影響の大きさに驚くとともに、復旧・復興の動きが少ない現状にも嘆息するばかりです。未だ満足な生活をおくることが出来ていない被災者の方々、ライフラインが復旧できていない被災地域の現状を思うと、暗澹たる気持ちにもなります。 

そして、今回の震災では、我が国が抱える様々な課題が露呈したようにも思います。経済政策に限ってみても、震災による被害額を増税で賄おうといった主張が力を得ているようにも思われますし、過去の経験からも初動が重要だと思われる局面で、政府が打ち出した一次補正予算の額は4兆という少なさです。我が国の危機管理の仕組みや経済政策の認識、更にエネルギー政策といった問題……課題は山積みで、それらの問題が一挙に出てきているようにも思われます。

今週のお知らせです。先週行われました日本経済研究センター(大阪支所)での講演(2011年度の経済展望−大震災の影響と今後の経済政策)という形で「聴くゼミ」としてアップ頂いています。おそらく後日、「読むゼミ」及び会報にも模様がアップされるかと存じます。音声がかなり悪いようで恐縮ですが、ご興味のある方は是非お聴き下さい。http://www.jcer.or.jp/seminar/kikusemi/detail1637.html

今週のvol6では、浜田宏一先生による連載の第2弾、岩田規久男先生による「震災からの経済復興−これから何をするべきか」のご紹介をはじめとして色々と盛りだくさんです。どうぞお楽しみ下さい!

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1.    週刊『経済ニュースの基礎知識TOP5』〜Economic news TOP5

各ニュースの用語解説と、そのニュースをどう見ればいいかを紹介するコーナーです。新聞報道から印象に残ったニュースを取り上げてみたいと存じます。

◆第5位 震災による通信・交通網の復旧の動き
<省略>

◆第4位 短観再集計の結果
<省略>

◆第3位 日銀金融政策決定会合の結果
<省略>

◆第2位 2011年度一次補正4兆円
政府は東日本大震災の復旧・復興に向けた2011年度第一次補正予算案の規模を4兆円とした上で、財源に基礎年金国庫負担分の2.5兆円、公共事業削減(3000億円)、子ども手当て見直し(2100億円)、高速道路無料化の見直し(1000億円)、その他は予備費分を充当するとの議論がなされています。

財源をどう捻出するかについては与野党で議論されている状況ですが、基礎年金国庫負担分の2.5兆円を充てた場合、当の基礎年金国庫負担にかかる費用はどこから捻出するのでしょうか。そして、これらの金額を足しても4兆円に到達するかは不明です。勿論、特例公債法案の成立が重要なところではありますが、国会での議論が紛糾して早期に対処策が打てないという状況になることが懸念されます。

もう一つ、基礎年金国庫負担分を一次補正に充てた場合に懸念されるのが、税と社会保障の一体改革において消費税増税により財源を捻出するのではないかという点です。震災により被災地のみならず全国で収縮の動きが見られる状況の中、早期の増税は経済を更に収縮させることが懸念されます。

今後の可能性としては何があり得るのでしょうか。私が考えるのは、16兆円〜25兆円ともいわれる震災費用の捻出を散々議論した上に諦めて、数兆円単位とする状況です。この場合には震災によるインフラ再整備は進まずに経済停滞が生じるでしょう。もう一つの状況は、増税による支出の決断です。この場合、需要の拡大は思うように進まず、インフラの回復が生じていき、デフレ傾向が続く状況となるでしょう。我が国の財政状況はドーマー条件から明らかなようにサステイナブルとは言えません。なぜこのような状況が生じたのかといえば、20年にわたり名目所得(名目GDP)が伸びない状況が続いているためです。これをなんとかすることが必要でしょう。

増税や歳出組み換えを行って震災費用を捻出するのは、繰り返しになりますが、必要な金額の捻出が非現実的であるために不十分な支出しか行えないこと、政策決定に多大な時間を要すること、経済に更にダメージを与えることから非現実的です。「寄付のつもりで増税を」という論者の方もいらっしゃいますが、寄付のつもりで増税できる人がどれだけ居るのでしょうか。二次補正以降は公債を発行するしか道はない状況ですが、できるだけ負担を減らす道を考えるべきかと思います。

◆第1位 欧州中銀利上げと米国の量的緩和修了、そして為替レートの動き
<省略>

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2.週刊『日本の経済論点』〜Economic policy ミシュラン

この一週間で最も注目した経済政策・経済論評を徹底批評・解説するコーナーです。既に皆さんもお読みのことだとは思いますが、今回は岩田規久男先生による「震災からの経済復興−これから何をするべきか」(webちくま http://www.chikumashobo.co.jp/new_chikuma/sp_shinsai/index.html)について見ていくことにしましょう。もう既にこの内容でご本の第一稿が出来上がっているみたいですよ! 来月の発行が楽しみです。たった5分で、正しい経済の見方が分かる!

さて、岩田先生による東日本大震災からの復興のための「緊急対策」とはどのようなものでしょうか。挙げてみると以下の4点となります。

(1)総額40兆円〜50兆円程度、11年度10兆円の復興費予算の計上
(2)復興国債の発行
(3)復興国債の全額日銀引き受け
(4)11年度の復興予算の主たる使途

まず(1)の点ですが、今後5年間程度で総額40兆円〜50兆円程度の復興予算を計上する、そして初年度の11年度は「緊急対策」として、10兆円程度の復興予算を計上することが指摘されています。これは、直接被害額16兆円〜25兆円と間接被害額の大きさを念頭に置きつつ、予想される大きな成長率の低下と失業率の上昇を考慮してのものです。2010年の名目GDPは約480兆円であることを勘案すれば、名目GDP比2%程度の規模になります。私もこの案には賛成です。可能であれば、1年目の支出をより増額させても良いのかもしれません。

そして(2)の点ですが、これらの支出を国債で賄うことが指摘されます。この点も全く同意です。今後内需の減少が懸念される状況で、増税をすれば消費を中心に一層の内需の低下をもたらすでしょう。経済成長率は悪化して雇用も悪化します。デフレは円高と株安の要因になるでしょう。円高と株安は企業と家計を圧迫し、それは投資と消費の停滞という形で経済にダメージを与えます。そして財政と社会保障制度の持続可能性は更に低下するでしょう。

(3)についてですが、来月発売の岩田先生の著作『経済復興−大震災後の再建のために』(仮題)を楽しみにしたいところです。あえて付言しますと、国債引き受けを行うメリットは様々あると思いますが、財政政策と金融政策の合わせ技(ポリシーミックス)を挙げることができるかと思います。

阪神淡路大震災の際は一次補正の額(ただし全てが震災対策ではなく合計の3割程度であることに留意)でみればほぼ9.9兆円の財政支出が行われました。しかし日銀の金融緩和は緩慢で、公定歩合の引下げは震災が生じた1月から3ヶ月後(95年4月)に0.75%の引下げ、さらに5ヶ月後(95年9月)に0.5%の引下げというものでした。

デフレに突入し、円高と株安が生じてしまったことからも明らかなように、当時の金融政策は政策金利が下限に近づいていたこともあって十分な効果をもたらさなかったのです(この点は拙著『日本の「失われた20年」』(藤原書店刊)でも整理したとおり、既に政策金利ではなく量に働きかける金融政策を行うべき局面であったと考えられます)。

震災に対して十分な金額を支出する一方で長期金利の上昇を是正するには、日銀がマネーを供給し、それを用いて政府が財政支出を行い、民間にマネーを行き渡らせて復興・復旧を行うことが肝要です。

最後に(4)についてです。震災については、財源の捻出方法に加え、何にお金を使うのかという観点も重要です。岩田先生の提案では、被災者の食料・医療等、必需品の確保、被災者の居住の確保、被災者のうちの入院患者と要介護者の病院と介護施設の確保、瓦礫の除去、道路、港湾、空港など損壊したインフラの修復といった主な使途が明示されています。この点は来月のご著書で具体的な記載があるかと思いますし、楽しみです。

お金の使途という意味では、損壊したインフラの修復には、現在の最新鋭の設備を整備することが重要だと思います。インフラ整備は今後の日本の潜在成長力において重要な位置づけを担うと思います。特に人口の低下が懸念される状況では、資本を生かし生産性を高めることが肝要です。復旧ではなく、強固かつ最新鋭の設備を用いたものを作ることが必要ではないかと思います。

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3.エール大学の書斎から2(第2回「貧乏父さん、金持ち母さん(1)」) 寄稿:イェール大学 浜田宏一

■海外からの暖かい手
大変不幸なことに、日本は予想外の大きな災害に見舞われ、災害を復旧するためには幾多の困難がある。考えを整理するために、ひとつの社会である一家族が被害にあったときの対応の仕方と、世界で日本という一国が被害にあったときの対応の仕方を比較して考えるのも頭の整理として有効であろう。

まず、ひとつの家族が被害にあったとすると、ほかの家族が親切に助けてくれる。前回、アメリカの大学での救援活動のことを述べたが、これはハーバードでも同様であった。救援は、経済的な助けがしかも即座に届けられることでももちろんであるが、被災した人々、そして日本人を世界の温かい気持ちが勇気付けてくれる。

アメリカのテレビにも、被災地で日本人がもくもくと整然と、前向きに生きていく姿が映し出される。暴動もなければ捨て鉢になる人もいない。このような日本人の国民性に対して、世界の注目が集まったのは、せめてもの救いだったといえよう。ABCテレビキャスター、ダイアナ・ソーヤーに対しても乏しい食事を分けようとする日本人の姿は、アメリカ人に対して強い印象を与えた。(それと裏腹に、原発の例に見られるように、日本社会における情報伝達の問題点、日本の組織における対応の決定のあり方、スピードを問題にする世界の目が集まることにも日本人は気がついているはずである)

■一家族が被害にあったときとの比較
普通の社会で、一家族に被害があったときそれにどう対処しているかの問題に戻ろう。さて、家族が災害にあったときのことと比べてみると、まず人からの好意に依存するのがその第一歩であろう。政府からの助けがあればもちろんそれもありがたい。次は、自分の資産を食い潰す。次は身内から借金する。そして他人から借金することでまかなうことになる。そしてつらいことであるが自分もつましい生活をして、貯蓄に励み回復への道を粘り強く歩むしかない。

■金持ち母さん、貧乏父さん
こういう観点から日本国の持つ資産を見てみよう。<以下、略>

■デフレ、円高が問題で、円安は歓迎すべきである。
<省略>

■希望は失うべきでない
西洋には、「どんな雲でも縁から銀色の日光が漏れている」ということわざがあるが、希望は失うべきでない。1945年、日本は第二次大戦で約国富の半分を失ったが、1956年には「もはや戦後ではない」という経済白書の名文句が生まれ、その後1960年から石油危機の1973年までの間に、実質GDPが約3倍になる経済成長を成し遂げたのである。西ドイツ、イタリアも、第二次大戦後の経済成長は史上に残るものである。

関東大震災も、神戸淡路島大地震も、いかに復興ができても、当事者にとって被害の傷跡を癒すことはほとんど不可能である。しかし、経済的な復興ということだけから言うと、それぞれ数年のうちには復興しているのである。東日本大地震の後も復興の望みは残っているのである。

もちろん戦争や、災害はその後で高成長が残るからと言っても絶対に歓迎できない。もっとも、いわゆる清算派の経済評論家は、デフレや円高で人工的な苦しい条件を作ってひ弱な企業を一掃してそれからの躍進を図ろうと説くので、一掃される企業に「災害にかかってください」と強要しているのとかわりがないがようにも見えるが。

さて本題に戻ると、災害の復旧は、各個人、民間セクターも力を尽くすが、その主たる担い手は政府セクターである。つまり父さんが尽力しなければ復旧は難しいが、父さんは財布が十分でないどころか借金に悩む「貧乏父さん」である。それでは、どうしたらよいのであろうか? 復旧費用の具体的なまかない方については次回以降で述べよう。

注1:対外純資産のデータは以下の値を参照
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/data.htm

注2:ここでは単純化のため、民間セクターは政府以外の部門、つまり、金融機関、非金融法人企業、家計、民間非営利団体の合計値として考えている。部門別資産・負債額については以下の資金循環統計(日本銀行)を参照のこと。
http://www.boj.or.jp/statistics/sj/index.htm/#p03

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片岡剛士(かたおか・ごうし)/記事一覧
1972 年生まれ。慶応義塾大学大学院商学研究科前期博士課程(計量経済学専攻)修了。現在三菱 UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員。専門は応用計量経済学、マクロ経済学。著作に『日本の「失われた20年」-デフレを超える 経済政策に向けて』(藤原書店、2010年、第4回河上肇賞本賞受賞)等。

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